※切島くん 視点
※連載夢主イメージ






細い。とにかく細い。


『てりゃああ!』


どこからそんな力出してんだってぐれぇ、苗字の体は細い。いや、俺から見ればほとんどの女子生徒が細くみえるのだが、中でも苗字は特にだ。ちゃんと食ってんのかって思うぐらいに本当に細ぇ。


『ちょ、切島くん!』

「え?あ、うおおおおお?!」


何ボケッとしてんだ!っていう外野の声が聞こえる。そうだ、俺は今実技の授業の真っ最中だった。敵との戦闘を想定した模擬訓練。学校側が準備した訓練用ロボ数体と戦う訓練だ。で、今日は苗字と組むことになっていて…。


「あっぶね〜!」

『大丈夫?!』

「おう!悪りィ悪りィ!助かった!」


戦闘ロボが目の前まで迫ってたのに気付かないなんてどうかしてた。間一髪体を捩って避けたのにプラスして苗字がバリア張ってくれなかったら、今頃失格扱いで苗字ともども今日の授業が反省で終わるところだ。否、それもこれも苗字の体の細さが丸わかりの戦闘スーツなんか着てるから…って何言ってんだ俺。
ちらちらと俺の方に視線をくれる苗字は本当に出来るサポーターだ。とっさの敵の動きにも対応出来るし、多分ぼーっとしてた俺の調子が悪いんじゃねえかって気にかけてくれてる…。さっさと訓練終わらせよ。


「うっしゃ!残るは最後の1体――…」


ボケッとしていた時間を取り戻すためにも次々と現れるロボを破壊し、苗字にサポートしてもらいながらステージを突き進む。そして用意された敵ロボットの数の表示が残り1なり、その姿を探すために周囲を見回そうと振り返った瞬間。


「苗字!」

『え、』


市街地ステージの屋根の上に居た苗字の背後に迫る黒い大きな影に声を張り上げる。距離が近すぎる。ロボから一発でも喰らえばこの模擬訓練は終了だ。とっさの判断だったのか、反射的に動いたのだろうか苗字の体が建物の屋根から落ちる。


「っの!!」


渾身の力で踏み切る。手を伸ばす。苗字を受け止め、そのまま身を翻す。それに合わせて苗字もバリアを張って俺の体を支えるように足場を作る。


「おらああああ!!」

『ふっ!!!』


此方を叩き潰そうと大きく振りかぶったロボの腕をバリアを張って食い止める苗字を抱えたまま、空いている片手でロボに思いきり硬化した拳をぶつけてやる。結構な衝撃があって、ロボが吹っ飛ぶ。勿論、反動で俺達の体も少し吹っ飛んだが難なく地面に着地、抱えたままだった苗字を降ろす。


「大丈夫か?」

『へへ、ごめん。ヘマした』


切島、苗字組ステージクリア!控室に戻ってくださいなんて明らかに機械的なアナウンスと共に観客席的な位置から見守っていたクラスメイト達の「お疲れ〜」やら「危なかったな!」とかいろんな声が飛んでくる。その中、手を振って皆の元に戻ろうと歩き出した苗字の背中を見て、続けて自分の手を見る。…言い方が可笑しいかもしれないが、さっきまで苗字を抱えてた感覚が少し残ってる。


「…なぁ、苗字」

『ん?』

「今度メシ行こうぜ」

『…へ?』


お前やせすぎだからさ、という大事な一言を付けなかった事によりそれを見ていた上鳴と峰田が「先生〜切島がナンパしてマース」とかなんとか騒ぎ始めるし、何より冷ややかな視線が俺を射抜く。あ、ヤベって気付いたのは少し驚いた顔をしていた苗字が何の疑いも無く優しい顔で「いいよ」って笑って返してくれてからだった。

Thank you 1st anniversary.2017(第4位)

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