茹だるような暑さの中で一人、神社の鳥居に凭れていた。

江戸。突如天からやって来た異星人・天人に因って開国を迫られた侍の国、その中心地であるこの土地でも変わらずに残っている文化、夏祭り。天人とは言えども祭りとなれば関係無く、皆無礼講である。
入口直ぐの所に面屋が出ていたので狐の面を買った。待ち人は未だ来ず。

(あのヤロウ、誘っといて遅刻たァな…)

面屋の向かい側の店では綿菓子も購入したがそれも直に終わりそうだ。と、名前を呼ばれた気がして振り向いた。


「遅くなってすみません」
「全くだ、綿菓子食い終わるトコだったっつの」
「着るのに手こずってしまって」
「『手こずる』ったって、着物なんざ普段から着てるじゃねェか」
「いえ、帯を工夫しようとしていたら…」

成程、確かにいつもより少しだが洒落た結びになっていた。その変わりと言ってはなんだが、走って来たせいか髪が崩れていた。

「あーあー、髪こんなにしちまって、何、俺に憧れてンの?」
「いくら銀さんに憧れていてもそんな変な頭にしたいとは思いません」
「ちょっと傷ついたんだけど」

取り敢えず歩くか、とお互い言葉を交わさずに歩き出す。手始めに腹拵えからする。五平餅、くず切り、焼きトウモロコシ等、普段食べるよりも幾分か美味しく感じながら、他にもりんご飴やチョコバナナ、彼女は金平糖も買っていた。
一番奥まで来ると、入口のところとは違う面屋があった。そこの面屋は傍らでかざぐるまも売っていた。物欲しげにそれを見る彼女にひとつ買ってやる。ついでにそのかざぐるまを彼女の髪に挿した。

「簪の代わりな」

嬉しそうにする彼女の頭を、髪とかざぐるまが崩れない様にそっと撫でる。祭りの喧騒で聞こえなかった蝉の鳴き声が遠くから聞こえた。





巡る様に提出。




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