RECP | ナノ

「うわーっ、また負けた」
「ハハッ、あともうちょっとでやばかったぜ」

山本の家にはゲームの類がないらしく、ゲーセンでしかゲームをやったことがないという山本を家に招待し、格ゲーをやっている。
初めはオレの連勝だったのだが、山本も次第にコツを覚え、形勢が逆転しだした。
ここ数戦、山本に負け続きだ。

「ゲームってのも面白いんだなー」
「もっと面白いゲームがあるよ」
「そうそう、他にも面白い……ってヒバリさん?!」

いつの間にか背後にいたヒバリさんは、ベッドに腰掛けていた。
そしてオレによくわからない真っ白なゲームソフトを渡す。
ヒバリさんが無言の圧力をかけてくるので、わからないままにゲーム機にそれを入れると、軽快なミュージックとともに、並盛ファンタジーという言葉が出て来た。

「…何ですか、コレ……」
「僕が企画開発したゲームだよ。山本に感想を聞こうと思ってね」

コントローラーを山本に手渡すと、ヒバリさんがオレと山本の間に割って入ってきたのでベッドの上に腰掛けた。
山本がスタートを押すと、『ナマエはヤマモトでいいですか?』という電子文字が現れた。

「ん?何も入れてねーのにオレの名前が出たぜ?」
「当然だよ、君用のゲームだからね」
「へへっ、ありがとな」
「僕は君の恋人だからね」
「ヒバリ…」

山本はぽぉーっと頬を染めながらヒバリさんの顔を見つめる。
いやいや、ラブラブするなら山本の家にゲーム機を持ち込んだ方がよかったんじゃないの?!
でもそんなこと、ヒバリさんが怖くて小心者のオレには言える由もなかった。
暗めな音楽とともにオープニングが始まった。
どうやらRPGらしい。
草壁さんの顔をした王様がヤマモトに魔王を倒すように告げた。
山本はこういう系のゲームをするのは初めてらしく、うきうきしている。
(その隣でヒバリさんがやたらとニヤニヤしてるんだけど…)

「これ、まずどこに行けばいいんだ?」
「仲間を集めないとね。まずは城下街に出てみなよ」
「仲間……おっ、ヒバリ発見!」
『何、君。……なに、僕に仲間になってほしいの?なら、僕を倒してみなよ』

早速戦闘になった?!
しかも山本はやり始めたばっかりだし、武器は素手で服装も只の服だ。

『魔王ヒバリがあらわれた!』

って魔王でた−−−−?!
ここで魔王が登場すんの?!
じゃあヤマモトはこれから何しに行くんだよ!?

「わわっ!ヒバリ、これどうすればいいんだ?」
「コマンドを選ぶんだ」
「あ、これか」

『攻撃 防御 色仕掛け アイテム 逃げる』

色仕掛けって何。
さすがの山本も、ヒバリ…と声を掛けた。

「こういうイベント系って確か逃げるってやつ使えねーんだよな?」
「そうだね、まあ頑張りなよ」

そうだよね、山本がそういうのに突っ込むわけないよね…。
ハハハ…と渇いた笑みを浮かべると、勇者ヤマモトが魔王ヒバリによってダメージを喰らっていた。
HPがあと僅かしか残っていない。
こちらも応戦するが、僅かなダメージしか与えられない。

「だめだ、このヒバリ強すぎるぜ」
「(そりゃ、魔王だからね…)」
「そういうときはこの『色仕掛け』ってのを使えばいいんだよ。人型モンスターによく効く」
「(しかもヒバリさん自分でモンスターって認めちゃったよ!!)」

勇者ヤマモトが実際に『色仕掛け』というコマンドを選択すると、画面一杯にモザイクが掛かった。

「…?なんだ、コレ」
「ピンクな映像を隠すためだよ。本当はモザイク無しだったんだけど、草壁達に猛反対を受けてね」
「(一体何があったんだろう…)」

モザイクが消え終わる頃には魔王ヒバリのHPがみるみるうちに下がっていき、鼻血をダラダラと流していた。
(だから何があったんだ?!)

『フッ、負けたよ…』
「(うわなんか無駄にムービーに入った…)」
『今日から僕は君だけのために生きよう』
「?これって魔王退治の仲間になってくれたってことか?」
「(魔王退治って勇者ヤマモトが話してる相手が魔王じゃん)」
「ああ、それに目的が魔王退治から違う目的に変わるんだよ」
『一緒にこの国を滅ぼして二人で新しい世界を作って行こ…ブチッ』

ぷつん、という音と共に画面が消える。
よく見ると、本体から煙が上がっていた。

「やはり規格外のゲームは無理があったか…」
「無理ってそれ壊れてんじゃねーのか?ツナ、わりぃ。壊しちまったみてぇだ」
「いや、うん…気にしないで……」
なんでヒバリさんに睨まれなくちゃならないんだ!
山本がオレの方を振り返った途端、ヒバリさんからの鋭い視線が浴びせられた。
山本は全然悪くない、寧ろ謝らなくちゃいけないのはヒバリさんのはずだ。
だが、そんなことを言えば確実に瞬殺だろう。

「じゃあ山本、次のゲームを…」
「もう自分家でやってくれ!」

感情の儘に叫んでしまい、しまったと思った時には既に時遅し。
金属の刃にて意識は一瞬で飛ばされた。

2010.1.23
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