※同田貫 視点
※天晴連載夢主イメージ



初めての印象は、なんだこの小娘は。だった。


「俺は同田貫まさk―…」

『おおっ!やっと来たか正国!』

「…ああ?」


顕現したばかりの俺の事を知っているような口ぶりに思わず開いた口が塞がらない。傍に居たアイツの初期刀にして近侍の加州清光って刀が、目の前でそそくさと何か次の支度に入ろうとしている小娘の横でザッと説明する。
どうやらこの小娘がこの本丸の審神者…つまりは俺を顕現させた主という事らしい。後片付けをするその小娘の姿を横目に、加州がぺらぺらと話しているこの本丸の事情を軽く聞き流す。


「(…こんな細っせえのが主かよ)」


よくもまあその腕で刀を顕現させているものだ。聞けばまだ刀の頭数も少ないという。今までいろんな主の人生を見送ってきたが、ここまでハズレかと思った事はそうそうない。つまり俺は俺自身の力を発揮出来る場ではない所に顕現してしまったのだ、と心の奥底でため息を吐いていたのだ。…だが、


『うち(この本丸)は見ての通りまだまだ未熟だし、私もまだまだ未熟だ』

「……ああ」


鍛刀所の入口で履物を履きなおしている小娘はこちらを振り返ることなくそう口を開く。なんだ、自分自身でも分かってんじゃねえか。そう悪態的にその小さな背中を見おろしつつ、俺は小さく声を返した。
思えばその小さな背中をその場で叩き斬ってやってもよかった。否、もういっそ方法はどうであれ自分自身で自分を折ったってよかったのだ。そうすれば此処での俺の存在は無くなって別のとこで顕現される、そう思った。でもそうしなかったのは、


『久々の実戦刀だし、これから忙しくなるぞ〜!』

「ああ?」


履物の紐を結び直し、その場で立ち上がるとううーんと伸びをするその小娘の姿に加州清光が「ふふふ」なんて笑いやがる。片膝を着いていた加州もスッと立ち上がって小娘の傍に歩み寄る。入口から差し込む日の光がまぶしい。


『頼りにしてるよ、正国』


そう言って振り返ったアイツの眼がとても綺麗で、今まで見てきたどんな主の眼よりも生き生きしてて、強くて、呆然と立ち尽くしている俺をしっかりと映していて。ニッと笑ったその顔が脳裏に焼き付いて離れない。嗚呼、なんだろう。この胸の奥から湧き起こる感情は。


「お、おう…」


少し戸惑ったような俺の声にまたニッと笑って前を向く。「顕現したばっかりだけど、早速戦だあ!」なんて声高らかに外へと出ていくその小さな背中に続く加州。その更に後を追って、俺は無意識のうちに自身である刀を手に取って飛び出していた。

…それからアイツ自身が刀たちと一緒に戦場に出る審神者。俗にいう戦う審神者だと知るのにそう時間はかからなかった。加えて言うと、それなりの刀の腕前、力を持っているという事も。
だからだろうか、自然とアイツが主である事に不満を持つことなく寧ろ言葉に出来ないような感情が心の中を渦巻いているのは。自分自身で折れてしまおうなんて、馬鹿な考えを持たなくなったのは。

Thank you 1st anniversary.2017(第6位)

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