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※捏造/リタらしくありません



本当は何を思ってたの?

いつも神出鬼没で
いつもおどけた顔をして

ふざけているかと思えば
真面目だったりして


そう……、

笑えないくらいに

本当のあんたが
見えていなかったんだ









「レイヴンっ!!」

 大声で目の前の人の名前を叫んだ。
 徐々に崩れていく建物。
 生き埋めになりかけたリタ達を助けたのは先ほどまで敵として戦っていたシュヴァーンの姿。

 その彼の正体は実はリタ達と共に戦っていたレイヴン、その人だった。
 彼は今にも瓦礫の下に埋まりそうになっている。
 その瓦礫を唯一支えているのはレイヴンの生命力で動いている魔導器で。

「お前たちは逃げろ…」
「嫌よ!! あんたはあたしらの仲間で、残してなんか…っ」

 額から血を流しながら、シュヴァーン…もとい、レイヴンは逃げることを急かす。
 しかし、リタはそこから逃げようとはせず、むしろ彼を助けようとレイヴンの元へ行こうとした。
 だが、そうしようとしたリタをユーリが阻む。

「リタっ!! 駄目だ、お前まで巻き込まれるだろうがっ。おっさんの好意を無駄にするつもりか!?」
「どいてよ、ユーリ!! じゃないとレイヴンが…っ!!」

 身体をはって止めようとするユーリを押しのけてレイヴンの元へと行こうとリタはもがく。
 嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
 その言葉だけが、リタの中を駆け巡った。
 懸命に手を伸ばす。
 無駄なことだと頭で分かっていても。

 お願いだから、と。
 この手を掴んで、と。
 今にも泣き出してしまいそうな顔。
 いつものリタからは考えられない行動。
 それだけ、リタはレイヴンがここに残ることを拒んでいた。

 何せ、ここに残ることは死を意味していたから。

「リタっ…!!」
「嫌だっ、離しなさいよぉーっっ!!」

 ユーリが制するもリタは拒む。
 嫌々と、駄々をこねる子供のように。
 建物が崩れていく。もう、時間は殆ど残されていなかった。

「リタ」

 そんな中、レイヴンが澄んだ声でリタの名を呼んだ。

「レイヴ…「行け」

 呼ぼうとした名前は遮られ、一言レイヴンはそう言った。

「レイ…「行くんだ!」

 強い言葉。
 瞳がすべてを語っていた。

「い…嫌よ、あんたを置いてなんて……そんな」

 それでも拒むリタ。
 レイヴンはキツい顔をしていたのを弛ませ、溜め息混じりにリタに語り掛ける。

「……リタっち。おっさんにも最期くらい、いい顔させてよ」

 ――それは、いつものレイヴンの表情。

「……レ、イヴン」
「ちっ、もう時間がねぇ! リタっ、後で怒るなよっ!!」

 その瞬間、フワリと身体が浮き、リタはユーリに担がれていた。
 そして、そのままの状態でユーリが外に出る為、駆け出す。

 どんどんレイヴンから離れていく。
 小さくなっていく姿。
 最終的に見えなくなって。

「レイヴーーーンっっ!!」

 リタは悲痛な声で叫んだ。


 いつも神出鬼没で。
 いつもおどけた顔をして。
 ふざけているかと思えば真面目だったりして。
 何を考えてるか分からなくて……。

 それでも、大事な大事な仲間で。
 嫌っているようで、でも本当は好きで。

「馬鹿……」

 リタはユーリに担がれたまま、小さく呟いた。
 その頬には一筋の涙が伝っていた。




I don't laughing.
(涙が零れ落ちて止まらない。)



(09/12/09)
あいうえお題 配布》蘖


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