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「臨也さん、臨也さん」
「ん、なにかな?」
「僕にはどうして昔の記憶がないんですか?」

自身を見上げてくる純粋な眼に、臨也は苦笑を浮かべて帝人を抱き上げる。
「急にどうしたの?」と尋ねれば、ぎゅうっと臨也の服を掴む。

「だって、僕は臨也さんと出会う前のこと、何にも覚えていないんです。そんなの変じゃないですか?」
「どうして?俺は君の脳が俺だけに侵食されてるって思うだけで嬉しいよ」
「波江さんも知ってます」
「…それを引いてだよ」

むう、と頬を膨らませる帝人にくすくすと笑いながら、それを両手で挟み込むように押す。
すればぷーっと空気が抜け、余計な肉がついていないほっそりとした輪郭が現れた。

「帝人君、帝人君はずっと俺の側にいてくれるんだよね?」
「何度言えばわかるんですか。僕はずっと臨也さんの側にいます」

真っ直ぐな瞳で見つめられ、臨也はよかった、と帝人の肩に顔を埋める。
帝人は変な臨也さん、と呟いたが、臨也は心配なのだ。
いつか記憶を取り戻して自分の元を去り、静雄の処へと行ってしまうのではないかと。
帝人の温かな掌を掴み、
―この温もりがいつまでも、か。ああなんて愚考なんだろう。
そう思ったが、臨也にはそう願わずにはいられなかった。

(骨抜きって正にこのことだよねえ)


2010/8/1
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