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負けず嫌い×負けず嫌い
さぁ、勝つのはどちら?



◆◆◆


「やぁ、佐助君」
「げっ」

 ぽかぽかとした穏やかな陽気。
 そこにはにこやかに笑う松永久秀と引きつった顔になっている猿飛佐助の姿があった。

「げっ、とはなんだね。げっ、とは。せっかく会いに来たというのに」
「……俺は会いたくありませんでしたよ」

 佐助はげんなりとした顔で、松永を見やる。
 そのげんなりさせている当の本人はニコニコした顔のまま。
 どうやら松永は佐助に会いに来たらしい。

「まったく毎度毎度毎度毎度毎度……。何であんたは俺様のところに来るんだ」
「それは卿に会いたいが為に決まっているだろう?」

 君に会いたいが為。普通ならこの言葉にときめく者がほとんどであろう。
 だが、佐助はあくまでも男だ。女ではない。
 むしろこの言葉を聞かされ、鳥肌がぶわりと立つ。
 佐助が心底嫌そうな顔をしていると、松永は何食わぬ顔でさわりと尻を撫でて来た。

「―――〜っ!!!!!!!」

 言葉にならない叫びと同時に背中に走る悪寒。
 反射的に佐助は松永に向かって手裏剣を投げつける。

「おっと」
「こ、このセクハラ親父がっっ!!」

 目尻に若干の涙を溜めながら佐助は怒鳴った。
 その顔は赤い。
 投げつけた手裏剣は最小限の動きで松永に避けられてしまっていた。

「セクハラ親父で結構。しかし、卿の尻は良い形をしているな」
「何を言い出してんだ、あんたは!男に良い形も悪い形もあるか!」

 佐助はさらに怒鳴る。

「何を言う。男だろうと女だろうと良い尻の形はあるものなのだよ。女で言うなら安産形、男は薄くも綺麗なラインを保ち、触った時の弾力が程良いもの…」

「……阿呆か、あんたは」

 怒鳴ったことが阿呆らしくなってくるような松永の回答。
 佐助は怒鳴る気力も失せ、横目で松永を見ながら言った。
 この松永久秀に怒鳴ったところで効かないのは百も承知だった筈なのに、だ。
 ペースを乱されている。佐助はそう思った。

「ところで佐助君。私の元へ来る気はないかい?」
「丁重にお断りします」

 話を切り替え、自分の軍に誘おうとする松永。
 しかし、間髪入れず佐助は断った。

「毎度言ってますけど、俺はあんたの所へなんて行きませんからね」

 どうやら来る度に松永は佐助を誘い、断られ続けているようで。

「ふむ…。まあ、いいさ。私は卿が私の元へ落ちてくれるまで通い続けるだけだからね」
「落ちるかっ!」

 自信げに言う松永に佐助は怒鳴るしかなかった。


 負けず嫌い×負けず嫌い=勝負はつかない。
 どちらかが折れるまでこの勝負は続くのだろう。

「佐助君」
「な、ん…っ!?」

 松永が佐助の名前を呼ぶ。
 「何ですか?」そう言おうとした佐助の言葉は飲み込まれて。
 佐助が振り向いた瞬間、松永は佐助に軽い接吻をしていた。

「それではまた」
「〜〜〜〜っ!!」

 声にならない佐助に、ニヤリと松永は笑いながら去っていった。
 その後ろ姿はかなり憎らしいもので。
わなわなと佐助は震える。

「もう、来るんじゃねぇええええっっ!!!!!」

 佐助の怒鳴り声が空に高々と響き渡った。
 案外、勝敗はもう目に見えているかもしれない。




何が何でも負けてやるものか!






(10/01/08)


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