×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




一人
薄日をまつB






あ、あぁあぁ
ああぁぁ、あ、ああ、あぁぁあ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、あああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁああああぁぁぁあぁ!!!!!!!!!!!!!
気が狂ったように夏風が膝をつきその場に崩れる落ちる。もう彼女に眼には翡翠さえも映らないようで善逸が慌てて抱き上げた。
母親の異常事態が連鎖するように力なく泣きだしてしまう。

「いい加減にしろ!!夏風さんは何も悪くない!!」
その場に炭治郎の怒号が響いた。
煉獄さんが死んだ事にも宇髄さんの怪我の事にもこの人は何も関係ない。お前の話は全て仮定ではないか、それがあったとしても同じようなことが起きていたかもしれない。
そんな不安定な誰にも解らない事の責任をこの人に全部押し付けるな。
自分はこんなにも人に怒りが湧くのかと炭治郎自身信じられないくらいに腸が煮えくり返っていた。
「最悪の可能性は少しは防げただろう!」
彼の怒号に押されていた男が手で顔を覆い泣き崩れる夏風を指さしてそう言った。
なら、こいつは償うべきだ。
「それならお前も同罪だ!!」
お前も償うべきだ!彼女もこの子も絶対に渡さない。そう言い切る炭治郎の言葉の意味をだれも理解が出来ず。「ちょっと、何言ってるのお前!?」と言う善逸の言葉が皆の意見を代弁していた。
「夏風さんの血に頼って自分で努力をしていないじゃないか!」
彼女の大量の血を必要としなくても作り出せる努力をすればよかったはずだ。血じゃなくても本当の藤の花で出来るようにすればよかったはずだ。自分の未熟さを彼女に押し付けるな、卑怯者。
炭治郎の言葉は酷く男の心を削り、その高い矜持を傷つけた。男が炭治郎の胸倉をつかみ拳を振りかざした瞬間

「そこまでだよ」

静かにそして、心にしみこむ声が聞こえた、それは激昂する二人落ち着け。夏風を正気に戻すそんな、産屋敷耀哉の声だ。
彼は童子そして妻のあまねに支えられながらその場にやって来た。
全員が彼が此処にやってくるなんて想像もしていなかったで体が固まる。
「夏風よく戻って来たね、さぁ泣かないで」
そう赤子をあやす様に彼女に声をかけた。夏風は伏せていた顔を上げ耀哉を見つめる。
「も、申し訳ございません。私の、私のせいで」
煉獄さんが、宇髄さんが、そうぼろぼろと涙をこぼす彼女に耀哉は首を横に振る。夏風が謝る事は何もないよと言い。
炭治郎たちを呼んだ。
「どうやら、私の知らないことが随分と前から起きていたようだね」
詳しい話を聞かせてくれるね、それは有無を言わさない絶対的な声だ。だれもそれを否定することはできない。
男は膝をつき平伏した。炭治郎が男から異様な匂いがするのを感じる。
それは、焦り、何か隠していたことがばれた時の恐怖、処刑を待つ罪人の絶望的なそんな匂いだった。
もしかしたら、こいつはお館様にも誰にもその研究の細部は言っていなかったのではないか。その真実を、こいつが夏風に行った所業の細部はこの後の柱の裁判によって明かされることとなる。
「夏風君にも話に参加してほしいけど、その怪我だと辛いだろう」
代わりに炭治郎に居てもらうから君は蝶屋敷へ行っておいで。今まで固まっていた善逸と伊之助に付き添いを願い夏風達はその場を離れた。

ほどなくして耀哉に召集された柱が集まり、緊急裁判となった。


*

目を開くとそこには懐かしい天井が見える。記憶の通りならば蝶屋敷だ、近くで人の気配をしそちらを向くとしのぶが傍らの椅子に腰をかけていた。
「気が付きましたか?」
そういって体を起こすのを支えてくれる。あの怪我でよく意識を持っていた事、全集中の呼吸を使ったことそれに驚かれ、母は強しという物ですねと笑った。
そうだ翡翠は、私の子は何処だと辺りを見回すが姿が見えない。もしやあの男に連れていかれてしまったのかと血の気が引いていると。しのぶも何を探しているのか気が付いたらしく大丈夫ですよと言って部屋を出るとほどなくして、翡翠を抱えて戻ってきた。
「翡翠くん偉いですね、お母さんが起きるまで大人しくしていたんですよ」
そういって手渡してくれたわが子は、ふにゃふにゃと嬉しそうに私を見て笑っている。そのまろい頬を指で撫で、無事であった喜びをかみしめた。
しのぶが今までの事、貴方が裏でしていた事されていて事をしりました、そう告げ私の頬をつまんだ。
「どうして話してくれなかったんですか」
めずらしく彼女は怒っている。私に言えなくても、悲鳴嶼さんやお館様には話しておくべきだったんです。
なんで一人で黙っていたんですか。あんな体で任務に行けるはずがなかったんです。
そうムニムニと頬をつまみ続ける。どうして黙っていたのか、何故、誰にも話さなかったのか。
最初はうれしかったから、こんな私でも誰かの命を救えるってうれしかった。
柱を降りてからは戻れなかったそれをやめれば、私には何もない。役立たずに戻るのが怖かった。
だから言えなかった。
自分で自分の首を絞めていたのだ、本当に私は
「大バカ者ですよ夏風さんは」
でも、気が付かない私も皆も大バカ者でした。
ごめんなさい、気付いてあげられなくて。
そう私を抱きしめたしのぶは、生きていてくれてよかったそう泣いているように思えた。
もうあの男が私達の前に出るようなことはない、無理な血の提供もしなくて良いからとあの後の事をおしえてくれたが、詳しくは話してくれない。
もう済んだことですとにこやかに微笑む彼女から聞く勇気はなかった。
そしてこれからの事だが、それはお館様直々に通達がされるそうで。目が覚めた時でいいから翡翠と一緒に彼の元へ行くようにと言付けをもらっていたらしく、あわてて屋敷の方に向かった。

向かえてくれたのは、奥方のあまね様だった。
お館様さまの具合はかなり悪くなっているらしく、寝込む事も多いそうで、案内された部屋で彼は布団から体を起こしている状態であった。
「すまないね、このような姿で」
気にしないでください。謝る彼にそう告げ、次の言葉をまつ。お館様は、私が戻ってきたことを労い、そして今まで裏で行われていた事への事をわびた。気が付いてあげられなくて、私に全てを背負わせてすまないそう頭をさげる。
謝らないでほしい、何もかも結局は自分が決めた事なのだ。だから頭を上げてほしい。
頭を上げた彼は私と翡翠のこれからの事についてと話し出した。
「その体だと柱に戻すことはできない。だから夏風、君は」
新しい隊士のお目付け役として此処に居てほしい。どうだろうか、それはまたここに戻ってきてもいいという事なのでしょうかと問うと。夏風は私の可愛い子供、此処は君の帰ってきていい場所だそう微笑んだ。もちろんその腕の子も私にとっては子供同然だ。あまね様に翡翠がどんな子かと聞くと彼女は、夏風によく似た可愛らしい男児だと答えた。
「もちろん謹んでお請けいたします。その変わりと言ってはなんですが、この子の父親の詮索をしないでいただく事はできますでしょうか。」
厚かましい事を言っているのはわかっている。だけどこれだけは譲れない。私が墓場に持っていくそう決めた事だ。
「君がそれを望むならそうしよう。一つだけ答えてくれるかい。」
夏風、君はその人の事を愛しているのかい?
腕に抱く翡翠をそっと撫でる。

「はい、だから私は、この子を愛せるのです。」



――――――――――――――――――

問う、この場で嘘偽りのない事を述べるか、それを反すれば即刻斬首とする

誓います、誓いますよ、ですがなぜ私は縛られているのです。
何故です私の何が間違っていたのというのです。あなた方も喜んでいたではありませんか、あれを便利だと言っていたのではないですか、私をほめてくれたではないですか。それの正体が分かった瞬間に手の平をかえすなんてそんなことがありますか。


問う、それに伴う材料の採取頻度は?

二日に一度、効力が薄まったと気が付いた時には毎日やっておりました。だって必要だった、それだけあれは需要があった。それでも足りないくらいだったのです。
大丈夫です死にはしない量をとっていました。どうしてそんな顔をするのです胡蝶殿、現にあれは生きているじゃないですか


問う、最初の報告では藤の花と言っていたはずでは?

最初はそうでした、あれの血と花を混ぜていたでもそれでは時間も持続性も短く、効果も薄かった、だから、それだけにすることにしました、報告をしてなかったのは謝りますでも最初は本当にそうだったのです。


問う、たびたび報告を求めていたはずだがその時になぜ伝えなかった

そうすれば、貴方様は止めるじゃないですか、やめろとそんなことをして御覧なさい。
どれだけの隊士が命を落とすと思っているのです。
隊士の一人で多くの者が救われるのですよ、簡単な事ではないですか。



今からでも遅くはありません、花藤夏風とその赤子を私にお渡しください。どうしました、なぜ赤子もですって?そんなの稀血の力が赤子の方に行ってしまったからですよ。
あれが身籠ったりしなければこんなこと面倒なことになっていなかったのです。
お館様お願いです、私にもう一度機会をくださいませ、あの時の物よりももっと性能が良いものを作り上げて見せます。


―そのために夏風とその子を傷つけなければならないのなら、しなくていい―
―すまない、気分が優れない、あとの事は柱の君たちに任せる。―
―炭治郎もありがとう。おかげで大事な子供を失わずにすんだ。あとの事は彼らに頼むから下がっていいよ―



―さてどうする
―冨岡さん、お館様は私たちに決定を任せると言っていたので、皆で決めていいんだと思います
―甘露寺の言う通りだ、早く済ませるべきだ、こんなくだらない事
―俺はすでに決まっているお前らもだろう。だがここで派手にやるのはまずいな
―そうですね、さくっと静かにやりましょう誰がやりましょうか
―僕は悲鳴嶼さんが適任だと思う、夏風さんは貴方の継子だったし、そうですよね
―時透覚えていたのか、しかし自分の所為で私が手を下したと知ったら悲しむだろうか、それが心配だ

―なら

「俺がやる」

断末魔も何もかも風が攫って消えてしまった