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「帝人」
「うー」
「…帝人」
「うー…」

こうやってにらめっこをして、一体何分経っただろうか。
静雄とではない、目の前の野菜達とのにらめっこ。
昨日までは何も言わずに全て食べていたのだが、今日急に食べなくなったのだ。
好き嫌いに関しては静雄も多少なりとあるので文句は言えないが、野菜を全く食べないというのは問題だ。
人参をフォークで刺し、口元に近づける。
帝人はそれを恨めしく見つめ、目を逸らした。

「帝人、ちゃんと食べないと大きくなれないぞ」
「いいもん」
「また背の順で一番前になるぞ?」
「…別にいいもん」

ぷいっと顔を背ける様はかわいらしいが、甘やかしてばかりもいられない。
帝人の身体をひょいと持ち上げ、自らの膝の上へと座らせる。
すると、帝人は静雄の身体にぎゅうっと抱き着いた。

「…なんで野菜を食べないんだ?」
「だって、大きくなりたくないんです…」
「は?」
「大きくなったら可愛くなくなって、お父さんにぎゅってしてもらえなくなるって」
「誰が言ったんだ。臨也か?臨也の野郎か?」
「ううん、正臣」

一度そいつとは話をつけないとなあ、とどす黒い感情を隠しつつ、帝人の頭を優しく撫でる。

「お前が野菜を食べなくて倒れたりしたら、俺は帝人を育てられないって判断されて一緒に住めなくなるぞ」
「…ッそれはヤです!」
「だろ?それに俺はお前が小さかろうが大きかろうが、可愛くて仕方がねえよ」

軽くに旋毛に口づけ、ほら、とフォークを差し出す。
元々嫌いという訳ではないので、帝人はすぐに残っていた野菜を全て平らげた。


2010/7/23
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