dr | ナノ
※幼馴染パロです

「…ん」

寝返りをうつと、何かに当たる。
違和感に目を覚ませば、そこには男でも見とれてしまう程の美形な顔があり、帝人は引き攣った笑みを浮かべる。

「臨也、起きて。また僕のベッドに忍びこんで…もう」
「んー…」
「いつから来てたの?朝ごはんは?」
「んーん」
「はあ…」

溜息を吐き、ベッドから降りる。
臨也は寝ぼけながら後を着いてきた。

「お母さん、臨也の分も朝ごはん」
「あら、臨也君着てたの?」
「おはよう、おばさん」

人受けのいい笑顔を浮かべ、臨也は当たり前のように帝人の隣に座る。
帝人が眠っている間にベッドに潜り込むのはもう日常となっており、帝人の母親も何も言わない。
臨也は帝人の幼なじみで、幼稚園の頃からずっと一緒だ。
高校に入った今もよく一緒にいる。
臨也がほぼ一方的にくっついているような気もするが、帝人はあまり気にしていない。
トーストにかぶりつくと、臨也に皿の上のソーセージを食べられ、文句を言えば「喧嘩しないの」と母親に怒られた。

「ねえ帝人、今日何か用ある?」
「んー、特にないけど」
「じゃあさ、今晩お祭りあるから一緒にいかない?」
「ああ、そういえばあったね。僕は別に構わないよ。男二人っていうのはなんだか物寂しいけどね」
「俺は帝人といれたらいいよ」
「なにそれ」

笑いながら今度は帝人が臨也のソーセージを食べる。
臨也はそれについて文句を言うことはなく、帝人が食べ終えたのを見、慌てて平らげた。
部屋に戻り、服を着替える。
臨也は何かと泊まりにくるので帝人のクローゼットの三分の一は臨也の服で埋まっていた。

「祭は夕方から行こうか。で、それまで何しとく?」
「俺、ゲーム持って来た」
「本当、用意周到だね」

格闘ゲームをベッドの下から取り出す。
そんなところにも隠してるのか、とベッドの下を覗けば、ちょうどいいサイズの箱が置いてあり、中身はゲームばかりだった。

「いつの間にこんな…」
「今日の夜中、帝人が寝てる間に」
「一日でこの量?」
「俺がいないときもやっていいよ」
「…まあ、ありがと」

中には美少女ゲームもあり、臨也の考えることがわからなくなる。
―普段は女の子に興味のない臨也だけど、もしかして三次元の女の子に恋しちゃってます!っていうアレかな。
もしかして家にゲームが溢れすぎて僕の家に持って来たんじゃないかと苦笑を浮かべ、ハード機を取り出した。


「はい、俺の勝ちー」
「…つまんない、もうやめる」
「拗ねないでよ」
「拗ねてないもん」

帝人は臨也とのゲームに連敗し続け、ぽいっとコントローラーを投げ出しベッドに横たわった。
臨也は溜息を吐き、上から帝人に覆いかぶさる。

「帝人ー?」
「退いて、暑苦しい」
「もー…」

帝人の細い身体をぎゅっと抱きしめ、頭を撫でる。
帝人は子供扱いするな、とその手を払った。

「じゃあ違うゲームしよう」
「ゲームはもういいよ」
「んー、じゃあトランプは?」
「…それなら、まあ」

臨也は嬉しそうに笑うと、ベッドの下の箱からトランプを取り出す。
帝人は起き上がるとトランプを半分とり、シャッフルするのを手伝った。

「なにする?」
「ババ抜きとか」
「二人で?」
「じゃあ帝人のおばさん呼ぼっか」
「…いや、二人でいい」

半分に分け、ペアになったカードを捨てて行く。
最終的にはお互い五、六枚しか残っていなかった。
二人でトランプは無謀だったかな、と思いながらも、相手のトランプを引き、揃えば捨てる。

「…つまんない」
「また?今度は勝ったじゃない」
「やっぱり二人でババ抜きは無謀だよ」
「じゃあジジ抜きは?」
「そんなに変わらないと思うんだけど…」

帝人我が儘ばっかり、と溜息を吐きながら言われ、帝人は臨也を睨み付ける。

「じゃあもういいよ。後で公園で待ち合わせしよう」
「…どういうこと?」
「だから、どうせこうやってグダグダしても暇だから、臨也が一回家帰って夕方に公園で待ち合わせしようってこと」

帝人は最近まともにパソコン触れてない。
久しぶりにやりたいと思い臨也に言ったのだが、臨也は首を横に振る。

「…やだ」
「?」
「俺は帝人といたいの」
「…僕だって一人の時間が欲しいんだよ。臨也ばっかりに構ってられない」
「俺よりネットの方が大切なんだ」
「そういう意味じゃなくて…」
「じゃあどういう意味?」

―…臨也は怒っても饒舌だから困る。
帝人から目を逸らさない幼なじみに、帝人は小さく溜息を吐く。

「ねえ、帝人」
「…、臨也うざい」
「え…」
「臨也はいっつも僕に付き纏ってきて、違う友達と遊んでたら邪魔してくるし、うざい!」
「…ッ」
「もうお祭りも行かない、帰って」
「帝人、ごめん。謝るから」
「いらない、帰って」
「…ごめん」

パタン、という音を立て、扉が閉まる。
ちらりと振り向けば、もう臨也はいなかった。
―…言い過ぎちゃったかな。でも、一度はああやってはっきり言っとかないと。
自分のしたことは間違っていないと自分に言い聞かせる。
パソコンの電源をいれ、ネットに繋げる。
久しぶりのネットに楽しんでいれば、母親に呼ばれて気がつく。
―…もう夕方か。臨也…は待ってないだろうし、もういいや。

「臨也君とお祭り行くんじゃなかったの?」
「もういいんだよ、放っといて」
「…喧嘩したなら謝りなさいよ。さっき臨也君泣いてたし」
「…泣いてた?」

―…そういえば、臨也の泣き顔なんか見たことないかも。
同級生の静雄と喧嘩して負けたときも、山に遊びに行って転げ落ちて骨を折ったときも、臨也は泣かなかった。
―…公園、行くだけ。行くだけいってみよう
財布と携帯を鞄の中にいれ、玄関を飛び出した。
―見に行くだけ、見に行くだけだし。
いつも遊んでいた公園に着けば、他の人達も待ち合わせ場所にしているのか、結構な人混みがあった。
その中で、一つの黒い影を見つける。

「…臨也」
「帝人…」

目の下に少し腫れた跡がある。
帝人は溜息を吐き、臨也の頭をくしゃっと撫で、その腕を引っ張った。

「え?帝人、」
「お祭り、行くんでしょ」

速くしないと人でいっぱいになるよ、と顔を逸らしながら言えば、臨也は一際嬉しそうな声色で頷いた。


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2010/8/18
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