RECP | ナノ


今日は12月31日。
今年最後の日だ。親父は近所の付き合いがあるらしいので、オレはツナと獄寺の3人で年を越すことにした。
ほんとはヒバリと過ごしたかったのだけど、ヒバリは初詣客が暴動を起こさないように神社に警備に行くらしいので、遠慮することにした。
寂しくない、と言ったら嘘になる。
だけど、オレの勝手な我が儘でヒバリを困らせたくないし、オレには親友がいる。
それで十分じゃないか。
3人で火燵に足を突っ込みながらテレビを見る。
アナウンサーが今、11時になったと告げた。

「あと一時間で今年も最後かー」
「今年も来年もそしてこれからも10代目とともにオレは歩みます!」
「ハハッ、獄寺はツナのこと好きなのな」
「野球馬鹿!オレは10代目のことを好きなんて簡単なものじゃねえ!オレは10代目をこの世の誰よりも尊敬しているんだ!!」
「はは・・・」

力説する獄寺にツナは苦笑を浮かべた。
ヒバリは今頃、見回りを頑張ってるんだろうなー・・・。
火燵の暖かさにぼんやりしながらそんなことを考えた。
すると、ポケットの中で携帯が振動するのを感じた。
まさか、と思って携帯を開くと、そこには一通のメール。
ヒバリ?いや、仕事で忙しいはずだし、ヒバリのわけない。
そう思うが、期待を抱くのをやめられない。

ピッ

「・・・・・・」
「どうしたの?」
「・・・いや、親父からメール」

うっすらと期待を抱いていた分、落胆は大きい。
もうそんなに子供じゃないんだから、わざわざ火には気をつけろとかそんなんわかってるよ!
出そうになった溜息を飲み込んで、携帯をポケットに突っ込もうとすると、再度携帯が震え出した。
またかよ・・・と携帯を開くと、そこには雲雀恭弥という文字。

「ぅわっ!!」
「山本?!どうしたの!?」
「いや、なんにもない・・・」
「野球馬鹿!10代目を驚かすんじゃねえ!!」
「わりぃわりぃ」

うとうととしていたツナは、オレの声で目を醒ましてしまったらしく、獄寺はそれを咎めたが、苦笑しながら謝ると、「ったく、これだから野球馬鹿は・・・」とブツブツと文句を言われた。
何故かドキドキしながらメールを開くと、そこには絵文字なんてかわいいものは一切無しのヒバリからの文。
客が群れていてうっとおしいとか寒いとか文句がつらつらと綴られていた。
まさか、愚痴をこぼすためにオレにメールしたんじゃないよな?と、ヒバリにしては無駄に長い文を読み流していくと、最後までたどり着いた。

『会いたい』

「・・・ッッ」
「山本、本当に大丈夫?顔が真っ赤だよ!」
「ちょっ、ちょっと走り込みしてくる!!」
「山本!?」

ツナと獄寺には申し訳ないが、オレはヒバリに会いたい。
赤くなってしまった顔を冷ますために、コートを羽織らずに外へ出たが、それが今のオレには心地がよかった。
息が上がりながらも神社へとたどり着いた。
キョロキョロと黒い影を探すが、一行に見つからない。
携帯を取り出し連絡してみようかと電話帳を開き、ハ行まで操作したところで、肩をぽんっと叩かれた。

「!ヒ・・・」

ヒバリ、と言おうとして口を閉じた。

「おっす、山本!なんだよ、オマエ一人で初詣かー?」

振り返ると、そこには野球部仲間が数人いて、げらげらと笑っていた。
なんだ、ヒバリじゃないのか。

「あのさ、人を探してんだけど・・・」
「なんだ、逸れたのか?じゃあどうせだし、一緒にカウントダウンしようぜ!あと10分くらいだし」
「えと、その・・・」

ヒバリのことをあんまり人に言いたくないし、どうしよう。
一歩後ろへ下がると、人にぶつかった。

「すみませ「何やってるの」
「ヒバリさん?!」
「へ・・・?」

後ろを振り向くと、確かにヒバリがいた。
少し機嫌が悪いのか、眉間に皺を寄せている。

「行くよ、山本」
「え、ヒバリ?」

ヒバリはオレの手首を掴むと、ぐいぐいと引っ張る。
苦笑いしながら野球部仲間に手を振ると、皆は口を開けてポカンとしていた。
人気のないところまで連れて来られると、そこで手を自由にされた。

「あの、ヒバリ・・・?」
「メールみた?」
「えと、・・・みた」

『会いたい』
その言葉を思い出して、冷えていた頬がまた熱くなる。

「じゃあ返事くらい返しなよ、もし来なかったら探すだけ損だろ」
「ごめん・・、でも早くヒバリに会いたかったし・・・」

ちら、とヒバリを見ると、そこにはオレだけに見せてくれる優しい笑顔。

「山本、武」
「ん?」

オレの名前なんてめったに呼ぶことなんてないのに、とヒバリを不思議に思って見つめると、花火が打ち上がるとともに唇を塞がれた。

「明けましておめでとう」
「あ、あけましておめでとう」

腕時計を見ると、針は長いのも短いのも12を指していた。

「今年もよろしくね」

こちらこそよろしくと返そうと開いた唇を再度塞がれ、幸福に浸りつつ目をゆっくりと閉じた。

「・・・僕はまだ見回りがあるけど、君はどうする?」
「んー、家に帰るな。ツナと獄寺のこと放ってきちまったんだ」
「ふーん、そんなに僕に会いたかったの?」
「うん、会いたかった」

茶化すようにして言うヒバリに、オレは正直に肯定すると、ヒバリは顔を赤らめた。

「え?ヒバ「そんな薄着だと風邪ひくよ」
「別に平気だけど・・・」
「何言ってんの?そういう奴に限って風邪ひくんだよ」

照れ隠しをするようにヒバリはコートをオレの顔に押し付け、そのまま翻して去って行った。

「ヒバリも照れることあんのなー・・・」

ツナと獄寺にそれぞれ一つずつお詫びとして赤色のりんご飴を買い、袋をぶらさげながら帰路に着く。
ヒバリの匂いがするコートを羽織ると、変態みたいだけどヒバリに包まれたような気がして胸がポカポカした。
鼻歌を歌いながら歩いていると、ポケットが震える。
その正体はやっぱり携帯で、開くと雲雀恭弥の文字があった。

「ヒバリ・・・?」

どうしたんだろ、とメールを開くと『お年玉』と書いてあった。
何が?と思いながらも添付されているデータを開いた。
画像、じゃない。
なんだこれ?映像じゃないようだったので、携帯に耳をあてると、ヒバリの透き通るような声がオレの耳に響いた。

『あいしてるよ、武』

ヒバリはオレの心臓を潰す気なのだろうか。




2009/12/27
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