デュラララ!! | ナノ
 シャカシャカと歯を磨きながら、寝ぼけた顔を鏡で見る。
 あの後、仕事から帰ってきた静雄の両親に挨拶し、そのまま静雄の部屋に布団を引き、眠りに就いた。津軽は一緒に住んでいると聞いたが、あれから会ってない。
――…いや、会っても反応に困るんだけど。
 水で口を濯ぎ、顔を水で洗う。両親はすでに仕事に出掛けたらしく、家は静かだった。ちなみに静雄はまだ寝ていたので寝かせておいたままだ。
「帝人さん」
「あ、幽君、おはよう」
「おはようございます。俺、部活あるから、兄さんが起きたら適当に何か作ってやってもらえますか」
「うん、わかった」
 相変わらずの無表情さに苦笑しつつ、いってらっしゃいと手を振る。幽は頭を軽く下げ、鞄を持ってでていった。
「…さてと、静雄を起こさないと」
 階段を上がり、静雄の部屋へと向かう。欠伸を一つ零すと、身体が突然横へと引っ張られた。帝人は驚きの声を出すこともなく、身体を床にぶつける。扉の閉まる音と鍵の締まる音に痛む身体を支えながら上半身を起こすと、そこには静雄がいた。いや、違う、これは津軽だ。
「津軽、さん…」
「昨日は静雄がいて話せなかったから」
 津軽は静雄と同じ顔をしているが、無表情なところは津軽に似ている。昨晩のは演技だったのだろう。
「なんですか…?」
 もしかして、昨日のことを謝るつもりだろうか。そういう目で津軽を見ていると、津軽はしゃがみ込み、帝人の顔をじっと見詰める。
「あ、の…」
「…やっぱりいいな」
「はい?」
 何がいいのか、帝人には全くといっていいほどわからない。言葉を紡ぐより先に、津軽の手が帝人の服を掴む。
「え、え?」
「静かに。静雄が起きる」
 前が無理矢理開けさせられ、帝人が声を上げる前に、昨晩のように津軽のそれで口を塞がれた。
 昨晩は静雄だと思っていたから平気だったのだ。これは静雄とは違う、別人だ。生理的な嗚咽感が沸き上がる。
「ッ…やっん…」
 津軽の手が帝人の素肌を伝う。帝人はぞわぞわと身体が手を拒絶しているのを感じていた。胸の突起に触れた瞬間、帝人は防衛本能で気付けば津軽の頬を殴っていた。
 津軽は無表情で赤くなった頬を摩り、怯えた表情の帝人をじっと見詰める。
「ぼっ僕に触らないでください!また殴りますよ…ッ」
「…今の、本気で殴ったのか?」
「やっやだ、来ないでくださ…」
「嫌だ」
 恐怖心からか涙がぽろぽろと溢れる。両手を掴まれ、床にへと押し倒された。頭上に一まとめにされると、帝人は足で津軽を蹴ろうと足掻く。だが、自身を膝でぐっと押され、痛みで動きを止めた。
「ぅ…あ…静雄…」
 帝人が静雄の名を呟いた瞬間、鍵のかけてあったはずの部屋の扉が蹴り破られた。
「津軽、手前!帝人、を…」
 入って来たのはやはり静雄で、二人の状況を見て固まる。帝人が静雄の名を呼ぶより先にブチ切れた。帝人の上に乗り掛かっている津軽を一瞬で蹴り飛ばす。そのまま殴り掛かろうとした静雄を、帝人はなんとか引き止める。
 今の静雄なら誤って人を殺しかねない。
 しかし、静雄は帝人を睨み付けると、帝人の髪を掴み、そのまま引きずるように歩く。帝人は痛みから、必死に静雄の後を追う。静雄の部屋に入ると手は離された。だが、静雄は怒ったままだ。
「…津軽と何やってたんだよ」
「なにって、」
「みりゃわかるって?結局津軽に惚れてんじゃねえか、嘘つき野郎」
「ちがっ」
 どうして静雄はこんなに怒っているのか。帝人にはそれはわからない、理解できない。
 開けた服を手で掻き寄せるように前を閉じると、静雄の手が伸びてくる。目的を測るためにそれを見ていると、掌は開いた服の間に入り込み、帝人の素肌を撫でた。ぞわりとした感覚に、静雄の名を呟く。聞こえている筈だが、静雄から反応はない。代わりにびり、という音をたてて帝人のシャツが破られる。釦が数個部屋に転がる。
「静雄!」
「るせえ」
 胸の突起に舌を這わされ、もう片一方を硬い指で刺激されるが、帝人には嫌悪感しか感じなかった。女ではあるまいし、そんなところで感じない。まるで乳児のように吸う静雄の頭を必死に押しのけようとする。津軽のように殴ろうという気になれなかったのは、恐怖心からだ。ここまでされても、静雄に嫌われたくないという感情がある。
 静雄の手は上からずれていき、下へと向かう。下着の中にゴツゴツとした手が入り込む。萎えたそれをぎゅと軽く握り、そのまま上下に動かす。ただ抜くだけのために動いている手は、多少荒いが自慰するときと少し似ている。静雄は帝人の顔の変化を観察するかのようにじっと見たままだ。
「ひぃ…んく…」
 びくっと身体を跳ねさせたところで、静雄は帝人の自身から手を離す。そして、下に穿いていたものを剥ぎ取る。脚が突然ぐいと持ち上げられ、渇いたナカに指を挿れられ、帝人は悲痛の声とともに目を見開く。
「やっぱり何かで濡らさねえとだめか…」
「静雄、ね、もうやめよう?」
「ま、いいか」
 静雄に帝人の声が聞こえてる様には見えない。嫌だと首を振るが、静雄は気にせず膨張した自身を取り出し、帝人の秘部へと宛がう。自分とはサイズの違うそれに、帝人は絶句し、息を飲んだ。
 熱い先端が秘部に当たる。そして、静雄は帝人に口づけながら力を入れた。自身は肉を裂くように少しずつ入ってくる。
 そこは何も慣らしてないのに等しい。鉄の臭いと痛々しい悲鳴が部屋に響く。まだ先端しか入っていないが、帝人にとっては苦しくて仕方がない。
 静雄は舌打ちをすると、無理矢理力で押し入ってくる。身体が普段じゃありえない音がする。そこは、痛みで熱と発し、血がダラダラと流れる。帝人は泣きじゃくることしか出来なかった。
 すべて入りきるころには、帝人は顔面蒼白とさせながら、涙をぽろぽろと流していた。
「こういう時、力が強くてよかったと思うぜ…」
 帝人はその科白を聞き、痛みの中思考に捕われる。静雄は、帝人にとってのスーパーマンだった。力が強くて無器用だけど、暖かくて優しい人。
 だからこそ、目の前の人物が静雄だと信じられなかった。もしかしたら、また津軽なのかもしれない。
「…おい、何考えてんだよ」
 ぐり、と動かれ、少し落ち着きかけていた痛みがまた溢れ出す。声を上げ、涙で潤んだ瞳で静雄を見上げると、静雄は満足したように微笑む。
「こんだけ狭いんだから、お前処女だよな」
 男にその言葉はあってるのかと思いながらも、首を縦に振る。静雄はよし、と呟き、帝人の足を持ち直す。
「…もう、いいよな」
「ッや、だ…しずお…」
「五月蝿えな…そんなに嫌なら津軽にでもされてると思えばいいだろ!」
 静雄は帝人は津軽のことが好きだと勘違いしているのだ。帝人は唇を戦慄かせながら、違うと呟く。
「僕は、津軽さんのことなんか、好きでもなんでもない…」
「…え?」
「僕が好きなのは……、……静雄、だもん」
 帝人がそう言った瞬間、静雄のそれが帝人のナカでより大きくなった。帝人はなんでと思いながら、目を丸くしたままの静雄をそっと見上げる。
「静雄…?」
「ッ」
 静雄の自身がナカからずるりと抜ける。抜けた後は熱の喪失感と切れた部分がじわじわと痛みを走らせているだけだ。
 静雄はスス、と後ろに下がり正座をすると、床に頭をゴンッとぶつけさせた。所謂、土下座というやつだ。
「わわわわわりい!」
 何度も床に頭をぶつけていると、ミシッという音とともに、床の板に亀裂が生まれる。帝人は痛む身体に鞭をいれつつ、慌てて止めた。
「わっわかったから!」
「本当か…?」
 ブンブンと首を縦に振る。
 静雄は床から頭を上げた。額からは少し血が滲み出ていた。
 動くと帝人からぽたりと血が流れ、慌てて後ろを手で押さえる。静雄はそれを見ると、申し訳なさそうな表情をし、引き出しから軟膏を取り出した。
「帝人、寝転べ」
「え」
「軟膏、塗るから。その、血が出てるだろ」
 躊躇していると、脚を無理矢理上げられ、身体が後ろへと転がる。静雄はすかさず軟膏をたっぷりととり、切れたところに塗り込む。痛みに思わず力を篭めてしまう。
「帝人、塗りにくいから…。深呼吸できるか?」
「う、うん…」
 必死に深呼吸をしていると、静雄は帝人の頭を撫でながら塗り込んでいく。
「…よし、終わった」
「は、ふ…」
 無意識のうちに止めていた息を再開させる。静雄は帝人の服を整え、ついでに自分の衣服を整えた。暫く、二人の間に長い沈黙が訪れる。その沈黙を先に破ったのは静雄だった。
「その、本当にすまねえ…!」
「…うん、このことに関してはものすごく反省してね」
 もしあのまま続けられていたらもっと酷いことになっていただろう。傷だって、もっと深いものに。
 ぴりぴりと痛む尻を押さえつつ、静雄の頭を軽く叩いた。
「これで許す」
「帝人…お前、思ったより男前だな」
「なんか気になるところはあるけど、褒め言葉として受け取っとく」
「…で、さ…。その、さっきの俺のことが好きだって科白…」
「本当のことだからしょうがないじゃん」
「お、俺も帝人のこと好きだ!」
「知ってる」
 あれだけされたら嫌にでも気付くよ、と呟き、今更ながらに赤くなる静雄の耳を見て、小さく笑う。
 静雄は笑われたことに怒ることもなく、帝人にばれないよう、ひっそりと安堵の息を吐いた。



2011/6/13
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