デュラララ!! | ナノ
「むー…」

静雄が風呂から上がり、髪をタオルでガシガシと拭いていると、帝人が小さな文庫書とにらめっこをしていた。
カバーされていて何の本かはわからないが、幼児である帝人が読むような本ではないことは確かだ。
新羅にでも貰ったのだろうかと俯せになっている帝人の後ろから本を覗き込む。

「何読んでんだ?」
「あ、お父さん読んでくれませんか?僕、漢字読めなくて…」

ちらりと見ただけでも難しい漢字が見える。
どれどれ、と帝人から本を受け取り、内容を軽く目に通す。
そして、静雄は内容を読んだ瞬間、その本を壁へと投げ付けた。

「わっ、何するんですか?!」
「あの本誰に貰った!?」
「…えと、内緒って言われました…」

言いづらそうにしている様と、帝人にこんなものを渡す人物は一人しかいないと静雄の中である特定の人物を思い浮かべる。
帝人が持っていた小説は、所謂官能小説というものだ。
年頃の男子ならともかく、いくらなんでも幼児が読むものではない。
帝人もよくわかっていないらしく、一人怒っている静雄の気を鎮めようと必死だ。

「お…お父さん、落ち着いて…」
「臨也だろ、臨也だよな、つーか臨也しかいねーよな!」
「…ぅ」

静雄の気迫に押され、帝人はこくりと首を縦に振る。
静雄はそれを確認すると、壁に投げ付けた本を拾い、シャツを着る。
勿論、臨也に文句を言いに、いや、半殺しにするために。
「殺す」を何度も呟き始めた義父に、帝人はこれはやばいと幼いながらに察する。
部屋を出て行こうとする静雄の腕をぐいっと引っ張る。

「お父さんっ、何処行くんですかッ」
「あのノミ蟲野郎のところに決まってるだろ、帝人に近づいたらどんなめに合うか教えてやらねーとなあ…」

確実に目が据わっている静雄に、帝人は玄関の扉を塞ぐように立つ。
勿論すぐに退けようと思えば退かせれるのだが、静雄はそれをしない。
いつでも静雄は帝人の話を聞いてくれるのだ。

「帝人、たぶん帰りは遅くなるから先に寝てろ」
「…ッ嫌です」

意志の強い瞳で見貫かれ、静雄は驚きを覚える。
何故なら、帝人が静雄に逆らったのは初めてだった。
段々臨也のことも頭の中から消えていく。

「帝人…?」
「…僕、一人で寝るの嫌なんです。寂しいんです、また独りぼっちになっちゃった気がして…」

ぽろぽろと涙を双眸から流す帝人に、静雄の脳内から臨也のことはすっ飛んで行った。
ただ、目の前の可愛い大切な子供をどうやって泣き止ませるか、そればかりを頭の中で思案する。
しゃがみ込み両腕を広げれば、帝人の小さな身体が静雄の硬い胸板へと飛び込む。
後頭部をぽんぽんと撫でれば、ぐりぐりと顔を押し当ててきた。
帝人を抱きしめたまま立ち上がり、寝室へと向かう。

「もう寝るか」
「…はい」

こくん、と小さな動作をとると、静雄の首へ短い腕を回す。
まるで存在を確かめるかのようなその行為に、静雄は「帝人」と自分を抱きしめる小さな温もりの名を囁いた。


2010/6/2
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