「なあ、帝人」
「なんですか?」
きょとんと首を傾げた帝人に、静雄はまた日を改めるべきかと思ったが、今言わないとまた次もまた次と言ってずるずると流れていってしまいそうになるのでダメだ、と意を決して帝人と向き合う。
「静雄さん?」
「その…静雄さんっての、やめないか?」
「う?」
「だから、えと、あの」
一言で言うと、いい加減「お父さん」と言ってほしい。
自分達は血が繋がっていない、しかも出会ってからまだ三ヶ月しか経っていない相手を父親として見るのには無理があるのはわかっている。
あ゛ー、と悩んでいれば、帝人は少し照れ臭そうに静雄の服の袖を引っ張る。
どうしたのかとしゃがみ込めば、帝人は静雄に耳打ちするように呟いた。
「…お父さん」
「…ッ」
可愛い、やばい可愛い。
えへへ、と悪戯の成功した子供のように無邪気に笑う帝人に、静雄は一生手放せないかもしれない、と心底感じた。
(好きな人ができた、なんて言われたら暫く立ち直れないかもな…)
2010/5/17