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そういう所は見てるだけじゃわからなかった。






己が轟名前という存在を知ったのは雄英に入学をしたすぐの頃だ。

普通科在籍の特待生。
雄英の模範的生徒。
エンデヴァーの子供。
筆記試験主席。

その単語の羅列でそいつがそこらに居る生徒とは違うという事、周りからの評価の高さを嫌というほどに理解できた。
名前しか知らない同学年の雄英生に自分は既にいい印象はあまり持てないでいた。その感情の根源には恐らく焦燥感があった。
特別だと思っていた自分へと叩きつけられた様々な事柄に。苛立っていた。酷く苛立っていた。
そんな時だ。轟名前本人をこの目で見たのは。
学校内にある図書館のロビーにて、一学生が読みには分厚すぎる本をいくつも抱えて轟名前は歩いていた。
抱えられている本の数に周りの友人たちがほらほらと世話を焼いている。聞こえてくる彼女たちの会話から友人関係は良好のようで。入り口近くに立っていた己の横を通り過ぎていく。軽やかな笑い声に腹にズンと何かが落ちるような気がした。
一つでもいいから致命的な欠点があればいいとそう思っていた自分の望みは叶わなかった
ようで。腹の底で燻る黒いそれがじわじわと大きくなっていく。
「…クソが」
こぼれ出た音は誰にも聞かれる事無く霧散した。この場のすべての物が煩わしく思え踵を返す。
そこから生徒によって丁度よく扉が開かれたので無理矢理体をねじ込んで外へと逃げ出した。生徒にぶつかったような気がしたがそのまま足を止めず歩き続ける。
背後から聞こえる声も何もかもが煩わしかった。
人が奏でる喧噪が響いている校舎に戻る気もなく。ささやかな緑が息をする中庭へと辿り着く。はぁと詰まっていた呼吸を吐き出すと漸く体に入っていた力が徐々に抜けた。
握りこんでいた手を開くとよほど強く握りこんでいたのか爪痕が赤い縫い目のように並んでいた。
日に日に上がっていく太陽光の熱に首筋を焼いていく。
じわじわと香る土と植物のドロと青臭い匂いが鼻の中を潜り込んできた。
煩わしさが脳を焼き。燥感が体を黒く塗りつぶしていく。
額に滲む汗を拭い顔を上げたその先に一番見たくない人物が視界に入ってしまう。
廊下の窓際で仲睦まじそうに話すその姿は今の自分とは対照的に涼しげで。恐らく自分が抱えている感情なんてものはあいつは持ち合わせていないのではないだろうか。
生ぬるい風が木々を揺らす。
兄妹の声がそれに乗って流れてくる。
楽しそうな、こそばゆいそれは今の自分は耳障りでしかない。
「…クソが」
息を吐くように毒が流れ落ちた。


だから思ったのだ。



*

「……また入ってる」
靴箱に鎮座されていた白い紙。辺りを伺うが人の気配はない。
慎重に手を伸ばしてそれを摘まみあげ折りたたまれたそれをゆっくりと開くとそこに綴られるのは変わらない文字列だった。

【貴方を見ています】

そう告げる紙が置かれるようになって早三日。名前はどうしたらいいのかわかなかった。見ていると言うだけでそこに後ろにある送り主の感情がわからないのである。
そもそも名前は今までの学生生活においてこのような告白したされたなどの甘酸っぱい青春の場面に出くわしたことがなかった。
その背景には兄の焦凍が大きくかかわっており、さらに言うならば父親があのエンデヴァーという事が拍車をかけていたため。知らず知らずのうちに名前はモラトリアムの空間で生まれる青い春から自然と遠ざかっていたのだ。
それ故に名前は名も知らぬ人からの言の葉に対してどのような対応をすればよいのか彼女の知識には無い。ひとまずとその紙をカバンの内ポケットに滑らせて自身の教室に向かうことにした。
その道中もなんだか気持ちが落ち着かない。送り主は誰なんだろうか。皆目見当もつかなく悶々と思案していると曲がり角で現れた生徒にぶつかってしまった。
すいませんと謝罪を延べて顔を上げると。
そこには色素の薄いつんつんとした髪と鋭い釣り上がった赤い目を持った男子生徒がいた。名前は思わずゲッと顔をしかめてしまう。
なにせ名前にとってこの生徒。爆豪勝己が苦手な分類に入るのだ。爆豪の粗暴な性格と言葉が荒い所がそう思ってしまう理由の大半を占めているのだが。決定的に彼の事を苦手だと思ってしまったのは数か月前の入学当初までさかのぼる。
突如として爆豪が普通科のクラスにやって来たのだ。彼と接点のある生徒はいなく何故?と誰もが疑問に思っていると
「轟名前てのはどいつだ」
何故自分?と目を見開く名前にクラスメイトの視線一斉にこちらにあつまる。爆豪もそれを追って名前を見つけると。そのまま面を貸せと顎で廊下を指し示す。
これは行かないとまずいだろうと名前は意を決して立ち上がった。心操やクラスメイトがやめておいた方がいいと言うが拒否をした後の方がもっと面倒な事になると名前は多分大丈夫だからと教室をでた。
後ろの方から遅くなるようなら助けに行くからねと心配そうな友人たちに手を振り数メートル先を行く爆豪へついて行く。
無言のまま突き進む背中を見ながらただ黙々と校舎内を歩き辿り着いたの奥の方にある人通りの少ない階段の踊り場だった。
ゆったりとした速さで名前の方へ振り返った爆豪の開口一番の言葉は「てめぇが一年の特待生てのは本当か?」だった。
は?と思いつつも事実であるためそうだと首を縦に動かすと続いて聞こえたのは小さな舌打ちの音。
「ならなんでヒーロー科に来てねぇんだよ」
ぎろりと鋭い視線が名前を貫いてくる。名前は彼の質問に何だそんな事かと胸の内で安堵の息を吐いた。入学してからこのような質問はされてきた事は何度かあったからだ。好奇心から来るそれももうなれたものだと。
「特にヒーロー科に行きたいと思ってなかったから」
いつものようにありのままの事実を述べた。何時もならこの後の反応はそうなんだね、凄いねと好奇心を満たされた返答が来るので今回もそう思っていた。
だが、爆豪勝己の反応は全く違ったものであった。
「ふざけんじゃねぇぞ」
名前の腕を掴む爆豪は苦虫を噛み潰したように顔を歪めていて。何が彼の琴線に触れたのかわからず名前は困惑するしかなかった。
その後一通りの罵倒とも暴言ともとれる強い言葉の数々を言われすっかり名前は爆豪が苦手となってしまったのである。
幸いにも普通科とヒーロー科は接点もあまりないので関わる事は無いのだが、同じ高校の同学年の為少なからず見る事は少なからずあった。
その都度こっそりと心操や友人、焦凍の影に身をひそめる癖がついてしまったのは致し方無いといっても良いのだろう。
あの日から爆豪を見かける事が多くなりきまって相手がこちらを見ているような気がした。


「……何見てんだよ」
「見てないです。」
どちらかと言うとそっちが見てるよねと出そうな言葉を飲み込んで失礼いたしました。と作業的な会釈をし足早にその場から離れようとした名前を爆豪がオイと引き留めた。
「…期末」
「え?」
「期末試験の順位いくつだ」
昨日張り出されていた結果を思い返し中間とかわらないですと答える。爆豪の反応を見る事も無くその場を後にする。あの時と言い今回と言い名前は爆豪の問いに含まれる物が何なのかわからなかった。
自分の席に着き一息つく。
カバンを開けるとカサリと顔を出したのは白いそれだった。
改めて開くそこに書かれている文字は変わる事はない。

【貴方を見ています】

脳裏にかすめるのは赤色眼光鋭い視線。
「無いなありえない。」
かぶりを振って浮かび上がった仮設を否定した。きっと彼ならこんな事はしない。
名前には根拠も証拠も無いけれど何故か不思議とそう思えた。不可解なこれもきっとそのうち止まるだろうと紙をカバンの奥にしまい。
授業の準備にとりかかる。窓の外は夏へ向かって日差しが強く輝きを増していた。

名前の予想とは裏腹に差出人不明のそれは止むことはなく。その日を境に一度に入れられる枚数は日ごとに増えて行くようになってしまった。


「轟、お前顔色悪いぞ。また風邪か?」
心操の言葉にギクリと体をゆらす。
「ちょっと夏バテ気味なだけだよ」
「なら良いけど、あんま無茶するなよ」
「うん、心配してくれてありがとう」
心操はヤバそうなら保健室行けよといって席に戻っていく。
風邪ではないのは事実だ。ただ寝れていないだけなのだ。布団に潜り込んで目を閉じるが睡魔が来ない。食欲も少しだけ落ちてきていた。いち早く変化に気が付いた焦凍や冬美ちゃん達にもちょっと夏バテ気味だからと言ったが恐らく原因は暑さのせいではない。
カサカサとカバンを動かすと度に聞こえる紙がすれる音。
気持ちが悪いような呼吸がしづらいようなそんな苦しさが襲ってくる。

【貴方を見ています】
【君を見ています】
【ずっと見ています】

見られている。ずっと自分は見られている。誰かにずっとずっと。微かにだが寒い視線を感じていたのは確かだ。薄気味悪かった。不気味で正直とても怖い。
身の危険になる事は校内ではないだろうと思うが一人でいるのを避けようと思い。今日一日は出来る限り友人達や焦凍と居るようにした。
昼休みに普段訪ねてこない名前がA組に顔を出すと焦凍は驚きつつも何かあったのか?と耳打ちをした。
この場で洗いざらい話してもいいのかと名前は思ったが。見た目に寄らず大胆な事をする兄がかなりの大事にするのではないだろうか。そう思い何時来てもらってるからたまにはと誤魔化してしまった。
そのままの流れでA組で昼食をとっていると教室の端に爆豪が名前達の方を見ていた。静かに観察するような視線。

【貴方を見ています】



『ごめん今終わったよ』
『わかった、正門で待ってる』

軽い電子音が焦凍からの言葉を名前に届ける。授業について先生に質問をしていたら予想以上に時間がたっており名前は足早に職員室を後にした。
辿り着いた下駄箱でアッと声が漏れる。
「あぁ?」
「あ、轟妹じゃん」
「おつかれー」
爆豪とその友人達が其処に居て爆豪以外が親し気に手を振ってくれる。
「普通科も結構遅いんだな」
「あ、私が先生に課題の質問してただけで」
「あぁー特待生の課題ってやつか大変だな」
「普段の勉強のほかにそれもやるんだろ、すげぇな」
頑張れよと切島君たちは自分達の靴を取りに去って行く。爆豪だけが其処にとどまってこちらを見ていた。

【貴方を見ています】

脳裏によみがえる言葉に思わず後ずさる。早く焦凍の所に行こうとそのまま逃げるように自分の靴が収められている場所へ行きぱかりと蓋をあけた。

どさどさどさと足元に白いそれが広がる。
「え」


【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】
【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】
【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】
【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】
【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】
【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】【貴方を見ています】


其処に居たのは私だった。
いや私を映し出したおびただしい程の写真がともに流れ落ちて床一面に広がる。すべて視線が合っていない。
所謂盗撮と呼ばれるそれ。
背筋が寒い。脳内の思考処理が追いつかないようで熱をもつ。これは何だ。何が起きている。誰かに言わないと、誰に。
周りの音が良く聞こえない。ざわざわとノイズのような雑音が耳に入る。
先生は何処。焦凍助けて。ナニコレ、気持ち悪い。怖い。怖いこわい怖いこわい。
がくがくと足震える。どうしようどうしたらいい?わからないわからないわか……

誰かに腕を掴まれた。
「アホ面は此処の処理。黒目お前はこいつを轟のとこまで連れていけ正門に居るはずだ」
芯の通った声だけがハッキリと耳に届いた。
芦戸さんに私をたくした彼は残った二人に何か耳打ちをする。二人が廊下の先へ走っていく。何が起きているのかわからず呆然とそれを眺めていた。
「轟妹行こうかー靴履いてはいて」
芦戸さんが今だ震える私の手を握り校舎を出る。
「怖かったね。大丈夫だよ。爆豪や切島たちが犯人捕まえてくれるから。もう大丈夫だよ」
そのまま私の肩を抱いて歩いてくれる彼女の温度は暖かい。大丈夫大丈夫と肩を撫でてくれて少しずつ震えが消えていく。
正門が見えてきて焦凍が私達に気が付いて走ってくる。
「芦戸何があった」
「ちょっと嫌な生徒がいたみたい。でも爆豪たちが捕まえてるはずだから」
轟はしっかりとケアしてあげてとスカートに入ってる携帯を取り出す。連絡アプリを起動させているのだろう。
軽い電子音が彼女の携帯から聞こえた。捕まえたみたいと言われようやく体の力が抜けて座り込む。
「名前」
「うん。平気」
「手、握ってようか?」
「…うん」
包み込む焦凍の手は芦戸さんのよりも大きくて硬い。そのまま焦凍に寄りかかると頭を撫でられる。
今ここには私達以外誰もいないからだろうかそれともまいっているからだろうかそのまま兄の手を拒むことはなかった。
「ごめん轟妹。これから職員室来れる?相手には会わせないけど話聞きたいみたい」
無理そうなら明日とかにするように連絡すると提案をしてくれる芦戸さんに行くと答えて立ち上がる。
焦凍が自分もついていくと言いそのまま三人で校内へ戻った。あまりにも険しい顔をしている焦凍に芦戸さんが気持ちわかるけど手を出しちゃだめだよと言うが返答に信用性がなかった。

焦凍付き添いの下に相澤先生他の数名の先生に手紙が届き始めた頃から今までの事すべてを説明する。最後にカバンに入れられた今までの物を取り出した。
「何で何も言ってくれなかったんだよ」
「ごめん」
「俺そんなに頼りないか?」
「そんな事ないすごく頼りにしてる。だからこれ以上」
迷惑かけたくなかった。何となく学校内だからあの時みたいなことは起きないだろう。
そこまでの危険はないだろうと。これもきっとそのうちなくなると思い込んでいた自分の考えの浅さを恥じる。
「ごめんなさい」
「俺も」
気が付いてやれなくてごめん。そう互いに言葉を交わす私達の空気を変えるようにミッドナイト先生が咳ばらいを一つする。


「彼の事は知っている?」
あの送り主と思われる生徒の顔をみせられるがその顔に記憶はなかった。


*

爆豪勝己が轟名前の存在を知ったのは入学してから少し経ってからの事だ。
きっかけは忘れてしまったがクラス内で今年の一年には特待生が居ると言う話が出た事が事の始まりである。
雄英高校の特待生制度はもちろん爆豪も知っていた。ヒーロー科に所属しさらに特待生に慣れれば自分の目指す将来への道がさらに万全になると思いその条件に目を通して。アホかなんだこの糞のような条件はと毒づいたことは記憶に新しい。
全国模試やら受験のテストやらその課せられる点数や順位の高い事高い事。そんな所までプルスウルトラするな。
実技と併用するならと書かれている場所にも目を向けるが爆豪の頭をもってしても無理だとおもった。
そんな感想しかないあの糞みてぇな難題をクリアした生徒がいるのかその面を拝んでみたいと席に着いたまま耳を傾けるが肝心の名前が一向に上がらずに。
担任が扉を開ける時間まで来てしまった。せわしなく全員が着席をしてた頃に芦戸が手を上げる

「相澤先生今年の一年に特待生が居るって本当ですか」
「事実だ普通科にいる。」
「まじで!?普通科ってことはあのとんでもない条件クリアしたってことか」
「誰々?超気になる!」
「……轟の妹だ。」

相澤の短い言葉に含まれていた情報の多さに全員が驚きの声を上げるのであった。何せこの時は体育祭前。轟が尖っていた時期。聞かれれば答えるが自分から話すような事をしないそんな頃の話だ。
その日の昼休みに爆豪はその妹の面を見に普通科に足を延ばす。
聞きたいことがあったのだ。
あの兄の実力からしてその妹やらもそれだけの個性は持っているはず。
それなのに普通科に居るなんてどういうつもりだと。
そうして呼び出した轟名前の返答に爆豪はふざけるなと吐き捨てた。


ふざけるなそれだけの頭脳があって。恐らくであるが兄妹であるなら兄と同じ、それより劣ってもそれなりの個性があるはずなのに何故ヒーロー科に居ない。舐めてるのか。
普通科にいても自分はヒーローになれると思っているのか。

そう言葉を連ねた気がした。
どうして初対面の相手にこうも言ってしまったのか。爆豪は入学して自分よりも上の奴は居ると知らしめられ。幼馴染に敗け。そう焦っていたのだ。焦燥感にかられた故の行動だった。
思わず掴んでしまったその腕は見た目よりも細く感じ。とても頼りない物だった。

「私、違う。ヒーロー目指してない。ただ私は家計を楽にしたかっただけ」
だから放してとこぼす姿はとても弱々しい。これはテレビで見るヒーローに守られる立場の人間の姿だ。この生徒はこいつはただの一般人だ。
思わず掴んでいた手を緩めるとそのまま走名前は走り去る。爆豪はただ見送るだけだった。
それから爆豪勝己にとって轟名前はこの学校で一番この学校にふさわしくない生徒だという存在になった。
救う側が集まる場所に救われる側が居る。そんなちぐはぐな存在の彼女を知らず知らずに観察をしていた。
そうして轟名前が特待生でいる為にしていた努力の数々を知ることなる。図書館や教室で黙々と課題をこなす姿や時間があれば教師に訪ね歩く様子。
その腕では無理だろうと言うくらいの参考書を抱えあるく背中。
家計を楽にしたいと言うだけであれほど勉強に心血を注げるものだろうか。
おそらくどこかで家族に負い目を感じていたのだろう。あの体育祭の日。兄、焦凍と爆豪の幼馴染の間でされた秘密の会話にも出ている。
理由はどうあれ、努力をし続ける名前は爆豪の中では兄よりも好印象だった。

そうして何気なく見ていた彼女の様子が変化した事やその遠すぎず近すぎない位置で様子を伺っている生徒に爆豪が気が付くのは自然な事であった。。
そうして起きた下駄箱での一件。

「今生糞過ぎて笑いも出ねぇわ」
どんなに努力しても勉学もなにもかも上手くいかない自分とは違い。何もせずに評価されていく名前を見ていて困らせたいともった故の行為だった。やればやるほど自分の順位が上がるとおもってどんどん過激になってしまった。
そう自供した犯人の言葉に爆豪そう口を開く。あれのどこか何もしていないと言うのだろうか。お前はあれ以上の努力をしていたと言うのか。あれ以上に参考書を読み込んだ事があるのか。あれ以上に此処に足を向けていたのか。
仮にそうだとしても救う側であるべき奴が、救われなきゃいけない奴を作ってどうすんだ。
その脳内は伽藍洞か爆破したらさぞ良い音がしそうだな。
「てめぇ一体あいつの何を見てたんだ」
そう言い残して爆豪は職員室を出る。すでに太陽は沈みかけており夕日が廊下を彩っていた。

「爆豪くん」

振り返るとそこには名前がいた。別室で行われていた聴取が終わったのだろう。後ろに兄の姿もみえる。

「犯人捕まえてくれてありがとう」
「目の前で胸糞わりぃ事していた奴を対処しただけだ」
「それでも助けてもらった事には変わらないから」
だからありがとうと言う名前の言葉に爆豪はすこしこそばゆさを感じそうかよと雑に返答をする。
「あの時の爆豪くん本当のヒーローみたいだった」
「みたいじゃねぇわ」

こういう言葉選びは兄貴と似てるんだなこいつ。