dr | ナノ
「ほんっと困ったもんだよね、シズちゃんも。俺の仕事をとことん否定してたくせにさ、こういう時になったら頼るんだよ?」
「で、僕の家に着た理由は何?静雄の愚痴だけだったら怒るよ」
「セルティと二人の時間を邪魔されただけで怒るなよ」

相変わらず、我が物顔でソファに座りながら食えない笑みを浮かべる。
新羅は溜息を吐きながら珈琲を一口含み、何かを思い出したような表情をした。

「そういえば、前に臨也が言ってた子、どうしたの?」
「…、喋ってくれるようになったよ。俺がいないと寂しいんだって。仕事で遅くなったら玄関でずっと待ってるんだ。本当、可愛い子だよ」

臨也がそう語った途端、新羅は珍しいモノを見るような表情をし、臨也は何、と眉間に皺を寄せた。

「臨也も人間らしい表情をするようになったね、吃驚だよ」
「新羅…、俺も人間だから」
「好きな人っていったら、帝人君どこ行ったんだろうね」

新羅も帝人君について知ってるんだ、となんだか悔しい気分になる。
臨也が返事をしないでいると、新羅は静雄方面の話題を始めたから何も言わなくなったと解釈し、一人で話し出した。

「僕も知ったのは昨日なんだ。ずっとイライラしてたのは帝人君と急に連絡がとれなくなって一人で探してたらしい。……、いや、セルティには言ってたんだっけ。まあ探してたらしいんだけど、手掛かり一つ見つからなかったらしい」
「…へえ、捨てられたんじゃないの?」
「それにしては通帳とか、携帯も部屋に置きっぱなしだったんだって。学校にも何の知らせもないらしくて」

再度どこ行ったんだろう、と呟いた新羅に、コイツもセルティ以外に興味あったんだと考えたが、その次の「セルティが心配してるんだよね」という科白に、やっぱりそうかと顔を背けて珈琲を飲み干した。

「そういえば、臨也の好きな子って何て言うの?」
「…秘密」
「…まあいいけど」

もうそろそろ帰ろうかな、と臨也が立ち上がれば、「帝人君のこと、捜してあげてね」と言われ、無言で手をひらひらと振った。



「臨也さん、お帰りなさい!」
「ああ、ただいま」

飛びついてきた帝人に、臨也はよしよしと頭を撫でる。
「シズちゃんなんかに渡すものか」と呟けば、帝人は小さく首を傾げたが、何もないと強く抱きしめた。


2010/8/1
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