デュラララ!! | ナノ

「…ッは」

背後から足音が聞こえてくる。
帝人が走れば足音も走り、帝人が止まれば足音が止まる。
幽霊だと思えるほどポジティブでもない。
誰かが自らの後を着いてきている。
帝人自身に追われる理由がわからない。
気のせいだと思いたいが、この人気のない道でこんなことがあればそうは思えない。

どうしよう、こういうときって自分の家に帰らない方がいいんだろうか。
今からでも紀田君の家に行こうかな。

そう思い脚を自分の家と違う方へ向ける。
暫くすると、背後からの足音が聞こえなくなる。
よかった、これなら家に帰れる。
紀田君に変な心配掛けたくないし。
Uターンをして家へと帰ろうとすれば口元を何者かに塞がれ、冷や汗がぶわっと湧く。
…待てよ、この香り。何処かで嗅いだことが…。

「やあ、帝人君!」
「…ッふは、臨也さん…」

帝人の口元を塞いでいた当の本人は笑顔で挨拶をし、帝人を解放する。
はた迷惑な人だな、と帝人は臨也を睨み上げると、臨也は肩を竦めた。

「口を塞いだぐらいでそんなに怒らないでよ。本当は手じゃなくて俺の唇で塞ごうと思ってたんだけどさ」
「…僕の後を追い掛けてきたじゃないですか」
「?言っとくけど、俺は今さっきたまたま帝人君を見掛けたから後ろから口を塞いだだけで、追い掛けてはいないよ」
「…え?」

臨也さん、じゃ…ない?
じゃあ一体誰が…。
状況を理解すれば、血の気が一気に引く。
顔色を悪くした帝人に臨也はそれを覗き込む。

「帝人君、大丈夫?」
「は、い…」

嘘だ、全然大丈夫なんかじゃない。
そう察した臨也は帝人の腕を引き、明らかな目的を持って歩き出す。
何処に行く気なのかと尋ねたかったが、見覚えのある道に自分のアパートに帰らせるだけか、と吐息を零す。
部屋の前まで来たので鞄から鍵を取り出すが、臨也は自分のポケットから取り出した合鍵で扉を開ける。
なんで僕の部屋の合鍵を持っているんだと文句を言いたくなったが、その話はまた後日しようと臨也の後を着いて行く。

「いいかい、絶対知り合い以外が来ても開けてはいけないよ。宅急便とかが来てもだ」
「え?」

帰りそうな雰囲気に不安げな声を出せば、臨也は「じゃあね」と去ろうとするので咄嗟に服の袖を掴む。
意外そうな表情で振り返られ、帝人は申し訳なさそうな声を上げる。

「臨也さん、その…」
「何だい?」
「あの、今晩お忙しいですか…?」
「忙しいといえば忙しいかな」
「そう…ですか…」

俯けば、臨也はしゃがみ込んで帝人に目線を合わせる。

「でも、帝人君が居てほしいっていうなら傍に居てあげるけど?」
「…傍にいて、ください」
「ははっ、…いいよ」

頭を撫でれば帝人はくてんと臨也に身を委ねる。
さて、明日にでも帝人君を着けてたって奴を捜し出して葬らないとね。
臨也はそう考えながら帝人の身体を抱きしめた。


「…は?」
「だから、昨日こっそり帝人を着けてたら臨也さんが居たから逃げたんだって。まさかあんなところに居るとは思わなくてなー」
「ちょっ、待って。アレは紀田君だったの…?」
「うん…って帝人、ボールペン危ないからしまえよ、な?」
「一辺死ね!」


2010/4/8
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