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「…静雄さん」
「なんだ?」
「…この子、どうするんですか?」
「どうにかするしかないだろ」
「…はあ」

静雄が夜遅く、雨の中傘もささずにやってきたかと思えば、段ボール箱に捨てられた子犬を連れてきた。
―…この人が犬を好きっていうのは知ってたけど、なんで僕の家に…。

「悪いけど、タオル借りてもいいか?俺んちよりお前の家の方が近かったからよ」
「あ、はい」

バスタオルを取り、静雄に渡す。
静雄はそれで泥だらけになった子犬を拭きだす。
ミネラルウォーターをだせば、ぺちゃぺちゃとかわいらしい音をたてながら飲みだした。
静雄はそれを可愛いと言いながら眺める。

「…で、飼うんですか?」
「そうだな…、飼い主が見つかるまでうちで飼うしかないな」
「そうですか…」

静雄に頭を撫でられる子犬に、帝人はもやもやとしたものが心に沸き上がるのを感じた。
一言でいえば、この子犬に嫉妬しているのだ。
なんだかムカついて、静雄に頬擦りをすれば、静雄はどうしたんだと首を傾げる。

「僕にも構ってください」
「?おう」

頭を撫でられるが、帝人のもやもやが晴れない。
犬に嫉妬するなんて馬鹿みたいだ、と思い、子犬の頭を撫でる。
甘えるように鼻を擦り寄せてくる子犬に、静雄さんから見た僕ってこんな感じなのかな、と嫌な想像をしてみる。
―そういえば、静雄さんはよく僕を犬みたいだって言ってたな。
じぃっと子犬を見つめていれば、静雄はどうしたのかと帝人の顔を覗き込む。

「静雄さんは犬か僕、どっちがいいですか?」
「は?」
「だから、」
「んなもん比べる対象じゃねえだろ。竜ヶ峰は俺の大事だし、この犬も独りで可哀相だ」
「…」
「……まあ、敢えて言うなら竜ヶ峰の方がそりゃ大切だけど」
「…絶対ですか?」
「絶対だ」
「…じゃあいいです」

子犬を抱き上げ、ぎゅっと抱きしめていれば、その犬を挟み込むようにして静雄は正面から帝人を抱きしめた。

「こうやってれば親子みたいだな」
「静雄さんが親で僕が子供ですか?」
「お前が母親で俺が父親、そんでこの犬が子供だ」
「……僕が母親ですか」
「不満か?」
「…別に」


2010/8/22
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