デュラララ!! | ナノ
 ガタッという音がし、帝人は目を覚ました。
 まさか静雄にばれたのかと冷や汗をかいたが、静雄はまだ隣で眠っている。
 じゃあ何の音だと音のした方へ目を向ければ、帝人を起こしにきたであろう杏里の姿があって、帝人は本気で死にたくなる。
 杏里は少し動きを停止させた後、いつものような柔らかい笑みを浮かべる。
「私大丈夫です、偏見とか持ってませんから」
 杏里は完全に勘違いをしているようで、帝人の頭はパニック状態だ。静雄もその声に起きたのか、目を擦っている。
 帝人は思わず「この人に強姦されたんだ!」と叫んだ。
 聞き入れて貰えないかと思ったが、杏里は何処からか刀を取り出し、静雄に切り掛かる。「逃げてください」という杏里の言葉に、有り難く服を着て逃げ出した。
 その際、ふと目に入った静雄のサングラスを拝借した。
 そしてそのまま部屋を飛び出て携帯を取り出す。タクシー会社に連絡し、家の前に一台寄越すように伝えた。

――…ああ、誰か。セルティさんか新羅…、いやもう誰でもいいから僕の悩みを聞いてくれ!
 帝人は身体をフラフラと揺らせながら池袋の街を歩く。
 夏だというのにコートのフードを深くまで被り、サングラスをかけて歩く様は異様だろう。
 先程起こった出来事について相談にのって貰おうと新羅のマンションへと向かっていたのだが、すぐ隣を横切っていった自販機に、帝人は脚を止め、ゆっくりと振り返る。
「もう来ちゃったんですか…」
 珍しく息を荒げている静雄に、帝人は深い溜息を吐く。
「当たり前だ!サングラスを返せ」
「ああ、これのことですか。こんなもの付けてない方が格好いいんじゃないですか?強姦魔さん」
「……そうか?」
 頬をほんのり紅く染めた男に、帝人は激しい怒りが心の底から沸いて来る。
「何頬染めてるんですか、気持ち悪い。もっと突っ込むところがあるでしょう?!」
「…強姦魔?」
「そう!それです」
「合意の上でだろ」
「何記憶改竄してんですか。明らかに無理矢理だったでしょう!」
 首を傾げる静雄に、帝人にとっては嫌悪と殺意しか沸き上がって来なかった。
――だから僕はこの人が嫌いなんだ!嫌い嫌い大嫌い!
「…ていうかどうして夜這いなんかしたんですか」
「昨日、帝人にキスしてから新羅に相談したら―…、

『帝人にキスしちまった…、どうしよう』
『じゃあ夜這いするといいよ』

って」
――…あの野郎ぶっ飛ばす!
 元凶とも呼べる人物に相談をしようとしていたのか、と頭を押さえる。
 腰の激しい痛みと身体の気怠さ、そして頭の痛みに帝人は思わず尻餅をついた。静雄が近づいてくる足音に、帝人はハッと立ち上がる。
 サングラスを静雄に向けて投げ、静雄がそれと受け取ろうと構えた隙を狙って走り出す。
 身体の至る所が悲鳴を上げたが、そんなこと言っている暇はない。
――…セルティさん、セルティさんに相談しよう!そして新羅を叱ってもらおう!
 そう思い走っていたが、顔のギリギリのところに自販機が通っていく。帝人は立ち止まらずに走れば、後ろから自分を呼ぶ声が聞こえてくる。
――ヤバイヤバイ、追いつかれる!
 携帯を取り出し、セルティにかけ「助けてください!」とだけ言って切った。どうせ現在地を伝えても逃げているうちに場所が変わる。それなら騒音で見つけてもらう方が速い。
 セルティが来る前に静雄に捕まることがないよう必死に走った。
 だが、腕を掴まれ壁に投げ付けられた。痛みに蹲る前に身体が浮く。目を開ければ笑みを浮かべた静雄がいて、帝人は舌打ちをする。
「また逃げやがって」
「僕は貴方が大嫌いですから」
「俺は好きだけどな」
「ああ、それは残念でしたね」
 今度は戸惑うことなくナイフで刺そうとしたが、指で受け止められ、横に折られる。
 帝人は呆れ顔で「昨日今日だけで何本折るつもりですか」と呟いた。
 その返事は返ってくることはなく、代わりに一方的な深い口づけが始まった。気持ち悪いという思考に支配されながら、耳に入った都会では普通聞くことのない馬の嘶き声に、帝人は静雄が唇を離した瞬間、静雄にとってのみ効果を発する言葉の爆弾を投げた。
「そういえば、貴方の携帯に僕の名前のフォルダがありましたよね」
「…なんで知ってんだ」
「さあ?」
 静雄は怪訝そうな表情をしながら携帯を取り出し、操作する。すればぴたりと動きを止め、顔を伏せる。
「知ってます?ああいうのを盗撮っていうんですよ。まあ僕が言えた義理じゃありませんけど」
「…せっかく」
「はい?」
「せっかく高校の時から貯め続けてたのに…ッ!」
 殺意に身体を震わせる静雄に、帝人は隙を狙って静雄の包囲から抜け出す。静雄は後ろから自分の名を叫びながら追い掛けてくるのは計算内だ。
 馬の嘶き声が近くなる。
 セルティが自分の前に現れた瞬間、帝人は何を言わずにシューターに乗り込んだ。
「セルティさんお願いします!」と言えば、静雄の殺気の高さにセルティも身を震わせながらシューターを発進させた。それでも静雄は追い掛けてきたが、暫くすれば静雄にも体力の限界が近づき、離れていった。
「…はぁ、ありがとうございます」
『どうしたんだ?静雄のやつ、やけに荒れていたが』
「自業自得です!それより聞いてほしいことが―…」
新羅のマンションへ向かう途中で昨晩あったこと、そしてその元凶の人物について包み隠しながらもすべてセルティに話した。
セルティはただ『わかった、任せろ』とだけPDAに打ち込み、セルティを出迎えた新羅に影でお仕置きを始めた。


2011/2/27
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