デュラララ!! | ナノ
「そういえば、平和島静雄に恋人が出来た、という噂が最近流れてますねえ」
 依頼が入った粟楠会にて、去ろうと立ち上がったところで四木からそう持ち掛けられた。
 もしかして四木さんにはバレているんだろうか、と思いながらも表面上は興味のないように振る舞う。
「…らしいですね」
「気にはならないんですか?」
「はい。僕にはどうでもいいことですから」
 にこりと笑みを浮かべれば、四木はそうですか、と呟き、今度はからかうような表情を止め、真剣な目つきに変わる。
「そういえば、最近不穏な動きをしている組織をご存知ですか?」
「…はい、僕の情報網にたまにそれについて入ってきます」
「気をつけてくださいね。貴方の命を狙ってるという話も聞きますから」
「…善処します」
 帝人は膨大な情報が頭の中にある。情報屋なんてものは所詮、誰かの弱みを握っているのと同じだ。それを恐れて命を狙われたことは何度だってある。
 静雄との追いかけっこのせいで、そういった気配には敏感になった。そういう面に関しては静雄に礼を言うべきなのかもしれない。
 ビルから出たところでバーテン服を着た金髪の男に気がつく。
 帝人は柔らかな笑みを浮かべながらも呆れたような声を出す。
「なんですか、つけてきたんですか?全く」
「ちょっと気になってよ…」
 叱られた犬のようにへこたれる静雄に、思わず胸がキュンとなる。
「べ、別に怒ってませんからね?」
「そうか、よかった」
 下から覗き込むようにして言えば、静雄は安心したのか息を吐き、近くにあった帝人の身体を抱きしめる。
 こんな野外で抱きしめられて大人しくしてるわけにはいかない。静雄の腕を払い、ふと上を見上げれば、窓に四木の顔があるのが目に入り、頭を押さえた。
「帝人?」
「…いや、何でもない」
 再度見上げれば、四木は口元に笑みを浮かべながら窓際から離れていった。
――絶対、バレたよなあ。
 溜息を吐きながら首を傾げている静雄の背中を押す。待たせていたタクシーに静雄を押し込み、事務所までと告げた。
「お、俺も行っていいのか?」
「ああ、仕事でしたか?すみません、今からでも…」
「いや、休みだ!」
 静雄はそう言うと携帯で何かを打ち、送信した。おそらく、送信した相手は上司であるトムへだろう。
 返ってきた返事らしきメールに、静雄は吐息を吐くと微笑みながら帝人を見た。
「おやすみもらえたんですか?」
「ああ…い、いや、違う」
「嘘つかなくてもいいですよ。僕は別に咎めたりはしませんから」
 自分だって胸を張れるような仕事はしていない。
 一度ヘマをすれば信用は一気に落ちる。博打のようなものだ。それなら静雄の借金取りの方がちゃんとした仕事のように見える。
「せっかくですし何か作ります。何が食べたいですか?」
「え、あ、えと…」
「急ぎませんから、食べたいものが決まったら行ってください」
「…おう」
 静雄は控えめに頷くと、うむ、と考え出した。髪をガシガシ掻きむしりながら考える静雄に、帝人は苦笑しながらそれを見る。
――静雄さんは変に真面目だなあ…。まあ、それが静雄さんの良いところなんだろうけど。
 帝人の事務所に着いても考え続けている静雄の腕を引きながら歩く。
 セキュリティのため電子ロックで閉じられているフロントの扉を開こうとすると、丁度帰ろうとしていた杏里が扉越しに帝人を固まった状態で見つめている。
「あ…杏里さん」
「…あ、すみません」
 杏里が一歩近づくと、内側から扉が横にガーッと開く。そのまま杏里は小走りで去っていた。
「…後で連絡しないと」
「誰だ今の」
「僕の助手の園原杏里さん。前、静雄さんと僕の事務所で争ったじゃないですか」
「…ああ、あの眼鏡の女か」
 静雄は興味なさ気に呟き、扉が閉まる前に中へ入る。帝人の事務所はマンションの最上階にあるので、エレベーターを呼ぶボタンを押した。
「で、食べたいモノは決まりました?」
「……オムライス」
「地味に難易度が高いものを…」
「…わりぃ」
「いや、別にいいですけど」
 卵の残量はどれほどだったかと考え、招かれてくるのは初めてである帝人の自宅にどきどきしている静雄をちらりと見上げる。
 帝人はばれないようにくすりと笑い、今日の朝つけたばかりの鍵を開ける。
 部屋に入るとすぐに静雄に唇を塞がれ、思わず思考を停止させた。
「……は、ちょっ静雄さ」
「あと一回だけ」
「ン、…ふ」
 鼻にかかったような甘い声が零れる。静雄は満足そうに力の抜け切った帝人の身体を抱きしめた。
「苦しい…ですよ…」
「いやか?」
「…静雄さんって狡いですよね」
 くすりと笑った静雄に、確信犯かと舌打ちする。
「静雄さん」
「ん?」
「脚の力が抜けてしまったので、抱っこでソファまで運んでください」
「お、おお…」
「言っときますけど、変なことしたら絶交ですから」
「……おう」
 少し残念そうな表情をしている静雄に、こちらが残念な気分になる。
――普通にしてれば格好良いくせに。
 ひょい、と横抱きにされたので静雄の首に腕を回すと、静雄の耳が赤くなるのが見えた。
――…静雄さんって、初なのかな。でも初な人が普通強姦なんかしないよね…。
 ふうっと耳に息を吹き掛けてやれば、異常なまでに跳ねる肩。それが面白くて「どうしたんですか?」と意地悪く言ってやれば、静雄はじろりと帝人を睨み付ける。
「……お前、犯すぞ」
「へえ、僕と絶交したいんですね」
 勿論そんなはずはないというのはわかっている。わかっていて言っているのだ。
 静雄はぐっと言葉を詰めると、帝人の身体をソファへと投げた。静雄は帝人の上に覆い被さるように乗り掛かる。
「ちょっ」
「舐めるだけだ」
「ひゃあっ」
 首筋を舐められるとどうしようもなく身体がびくんと跳ねる。静雄は口元を緩めると、そのまま帝人の下半身に手を伸ばす。
 さすがのそれには帝人も反発した。
「変なことしたら絶交って言ったじゃないですかっ」
「お前が何を言おうと俺はお前に付き纏うからな」
「ストーカーですよッ、それ!」
「ああ、帝人の傍にいられるのならそれで構わない」
 真顔で言う静雄に、(この人はどこかおかしい)と帝人は考える。だが帝人自身、それを嬉しいと思っている自分が一番おかしいと思った。
 いつの間にか帝人を真っ直ぐに見つめていた静雄の顔が消えている。
 以前にも体験したことのある下半身に感じる熱い息に、帝人は慌てて身体を起こす。
「なにやってんですかッ」
「言ったろ、舐めるだけだって」
「舐めるってそういう、ひゃううっ」
 帝人のそれが生暖かい口内に包まれる。
 口とは裏腹に身体は忠実だ。すぐにそれは硬度を持つ。
 たまに甘噛みをしてくるのが直結で快感に繋がって堪らない。
 帝人は後ろに反りながらいやいやと首を横に振り、ソファに髪を擦り付ける。
 ちゅっと尖端を吸われ、「ふああっ」とあえかな悲鳴を零す。
 プルプルと身体を震わせながら快感に堪えていると、今度は勢いよくそこが吸われる。
 身体から力が抜け、目の前が真っ白になるのを感じると、熱を静雄の口内に吐き出していた。
 ゴクリ、と飲み込む音が聞こえ、帝人はかあっと顔を赤に染めた。
「また飲んだ…ッ」
「ん?」
「やめてください、そういうの…!恥ずかしいですッ」
「帝人のはなんでも欲しい」
「…じゃあ僕の童貞は」
「いらん」
「…嘘つき」
 帝人の呟きに苦笑しつつ、静雄は帝人の上から退く。その際、屹立した静雄の下半身が見える。帝人がそっとそれに触れると、静雄は顔を赤く染める。
「…僕の舐めて興奮しちゃったんですね。どれだけ僕のこと好きなんですか」
「死ぬほど好きだ」
「僕が死んでくださいって言ったら死んでくれますか?」
「ああ、お前を殺した後で俺も死ぬ」
「……もう言いませんから、絶対やめてくださいね」
 額に小さく口づけると、静雄は大型犬のようにすりすりと擦り寄ってきた。さらさらの髪を撫でると本当に大型犬を手懐けたような気分になる。
「……」
 本人に自覚はないようだが、静雄が帝人に身体を擦り寄せると帝人の脚に静雄の膨張したそれが時たま当たる。
「………あ、の」
「ん?」
 顔を赤くしながら服の袖を引いた帝人に、静雄は首を傾げながら耳元で囁く。
「その、僕…が、…僕が、舐めます!」
 帝人が(うああ言っちゃったよ恥ずかしい!)と羞恥に耳まで赤く染めている間、静雄は言われた言葉をよく理解出来なかったのか、目を丸くして固まっている。その表情のまま「いいのか?」とどこか目を輝かせながら呟く。
 前を寛げさせると先程より硬度を増したそれが現れる。
 ちらりと見上げれば静雄は真っ赤になり、何かに堪えるような表情をしている。
 静雄さんも舐められるんだから、とそっと舌を這わせてみたがどうしようもなく苦かった。
 意を決してそれをできるだけ口に含む。規格外なそれは帝人の口内に収まりきることはなかった。
 静雄の様子を確認しようと上目遣いになれば、静雄はより顔を赤くしてそれとともに自身も膨張する。
――成る程、静雄さんは銜えながら見上げたら興奮するのか。
 見上げながら顔を動かしてみると、静雄は「頼むからこっち見んな…」と消え入りそうな声を零す。
「ン…気持ちいいですか…?」
「ちょっ、喋んな…ッ」
 静雄のそれから口を離し、そう尋ねれば静雄は詰まった声を出し、帝人の顔に熱を吐き出した。帝人はよく理解出来ず、茫然と顔に滴る生暖かい白濁を指で拭う。
「わ…わりぃ、つかあんなところで喋んな!」
 自分の服の袖で帝人の顔に付着した白濁を拭き取る。
「…あー、顔洗ってこい。あと服借りれるか?これ、洗わないと着られねえ」
「えと、あっちのクローゼットに何枚か予備のシャツが」
「ん、借りる」
 ベストを脱ぎ捨てる静雄の筋肉質な肌に目を向けながら足は脱衣所へと向かう。
 ぱしゃぱしゃと顔を洗い、前髪に付着していた白濁を水で流す。
 部屋に戻れば静雄は帝人のシャツを着ていたが、短くて少し脇腹が見えていた。
「大丈夫か?」
「はい、まあ」
「俺が飯作るから、寝てろ」
「え、大丈夫ですよ」
「いいから寝てろ」
 首を縦に振らない帝人に静雄はくしゃりと髪を掻くと、帝人の身体を抱き上げソファに座らせる。
「キッチンにあるもの、適当に借りるぞ」
 声は疑問形だったが帝人の返答を待つ前に背を向けて行ってしまった。
 勝手なイメージだが、静雄はなんだか料理下手な気がしてならない。あの怪力でフライパンが曲がってしまいませんように、と両手を合わせる。
 冷蔵庫が開く音が聞こえ、帝人は諦めてテレビを付けるとやっていた報道ニュースを興味なさげに見た。


2011/3/3
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