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一人
薄日をまつA






自分達に土下座をして、見逃してくれと言う女性に炭治朗を含めた三人は同様が隠せなかった。
思えばこの人は初めて見た時から酷く怯え、怖がるような匂いがしており、善逸も「なんであんなに怖がってるんだろうと」首をかしげていた。
その対象が全員でなく自分達だけなのだ、頭をひねるのも無理はない。
「頭を上げてください。訳を話してください」
そう言って彼女に手拭いを渡す。お子さんも心配されていると伊之助がこの人の物である日輪刀と一緒に連れて来た赤子を渡す。
彼が荷物の様に抱えて持ってきたことは後で怒る事にして今は彼女についてだ。
大事そうに赤子を抱くその人は花藤夏風と言い、自分は鬼殺隊の隊士で元柱「砂柱」だという事を明かした。
これには皆顎が外れそうになる、善逸は汚い高温で叫ぶし、伊之助は勝負しろと雄たけびを上げる始末。全く話が進まない。
何とか二人を落ち着かせ夏風さん話を聞く。

「だから逃げてきたんです。」
私はこの子をとりました。そう話し終えた彼女は涙を流しながらぎゅっと赤子を抱きしめていた。
何も言えなかった、噂には聞いていた、逃げた柱がいると。そんな人がいるのかと憤慨したのを覚えている。
でもこれはどうしようもない彼女を責めることはできない一つ言えるのは
「貴方は悪くない」
子供を守ろうとした貴方は悪くない。その言葉でまたぼろぼろと涙をこぼすその顔は何処か妹を彷彿とさせ気が付いたらよく頑張ったと頭を撫でていた。
驚いた様子の彼女は少し呆気にとらていた、ありがとうと初めて笑った顔をみせてくれた。
貴方の事は鬼殺隊には言いません、善逸や伊之助もそれに同意した。


*

鬼と言うのはどうしてこうも人の幸せを壊すのだろう。
元々三人が此処に来たのも近くで鬼がいるとの任務での事であった。まさかこのタイミングでここに来るなんて考えていなかった。
何故ならこの町は微かに藤の花の匂いがしていたから。

現れた鬼の再生力はすさまじくそのスピードは今までにない、食べれば食べるほど力をつけていく、そしてひとたび攻撃を受けると体がしびれて動けない、自分たちは強くなったあの列車で、遊郭で上弦と戦った。だから勝てるそう踏んでいたのに。
この鬼は恐らく上弦の鬼に相当する「まずい」そう思った瞬間、風の匂いが変わった。

「全集中、砂の呼吸」

倒れる自分達の前にその人はいた。どうして、隠れているように言ったのに、もうあなたは鬼殺隊でないから戦わなくてよいと言ったのに。
もう呼吸はできないそういっていたはず。出来たとしても僅かな時間だと、無理をすれば体が持たないと。しびれる体を起こす。
「逃げてください」
「大丈夫、君たちが動けるようになるまで」
それくらいの時間稼ぎはできるよ。
そう言って彼女は刀を握った。そこからはの光景は何といえばいいのだろう。鬼の再生が追いついていない、毒を吐こうにも砂で防がれる。
圧巻そう言い表すほかなかった。
あと少しで首に届く、そう思った時に彼女に口から血が流れだしはじめる。
限界なんだ、このままでは危ない、鬼の攻撃が隙のできた彼女を襲うが何とかそれ交わしたようだ。その時彼女が鬼でない何かを捉えた。
「翡翠!!」そういって駆け出した彼女の先には攻撃により崩壊した家とそこで倒れる女将さんそして、傍でなく彼女の子供がいた。
ガラ空きになった背中を鬼が狙う、避けてそういうが彼女は避けなかった。
その線上には彼女の子供がいたから。


大きく泣く翡翠の声が聞こえる。
背中が燃えるように熱い、型で受け流したが完全でなかったようで、背中が大きく裂けたのだろう。
呼吸もうまくできなく視界がかすむ。
「あぁ怖かったね、でももう大丈夫だよ、私の可愛い子。翡翠は私が守るから」
だからお願い泣かないで、そう涙をぬぐうとこの子の白い頬に血がついた。
今ので噴き出た私の血で鬼は怯んでいる、体制を立て直せ。
立て、立つんだ。刀を握れ、翡翠が死ぬぞあの子たちが死ぬぞ。お前が守らなければ誰が生かすのだ。
自分に激励を飛ばす。
立て動け、目の前にいる鬼はお前の大事なもの食らうものだ。もう動けない、でも彼らの盾ぐらいにはなれるだろう。
震える手で刀を構えなおしたときに鬼の首が落ちた。そして耳に届くは懐かしいあの方の声。
「見事だ」
その怪我でよく膝をつかず、立ち続けた。さすが私の継子だ。
そういってもう大丈夫と言うあの人の姿はあの日となにもかわらなかった。


*

自分達のカラスが応援を求めに行ったときに近くに来ていた悲鳴嶼さんが来たようだ、あんなに苦戦していた鬼は彼の手によって見事打ち取られた。
夏風さんはと安否を確認すると体を引きずりながら翡翠の元に向かいそっと抱え、愛おしそうに頭を撫でている。
あぁよかった誰も命は落としていないそう思ったのもつかの間、彼女は悲鳴嶼さんをみて体を震わせた、そうだ彼は長く鬼殺隊に居る彼女のことだって知っているはずだ。そう結論に至ったときには夏風さんは怯えるように自分達から距離を取り始めている、だけど彼女も酷い怪我をしている早く治療しなければ命にかかわる。
「夏風、怪我の治療をしよう」
さぁこちらにと言う悲鳴嶼さんの言葉に彼女は嫌だと返して後ずさる。何を言っているんだと困惑する彼に行かない絶対にと錯乱しているような様子でぜぇぜぇという呼吸は彼女の異常を知らせている。
自分達からも治療を受けるように説得するが嫌だ嫌だと泣きじゃくる。
「だってあそこに連れて行くでしょう。戻ったら、私からこの子を奪うでしょ」
絶対に嫌だそう言って泣き崩れてしまう彼女はズタズタの身体で尚も子供を自分達から隠すように抱きしめている。
「そんな事絶対にしません、俺が絶対に誰からもそんなことはさせません。だからお願いです治療を受けてください。」
そう言ってゆっくりと彼女のそばに行き、お願いですと言葉をかける。悲鳴嶼さんも何かを理解したのか
「夏風、私達は何か大きな食い違いをしているようだ、信じてくれ」
そんな酷いことはしない、だから治療を受けてくれそう彼女に手を差し伸べた。

「俺たちが夏風さんを護ります、だから行きましょう、貴方も翡翠も怪我をしている。」

雨が静かに降り出していた。

*


応急処置を施し、何とか鬼殺の本部まで戻ってきた、悲鳴嶼さんは先にカラスに伝えていたのだが詳しい報告の為と自分達の傍を離れていった。
夏風さんは少し落ち着いたようで。しかしまだ匂いはまだ平常時とは違い、かなり焦りと緊張の匂いがしている。翡翠も彼女の腕の中で不安そうにあたりを見回している、恐らく母親の不安な気持ちを感じ取ったのだろう。
その時じゃりという地面を踏む音が聞こえた、
そちらを向くと見たこともない人がおり、着ている服装からただの隊士ではないことが解る。
「花藤、きみが戻ってきたと聞いたが本当だったんだね」
元気そうで何よりだ、そうにこやかに微笑むその人が現れた瞬間に後ろに居る夏風さんの匂いが恐怖一色に変わった。善逸も伊之助も彼女の異変に気が付いたのだろう。
そっとこの人から隠すように立つ。
「あなたはどなたでしょうか?」
こちら警戒をあまり感づかれないようにそう質問をすると、少し苛立たし気に自分は鬼殺隊で研究をするものと答え彼女は前に私に協力していたのだと語った。
「さぁ、その子供を渡しなさい」
さも当然かのように何の疑いもなくそう手を伸ばす。嫌だそう夏風さんがか細く答えた瞬間に男の態度は一変した。


*
何をふざけた事を言っているこの役立たず、お前の血がどれほど重要で鬼殺隊に必要なのかわかっているのか?お前が消えたことによりどれだけの隊士が死んだと思っている。
知らないうちに孕みやがってどれだけ私に迷惑をかけたと思っているのだ。
あれが今でも作れていれば煉獄殿は死ぬことはなかっただろう。宇髄殿は左目と左手を失わずに柱を引退することもなかった。お前のせいだ。お前が殺したんだ。
わが身可愛さに自分の子供可愛さに逃げ出しやがって、お前を腑分けして、子供を使い倒してもまだ足りないの事をお前はやったんだよ
少し考えればわかる事だろ、大勢の命と一つの命そんなことも解らねぇのか。

男の言葉が頭の中で反響する。
煉獄さんが死んだ?宇髄さんの目と腕が無くなった?沢山の隊士が死んだ。息がうまくできない横に居る善逸のしっかりという声が遠くに聞こえる。
私が此処から逃げたから、煉獄さんがあの誇り高い人が死んだのか、私のせいで宇髄さんが家族を守る腕をなくしたのか。私のせいでたくさん人が死んだのか、
私のせいで、私のせいで、私が逃げたから、皆死んだ。いなくなった。
役立たずの私が、逃げたから
バキバキと頭の奥で何かが割れるような音がした。
音が聞こえない、何も見えない。


おねがいです。だれかわたしを


ころしてください。