ノンカフェイン



「花宮ってさ、なんでそんなになっちゃったの?」
「喧嘩売ってんのか」

 人ひとりくらいは殺せそうな視線とビビり上がりそうなくらい低い声をお寄越しになった花宮は、我らが霧崎第一高校バスケ部監督兼選手である。そして友人からは変な所肝据わってるよねだなんて言われる私はバスケ部マネジを勤めている。クラスの人だとかには男子バスケ部のマネージャーやれるだけ度胸あるだとかも言われるけど、ぶっちゃけ目の前の花宮監督にビビりまくってますけどね。原曰く私は物考えない只のバカ、らしい。友人というのも、原のことなのだけれども。だからいつも怒られるんじゃんと付け加えて、明らかにバカにされたのは記憶に新しい。おのれ原め、いつか絶対復讐してやんよ。しかしそれは中々に的を得ているようで、今回も特に考えずに発した言葉が花宮の怒りを買ったらしい。
 でも普通に不思議に思うでしょ。だって花宮性格悪すぎでしょ。そんなの生まれつきな訳ないだろうし、幼い頃なんかはきっと性格だってピュアで可愛らしい子供だったに違いない。そんな花宮だったらいいのになあ、今みたいに矢鱈とでかくて威圧感だとか毒々しい雰囲気なんてない真っ白い花宮だったら思いっきり可愛がってやったというのに。頭だって撫でちゃるし、ほっぺぎゅーだってしちゃうのに。今だって男子高校生とは思えないくらいすっべすべだけど、余計な肉がないから今ぎゅーしたってなんも面白くないけど。

「そう言うなら撫で回すのをやめろ」
「やべっ、花宮読心術でも妖怪先輩から教わったの?」
「全部声に出てたけどな」

 っべー、うっかりうっかり。手も声もばっちり出ていたとかうっかりうっかり。だって肌だけじゃなくて髪の毛もさらっさらなんだものこんちくしょうめ。黒髪でストレートで、つかその前髪邪魔ならんの?って聞きたいけど。つか切れよって言いたいけど。

「それなら俺よか原に言え」
「くっそまた……」
「顔に出てた」
「な…に……!?」

 なんだやっぱりしっかり読心術会得してるじゃないっすか。流石頭いい奴は違うぜ。ていうかそれもこれもあの今吉さんとか言う花宮曰く妖怪先輩の影響なんですかそうなんですか。え、じゃあつまり悪の権化は今吉さん?親玉は今吉さんなの?こえーよ今吉さん。畜生、花宮がこんなにひん曲がったのも今吉さんの……

「そろそろ黙らねーと本気で締めるぞ」
「さーせんっしたー……ていうかあれだよね。」
「お前黙れの意味わかんねーのか」
「真っ白な花宮とかまじウケんだけど…あちょ、暴力はんたーうぃごめっちょ、古橋ー!古橋ー!へるぷー!ちょっと待ってくれ私の話を聞いてくれ!」
「1分で纏めろ」

 くっそこれだから天才は困るぜ。つか頭いいくせになんでそんな直ぐに手が出るの。てか足の方がよく出るけど。ああそういえばこいつ短気だったな。女の子に手上げるとかさいてー!忘れてた訳じゃないけどそうですねこいつ最低でしたね。

「という訳で花宮くん、おねーさんが抱き締めちゃる」
「……」
「え、スルーが一番悲しいんですけど。なんかめっちゃ恥ずかしい人みたいになってるんですけど」
「みたいじゃねーけどな……つか、」
「あうん?」
「俺、抱き締められるより締める派なんだよ」
「えっあ、それって……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いちょ、はな、締まってる!首!」
「だから締める派だっつただろ」
「それは締める違いかと…ギブギブギブギブごめんなさいもうしません言いません調子乗ってすんません花ちゃん大好き」
「……」
「あ、照れて…ごめんなさいなんでもないですごめんなさい」
「つか、気持ち悪ぃよなんだよいきなり気持ち悪ぃ」
「あの、気持ち悪い二回言ってますけど…あ、いえなんでもないっす」


お誕生日だから甘やかしてみたい系女子


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