デュラララ!! | ナノ
「じゃあ行ってくるな」
『はい、いってらっしゃい』
 静雄は少し名残惜し気にパソコンを切る。仕事だからしかたない。
 静雄が仕事に出かけるとともに学人は静雄のパソコンから抜け出す。
 向かう先は帝人のパソコンだ。
 学人や津軽は一度行ったことのあるパソコンになら好きに行き来できる。
 電子空間を飛んでいると、段々明るいところがみえてくる。そこに飛び込めば、一つの部屋につく。そして『MIKADO』と書かれた扉にノックする。
 すぐに扉が開き、中から津軽が出て来て学人を抱きしめる。
『学人…』
『つがるさん、くるしいです』
 そう言うが、学人は笑っている。津軽とこうしていれて嬉しいのだ。
 学人は静雄の知らない間にこうやってよくこっそりと津軽の元を訪ねている。
 津軽に覆いかぶされながら、津軽のソフト空間へ入る。
「あれ、学人着たの」
『こんにちは、マスター!』
「マスターじゃなくて帝人でしょ。まあ無理に直せとは言わないけど」
 帝人はそう言いながらキーボードに文字を打ち込む。
『なにをやってるんですか?』
「ん?新しいソフトを作っているんだ。次はウイルス対策ソフトをね。誰をビジュアルにするかとかは決めてないんだけど。正臣辺りはどうかな」
『まさおみ?』
「ああ、学人は会ったことないんだっけ。また紹介するよ。…で、津軽はいつまでいつまで学人の上に乗ってるの?」
『学人が帰るまで』
 津軽の科白に帝人が苦笑をすると、学人が不意に顔を上げる。
 何処か空を見つめている学人に、津軽はその顔を覗き込む。
『学人?』
『…しずおさんがかえってきたみたい』
「え?今仕事中のはずだし、忘れ物でもしたのかな」
『ぼく、かえらなきゃ…』
 きゅっと津軽の腕に力が篭る。『またくるから』という科白に、渋々といった様子で回していた腕を離す。
『バイバイ』と手を振れば、津軽は少しむすっとしたがら手を振った。



「…うわ、シズちゃんがパソコン買ったって本当なんだ」
 静雄のパソコンを起動させたのは静雄と犬猿の仲と呼ばれている折原臨也。
 許可を貰っているなんてとんでもない。勝手に不法侵入をしているのだ。
「…うわ、ファイルとか全然ないし。インターネットも使ってないみたいだ。なんでパソコンなんか買ったんだろ、あいつ」
 弱みでも握ってやろうとしていたのだが、こうなんにもないと気が抜ける。
 だが、臨也は一つ見慣れないソフトを見つける。
「…『GAKUTO』ってなんだ?」
 ダブルクリックをすると、そこには帝人と同じ顔をした小人が画面の中に現れる。
 臨也は素直に「え、なにこれ」という感想をした。
『あれ?どちらさまですか?』
「うわっ、すごい。帝人君の声だ。喋るんだ、へえ。これ、帝人君が作ったのかな」
『マスターのしりあいですか?しずおさんは?』
 可愛いなあ、と繰り返す臨也に、学人は慌てる。
――誰だろう、この人。静雄さんはいないのかな。
 キョロキョロと見回すが、静雄の姿が見えない。
「君名前は?」
『がくと、です…』
「へえ、学人君。俺は折原臨也。『臨也さん』って呼んでね」
『いざ…ガガッ 不適切な言葉が出たのでエラーが発生しました』
「え、なに?どういうこと?」
『?ぼくいまなにかありました?』
 首を傾げる学人に、臨也は口元だけで笑う。目は全く笑っていない。
 臨也はマウスを滑らせると、メニューを出し、使い方と書かれたところを押す。
 ちなみに静雄はこの場所を知らない。メニューの存在も知らないのだ。
「…へえ、服とか着替えさせれるんだ」
 書かれた通りの操作を行うと、様々な服のイラストが描かれた表が現れる。
 臨也は目についた服をクリックする。
『??』
「やっぱり可愛い!でもこのサングラスは似合わないね」
 学人のサングラスが外され、緑を基調とされていた視界がカラフルなものになる。
 学人が下を見れば、服装がフリフリとしたフリルがついたワンピースになっている。
『…ぁ、あう』
 学人は顔を真っ赤にさせると、電子空間へと逃げて行く。
 臨也はあ、としたが、連れ戻す手はない。
「…ま、イイモノ見れたからいいか」



 学人はドンドンと帝人のパソコンに繋がる扉を叩く。津軽が眉間に皺を寄せながら扉を開けたが、学人だということに気づいた途端、いつも通りに抱き着いた。
 そして、いつもと違う服装をじっと見つめる。
「津軽ー?また学人きたの?」
『ま、マスター!』
 学人が帝人の視界に入ると、帝人は噴き出した。
 この服は静雄が見たら顔を赤くするだろうなと想像してインプットさせとおいただけで、まさか本当に着せるとは思っていなかったのだ。
「静雄さんがそれ着せたの…?」
『ちが…ッいざ…ガガッ 不適切な言葉が出たのでエラーが発生しました』
「ああ、臨也さんか…」
 静雄さんも家のセキュリティに気をつけてもらわないと、と呟き、完成したばかりのソフトに新しい文字列を組み込んでいく。
「大丈夫、臨也さんには僕から復讐しておくから」
 臨也のパソコンに一通のメールを送る。


 家に着いたばかりの臨也は、帰ってすぐにパソコンのメールを確認する。そこには『帝人きゅん』と書かれた名前があることに目を見開き、慌ててそれをクリックする。
『これ、僕が作ったソフトなんですけど、よかったら感想教えてください(>_<)』
――これ、もしかして。
 アドレスをクリックし、ソフトを保存する。
『SAIKE』とかかれたそれを開くと、白いコートを着た臨也と同じ顔をした小人が現れる。
「これ、シズちゃんのパソコンにあったやつの俺バージョンだ…」
 臨也が目を輝かせていると、サイケの服が黒に変わる。
「え?」
 パソコンがエラーを幾つも訴える。
 理由はサイケにある。サイケは元々ウイルス対策ソフトのはずなのだが、それに加えて臨也のパソコンでのみウイルスをばらまくという設定に書き換えた。
 正に天使と悪魔が一体になっている。
「帝人君のやつ…ッ」
 どれだけウイルスを退治しても溢れてくる。
 臨也はしかたがなく、パソコンを初期化した。
 これで消えただろうとため息を吐き、パソコンを再起動させたのだが、ファイルはすっからかんなのに、『SAIKE』と書かれたソフトは残ったままだった。
 初期化しても尚残るそれに、臨也は帝人の才能を称賛するを得ない。
 恐る恐るそのソフトを再度開く。
『あのね、俺はサイケっていうんだよ!帝人君がね、ウイルスばらまいてきなさいって言ってたの!だから俺頑張ったよ!ね、凄い?』
「……はあ」
 頭の足りない話し方をする自分と同じ顔をしたソフトに、臨也は深い溜息を吐く。
 サイケのために、臨也は一つのパソコンを使えなくされた。
 パソコン自体を捨てようとしたのだが、帝人から『僕の作ったサイケ君、どうですか?臨也さんのことを考えながら作ったんです。大事にしてあげてくださいね』というメール届がき、置かざるを得なかった。

家に帰った静雄が、学人が女の子のような服を着ていたということに驚くのは、言うまでもない。


2010/10/9
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