デュラララ!! | ナノ
 シャカシャカと静雄の掌から音がする。それが止むと、目の前に深い青のグラデーションがかかった液体が入ったグラスを差し出された。
「飲め」
「ちょっとシズちゃん。もっといい言い方とかなかったの?二十歳の誕生日おめでとう、とかさ」
「るせぇ」
 言い争いを始める二人に帝人は苦笑を浮かべた。
 今日は帝人にとって、記念すべき誕生日だ。セルティが誕生日会を開き、皆が帝人を祝福してくれた。静雄はその席にも参加していたのだが、何をするか知らされていないまま招待されていたらしく、プレゼントを用意していなかった。その埋め合わせをさせてほしいと静雄の家に行くことになったのだが、誕生日会に招待されていなかった臨也が現れた。彼も帝人を祝いにわざわざ池袋にまで来たらしい。
 戦争を始めそうだった二人を止めたのは帝人だ。「喧嘩をしないでください!」と二人の腕に掴まれば、二人同時に動かなくなった。帝人はその隙に臨也から手を離し、静雄の腕を引く。
「すみません、臨也さん。僕、これから静雄さんの家に行くので」
「はぁ?」
 臨也の目に不快の色が浮かぶ。帝人は一瞬怯んだが、すぐに静雄が臨也へと噛み付く。
「そういうことだ。じゃあな」
「待ちなよ。帝人君、君がコイツの家に行くって意味がわかってやってるの?」
「?」
「食べられちゃうに決まってるじゃないか。シズちゃんは獣みたいなやつなんだよ」
 静雄は顔を真っ赤にして否定する。帝人は静雄には人食の傾向があるのかもしれないと誤解する。勿論静雄にそんな性癖はないのだが。
「別に変なことする気はないっていうんだったら俺も連れていってよ。俺は帝人君と一緒にいたいだけなんだからさ」
 静雄は戸惑い交じりに帝人を見る。帝人に遠慮しているのかと思い、帝人は両手を胸の前で振る。
「僕は別に構いませんよ」
「本当?」
「竜ヶ峰…ッ」
 静雄からしてみればフォローしてもらいたかったのだ。しかし、静雄とアイコンタクトができるほどの交流がない帝人はわからなかった。
「じゃあ行こう、帝人君。実はケーキがあるんだ」
「ケーキ…!」
 帝人の瞳が輝く。臨也が背後からケーキの箱を取り出したのだ。ほんのりと甘い香りがする。静雄もそれに惹かれそうになるのを咳ばらい一つすることで誤魔化し、足を進めた。そのあとを帝人が追い、そして臨也が続く。
 静雄の誕生日プレゼントとは、お手製のカクテルだった。さほど上手いものは作れないが、昔バーテンダーをやっていただけに基本のものは作れた。たまに飲んでいたので、材料は家にある。
 静雄はオリジナルのカクテルを帝人へとプレゼントした。最近、帝人をイメージして作っていたものだ。
 帝人は恐る恐ると口に含む。それはとても甘かった。思わずグラスから口を離してしまう程に。初めて飲むカクテルがそれだったので、カクテルはこんなにも甘いものなのかと思ってしまう。
 隣からそれを引ったくったのは臨也だ。一口飲み、うげと舌を出す。
「なにこれ、甘…。これって、シズちゃんのオリジナル?確かに君のいかれた舌には丁度いいかもしれないけどね。ああ、もしかして帝人君をイメージして作ったのかな?」
「え?」
「……手前には関係ねえだろうが」
「まあね。でもさ、これじゃあ帝人君の魅力を全然活かしきっていない」
――……僕の魅力って何。
 臨也は身を乗り出し、手を出しはじめる。理想の帝人カクテルを作るらしい。
 せっかく誕生日プレゼントに自分にへと頑張ってくれているので、帝人は邪険にすることもできない。失敗作などは進んで飲んだ。なにより材料が勿体ない。
 完成する頃には出来上がってしまっていた。テーブルに頬を押し付け、意識は辛うじてあるが、視点は定まっていなく、どこか宙を眺めている。
「帝人君、大丈夫?」
「んー…」
 臨也が肩を揺するが、ごねる子供のようにテーブルにしがみつき、顔を伏せる。思わず溜息が出た。呆れではない、愛しさを含むものだ。
「竜ヶ峰、立てるか」
「んぅ、ん…」
 頬を染め心地良さそうに眠るだけで、まともな返事が返ってくるようにはみえない。静雄は諦め、帝人を横抱きにする。
「え、ちょ、どうするの」
「泊める。こんなんで帰せねえだろ」
「大丈夫だし、俺が送るから」
「もっと危険だ」
「俺はシズちゃんも十分危険だと思うけどなあ」
 にやにやとした笑みを浮かべる臨也に苛立ちを覚えつつ、帝人の身体をベッドへと寝かせる。布団をかけたが、寝相ですぐに蹴飛ばされてしまった。
 開けたシャツから覗く肌がアルコールで桃色に染まっている。思わず唾液を飲み込む。
「シーズちゃん。今、君自分がどんな目してたかわかる?」
「ああ?」
「欲情しまくりの目。発情期の獣みたいだ。まあ気持ちはわからなくはないけどね」
 口元を緩めながら帝人の裾に手を入れ、腹を撫でる。帝人は眉間に皺を寄せたが、目を醒ますことはなかった。いつもより高い体温に、臨也は「子供体温みたい」とつぶやいた。
「お、おい…」
「なに?今のうちに触っておかないと、帝人君は滅多に触らせてくれないからね」
「そうなのか?」
 静雄はよく帝人の頭を撫でるのでそういう意味の疑問だったのだが、臨也は喧嘩を売っているのかと眉間に皺が寄る。
 ムスッとした表情で、帝人の服を剥ぎ取った。ブチブチと釦が弾け飛ぶ。
「おい、何してんだ手前」
「だって今がチャンスじゃん。ヤるなら今のうちだろ?」
「犯罪だぞ!」
「嫌ならどっか行けば?ああ、ここは君の家だったね。わかった、俺が出てくよ」
 臨也が帝人の細い身体を持ち上げようと腰を掴めば、手首を掴まれる。その手の持ち主は静雄だ。
「ッ待て、……わかった」
「そうこなくっちゃね。酔い潰したし、このままヤってる途中に目覚めなかったらバレないよ。服をちゃんと着せて、家にうまく帰せばね。酒を飲んでたら突然暴れだしたって言えばいいんだよ。どうせ彼は男に抱かれただなんて信じたくないだろうからね」
 静雄は無言で頷いた。彼の視線は真っ直ぐに帝人へと向かっている。
「じゃ、ここからは互いに好きにするってことで」
 早速帝人の熱っぽい唇に口づける。くぐもった鼻を抜けるような甘い声に誘われるように静雄の掌が帝人の素肌へと伸びた。汗が滲む肌は掌にしっとりと馴染んだ。胸の突起を人差し指と親指を用い、挟み込むようにして弄る。
「ん、ふ……」
「気持ちいいのかな?」
 クスクスと笑いながら帝人の下半身を布越しに刺激する。ぴくぴくと身体を揺らす反応に口元を緩める。下を脱がせ、さらけ出された小柄な身体と同じように小さめなそれに触れる。帝人の眉間が切なげに寄せられた。
「竜ヶ峰……」
「ふ…ぁっ」
 自身からは先走りがぽたぽたと溢れている。臨也は思わず舌なめずりをした。
「ぁぐ…っ」
「……は?」
 今にも弾けそうだった自身は一瞬で萎えた。それもそうだ、帝人の秘部には静雄の指を銜えさせられていた。
「ちょっ何してんの?」
「好きにしていいって言ったのは手前だろ」
「だからって……ああくそ」
 先を越されたことにも、楽しみを邪魔されたことにも苛立つ。静雄は何か潤うものが必要だと思ったのか、ベッドの隣にあった引き出しからローションを取り出した。
 俯せにされ、臀部にありったけかけてやる。人差し指はローションのぬめりを借り、簡単に入る。
「ははっ。帝人君、女の子みたいにぬるぬるだ」
 三本入るようになった頃には痛みもだいぶ消えたのか、安らかな寝顔に戻っている。意識がない分力が入ることはないので馴らしやすいのだ。
「ん、もういいか」
 膨張した自身を取り出した静雄に臨也は慌てて制止させた。
「待ちなよ。それは譲らないよ」
「あ?好きにしていいんだろうが」
「ふざけないでよ。俺がどれだけこの日を待ち望んでたと思うわけ?」
「それは俺も同じだ」
「いや、本当に頼むから。本当、お願いします」
 ベッドの上でだが土下座する臨也に、静雄は妙な気持ちになる。髪をくしゃりと掻き上げると、「わかったよ」と宛てがっていた秘部から自身を離した。臨也は気持ち悪い程の笑顔で喜び、帝人を仰向けにさせ脚を広げさせる。
「さあて、帝人君。上手に俺のを飲み込んでね」
 ぐ、とまずは尖端を押し込む。流石の帝人も痛みに顔をしかめた。一番太い部分を越えると、そこからの挿入は楽になった。静雄が念入りに馴らしたおかげもあるだろう。
「は…帝人君のナカ、熱……」
 息を吐き、ナカの感触を揺すりながら味わう。
「ぁ…ん、……ぇ?」
 目を醒ましたらしい帝人はその瞳を丸くし、臨也の顔を凝視している。
「臨也、さん……?」
「うん。シズちゃんもいるよ」
「なに、これ…ひぃっ」
 酔いは完全に醒めてしまったようで、状況を理解しようと視線をあちこちにさ迷わせている。
 臨也は笑みを浮かべ、腰を激しく突き立てた。リアルな感触がより現実を鮮明にさせる。
「うそ、いやだ…」
 拒絶の言葉を並べようとした口を静雄によって塞がれる。臨也はここぞとばかりに律動を開始した。ナカを無理矢理突き上げられる感覚に吐き気がする。嫌悪から生理的な涙が溢れた。
「帝人君…、出すね」
「おい、俺も挿れんだからナカに出すんじゃねえぞ」
「はいはい。全く、萎えるようなこと言わないで貰いたいな」
 帝人は絶望したかのように目を見開いている。臨也は唇で孤を描くと、自身をナカから抜き、帝人に向かって射精した。一部の液体が顔にも飛び散っている。
「うう…」
「ほら、帝人君、舐めて」
 人差し指で己の出した白濁を掬い上げ、口へ挿れ掻き交ぜる。苦味に暴れようとしたところを静雄によって頭を固定され、動けなくなった。
「歯をたてないでね」
 喉の奥へと指を突っ込む。吐き気がするのか唾液が口端からこぼれ落ちる。臨也はにこりと微笑んだ後、口から指を抜き、唾液に塗れた指を端正に舐めた。
「ぅ、げほっげほっ」
 暫く咳込んだ後、虚ろな瞳で宙を見上げる。今にも気を失ってしまいそうな帝人に、静雄は身体を持ち上げ、再び俯せになるよう柔らかなベッドへと押し付ける。
「まだ寝んじゃねえよ」
 尻を掌で叩く。肌と肌がぶつかり合う音に、帝人は痛みから悲鳴を上げた。
「痛いよね。可哀相に」
「ひ…、ぅ…も、やめてくだ」
「だーめ」
 臨也の無情なまでの返事とともにぐり、と静雄の自身が押し入るように入ってくる。臨也のより大きなそれは、帝人の身体をよりいっそう追い詰める。
「ね、帝人君。楽しい?」
「……ッ」
「ああ、そっかあ。首振っちゃう?残念だな、帝人君」
 ベッドに突っ伏していた顎を掴まれ無理矢理上へと上げさせられる。開いた口に突っ込まれたのは日本酒の瓶だ。中の酒が喉の奥に流し込まれる。
「おい、それ高いんだぞ」
「あとで弁償するよ」
 世間話をするかのように軽い口調で互いに違う方法で帝人を攻め立てていく。息を止め、どうにか酒を飲み込むのは堪えていたのだったが、最悪のタイミングで静雄のそれが前立腺を掠め、帝人の身体が跳ねるとともに勢いよく酒を飲み込んでしまった。そのままなし崩しに飲み干していく。
「いい飲みっぷり」
「かっは…げほげほっ、ッひああ」
「忙しいねえ、帝人君。シズちゃんのそれ、そんなに美味しいの?」
「ちが、ふあ…」
「そうなのか?竜ヶ峰」
 アルコールが脳にまで作用しているのか、顔は赤く染まり呂律が回っていない。思考もうまく紡げないらしい。次第に帝人の口から喘ぎ声がとめどなく溢れてくる。
「ン、出す……ッ」
 静雄が熱を吐き出す前に帝人は達した。我慢することなくナカに吐き出せば、帝人は蕩けた声で「あったかい」と呟く。
「ちょっと、なにしてくれてんの?人には中出しするなとか言っておきながらさ」
「掻き出したらいいだろ。そうだ、竜ヶ峰。次は風呂場でやるか」
「……最初は乗り気じゃなかったくせにさ」
 酒の影響で夢心地な帝人は静雄と臨也の会話は頭に入ってこなかった。
 二人は獣の如く微笑むと、帝人の細い腕を掴んだ。


2011.9.27
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