デュラララ!! | ナノ
 がつがつと白米と梅干しを平らげると、帝人はふぅ、と息を吐いた。「ごちそうさまでした」と手を合わせ、パソコンの画面と向き合う。
 ダラーズのサイトを徘徊していると、ポンッとサイケデリックな色合いが特徴の、金髪の長身の青年がパソコンの画面上に現れた。まるで池袋の喧嘩人形のような容姿をした彼は、白とショッキングピンクのスーツを纏っている。
 帝人は慣れた様子で「どうしたんですか?」と微笑みを向けた。
『またそれだけかよ』
「え?ああ、御飯ですか?月末はピンチなんです」
『……』
 彼、デリ雄はじとっとした瞳で帝人を見上げると、ス…と姿を消した。
「デリ雄さん?」
 彼の名を呟いたが、デリ雄は姿を現さなかった。怒っちゃったかな、と首を傾げる。
――でも、月末がピンチなのは本当なんだけどな。
 苦笑を浮かべながら、引き続きネットの徘徊を勤める。その日はデリ雄が現れることなく、日付が変わる頃に就寝した。

「…、…?」
 帝人は夜中にふと目が覚めた。いつもは一度寝たらあまり起きないはずなのだ。上半身を持ち上げると、小さく伸びをする。
 水を一口飲もうかとのそりと立ち上がると、突然パソコンの画面が着いた。あれ、と思いつつ画面を覗き込むと白く光ってるだけで、何も表示していない。
 バグかと思い、電源のボタンを数度押すが、反応はない。帝人は溜息を吐くと、電源のコンセントを引っこ抜いた。だが、パソコンは動いたままだ。
――…あれ、このパソコン、バッテリーとかじゃなかったよね。
 パンパンと横からパソコンを叩く。これで直るとは思っていないが、気休めのようなものだ。
「ぅー…、修理出さないといけないかなあ」
 修理代という言葉が頭に過ぎるが、首を横に振った。
「…デリ雄さん、大丈夫なのかな」
 デリ雄のソフトのバックアップはあるが、今までデリ雄と過ごした日々のデータは消えてしまうかもしれない。あのデリ雄との最後の会話が御飯についてだなんて悲しすぎる。
 なんとか戻らないかとパソコンをコンコンとしていれば、パソコンについてた電気がふと消えた。もしかして、帯電していた電気が切れたのかもしれない。
 明日は念のため専門店に電話してみようと決め、布団に入ろうとすると、頬に何かが当たる。ひやりとした感触に振り返れば、パソコンの画面から無数の白い腕が伸びている。
 まるでホラー映画のような展開に、帝人は顔面蒼白になりながらガタガタと歯を揺らす。非日常は大好きだが、こんな非日常はいらない。
 手は小さいが、帝人の身体をズルズルとパソコンへと引っ張る。逃げようともがくが、たいした抵抗になっていない。そうしている間にもパソコンは目の前に迫っていた。
 恐怖による涙で視界が歪む中、白い手の中に異物が現れる。それは帝人の頬に触れると、「捕まえた」と、あの喧嘩人形の声で呟いた。


「…ッ!」
 ハッと目を覚ますと、帝人は自分の布団の中で眠っていた。時計を見れば、朝の6時だった。ちらと警戒しながらパソコンを見たが、何も変わらないままだった。
「…変な夢」
 くしゃりと髪を掻き、台所で顔を洗う。炊飯器を開けると、そこは空だった。帝人はあれ?と首を傾げる。
――…おかしいな、昨日はちゃんと残しておいたはずなんだけど。
 小型冷蔵庫を開ければ、中には肉やら野菜やら、食材がぎっしりと詰まっていた。
「なんで…」
 立ち上がり、玄関の扉を開くと、そこには外の景色が広がっていた。吐息をつきながらも外に出ようとしたが、何故か部屋へと戻っていた。帝人は茫然としながら外へと手を伸ばす。それはまるで映像のように変わることはなく、帝人の伸ばした腕がこちらへと途切れた状態で生えていた。
 腕を引き抜くと、今まで外の景色が広がっていたのが白に染まった。部屋も壁が取り払われ、見覚えのあるショッキングピンクと白のコントラストに変わる。
「ッこれはどういうことですが、デリ雄さん!」
「おっ、意外に気づくの早かったな」
「ふざけないでください!」
 初めて見た帝人の混乱した姿にデリ雄はクックッと笑う。帝人はそれが馬鹿にされたような気がし、眉間に皺を寄せた。
――あれは夢じゃなかったんだ!僕は確かに、あのパソコンに取り込まれた。
 それをやったのがデリ雄だろうが、どうやったら生の人間をパソコンの中に取り込んだのかはわからない。帝人は警戒心を丸出しに静雄を睨んだ。
「そう怒るなよ。そうだ、どうやって帝人をパソコンの中へ連れ込んだが教えてやろうか?」
「…」
 帝人が素直に頷くと、デリ雄はニヤと笑い、指を鳴らした。すると空間が裂き、帝人の部屋が映し出された。
「これは本物のお前の部屋だ。いつもこうやって帝人と話してたんだよ」
 帝人はデリ雄の声が聞こえないように固まっている。パソコンの前に、帝人が倒れているのだ。
「肉体なんかパソコンん中に入れれる訳ないだろ?だから、お前の精神をデジタル化したんだよ。あれはただの帝人の姿をした肉だ。ガリガリだけどな」
「そん、な…」
「精神が抜き取られたアレは植物人間みてえなもんかな。生きてるけど、精神であるお前が此処にいる限り、自分の意志で動くことはない」
「どうして…!」
 デリ雄の胸倉を掴むと、無数の手が帝人の身体を掴んだ。そして、デリ雄から身体を離させる。
「…ッ離せ!」
「此処は俺の支配領域だ。只のデータでしかないお前が俺に敵うと思ってんのか?」
 デリ雄は悪役顔で笑うと、帝人の頬を撫でる。
「…ずっとお前に触りたかった。帝人、お前がほしかった」
「え…?」
 デリ雄が帝人の服に触れると、帝人の服がさらさらと消えていった。帝人は突然全裸にされ、慌てて隠そうとするが、白い手に邪魔され出来なかった。
「ッやめてください!」
「…おい、動けないよう押さえてろ」
 無数の手が帝人の腕、足に絡まる。デリ雄が口づけようと帝人に顔を近づけると、帝人はデリ雄に頭突きをした。
 ざまあみろと言わんばかりに舌を出すと、デリ雄は無言で帝人の頭に手を翳す。バチッという音がすると、帝人は目の前が歪んだ。身体に力が入らない。
「ぁ…う…」
「ちょっとウイルス送っただけだ。死なねえよ、動けなくなるだけだ」
 デリ雄は力の抜けた帝人の唇を味わうと、肌を嘗める。びくびくと跳ねる帝人に気分をよくし、前を数度勢いよく扱いてやる。
 帝人は口では「ぃ、ゃ…」と呟いていたが、身体は快楽に忠実だ。ぐり、と鬼頭を抉るように爪を立てると、帝人は白い液体を吐き出した。それは地面に落ちると床の白色に混じり、染み込むように消えていった。
「ひっ…くぅ…」
「まだまだなんだから泣くなよ」
 後ろに一本、指を挿入する。力の抜け切ったナカをぐりぐりと回し、指を一本ずつ増やしていく。腸液の音にニヤニヤと笑い、帝人の顎を舐めた。
「ゴシュジンサマ、抵抗しなくていいのか?ああ、抵抗したくてもできないのか」
 帝人は焦点があっていないのか、デリ雄の後ろを眺めている。デリ雄は少しつまらなさそうに目を細めると、帝人のナカへと自身を一気に挿入した。力の抜け切ったそこは少し緩い。デリ雄は帝人の額に手を翳し、ス、と手を横に動かした。
「…ぁっ、ひぁっやめ…」
 先程まで白かった血色が元に戻り、帝人はデリ雄をきゅっと締め付ける。
「な、に」
「なんだよ。ウイルス消してやったんだから感謝しろ」
「でも…ッひああっ」
「いいから啼いてろ」
 ぐち、と結合部が粘着音が鳴る。無理矢理衝動を繰り返すデリ雄の背中に爪を立てると、デリ雄はそれでも愉快そうに笑う。
「いいな、それ。もっとお前の爪痕つけろよ」
 デリ雄はシャツを緩め、肩を露出させると再び帝人を貫く。帝人の爪がシャツ越しではなく肌に食い込む感覚に妙な満足感を覚える。
「…はっ、だす」
「…ッんぅうっ」
 出す瞬間に口を塞いでやれば、帝人はくぐもった声を出し、帝人もびくびくと身体を跳ねさせながら達した。虚ろな目をする帝人に、デリ雄は満足そうに息を吐く。
 段々と意識の遠退く帝人の汗ばんだ額に触れ、小さくくちづけた。
「…じゃあな、帝人」


「…ッ!」
 ガバッと飛び起きると、帝人はパソコンの前にいた。急いで部屋の扉を開き、外へ出る。外はいつもの風景だった。何も変わらない、いつもの日常。
「…あれは、夢?」
 それにしても嫌な夢だと思いながら、パソコンに電源を入れる。が、つかないのでおかしいなと思い、コンセントを見ると抜けていた。
 それを刺すと、パソコンが何事もなかったように動き出す。デスクトップには、いつも通りにデリ雄がいた。
『…ん、どうした?今日は早いんだな』
「あ、いや…」
 デリ雄のいつも通りの態度に、逆に違和感を覚える。
『なんだ、腹でも壊したか?あんな食生活してるからだぞ。もっと食え』
「は、はい…」
 帝人はパソコン閉じ、やっぱり夢だったのかもしれないと溜息を吐く。
――…あんな夢見るなんて、僕は欲求不満なのかな…しかもデリ雄さんとだなんて…。
 軽く自己嫌悪に陥りながらも、あまりものが入っていない冷蔵庫からハムと卵を取り出した。

 その姿を見、口を緩めた者が一人。
『……もっと肉つけねえと、ヤりにくいからな』
 デリ雄は白い世界で、ぽつりと呟いた。


天使と悪魔パロ消してすみません
続きが納得いけなくて…

2011/4/3
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