×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -







愛をこめて花束を




「ロビンあれなんだろう」
そういってつないでいた手を引く。
指を指した先には露店が並んでおり、その一か所にキラキラと光る物たちが並んでいるのが見えた。
「行ってみましょうか」
引いた手の持ち主のロビンも興味があったようで二人で雑踏の中を進んでいく。店の前にたどり着くとそこには色とりどりの花が並んでいた。それも普通の花ではない。
花の周りを飴細工のようなものでコーティングしている。恐らく何かの塗料なのであろう。「きれー」
「本当、素敵ね」
そう言って二人でその花たちを見ていると、主人である女性がにこやかに、旅の人たちですか?と尋ねてきた。ロビンが海賊である事を伏せて、そうだと答え昨日の夜にこの島に来たのだと続ける。
「ならおひとつどうですか?この子たちなら長い航海中でもずーと瑞々しい姿のままですし、世話とかもいらないんです」
「ずっとこのままなの?」
「そうなの、だから贈り物とか大切な人にプレゼントするためとかで買ってくれる人もいるのよ」
なんでも彼女が一つ一つ手作りで作っているようだ。すごいね!綺麗だね!と感想を言うと彼女はありがとうと嬉しそうに笑う。
なるほどだからちょっと値段が高いのかと値札を見て思った。欲しい数を買うととてもじゃないが自分のお財布の中では足りない。
どうしよう諦める?でも、うーんとすごく悩んでいると、女の人はお花だけ持ってきてくれれば加工だけやってくれると言ってきた。
「あら、そんなこともしているの?」
「普段はしないんですけど、お嬢さんがこんなに悩んでいる姿をみたら、凄くプレゼントしたい人がいるのかなって」
そうなんでしょ?と言われ少し恥ずかしくなりながらもうんと頷いた。加工のお金は私のお小遣いでも大丈夫な値段にしてくれ、加工には二日かかるからねと教えてくれる。
「花は町の裏側にある森にたくさん種類があるからそこで探してみるのもいいわよ」
女の人はお店で売ってない物とかもあるからと来た道の反対側を指さした。今が丁度沢山の花の開花時期が重なっているようで遠くから見ても森は色々な色をしているのが見える。
「この島は沢山花が咲いているのね」
「ええ。なんて言ったてうちは」

花の島ですから。ようこそ旅人さんがた。

*

ナミちゃんの言っていた出発の日からすると明日の朝すぐに出ようと思った。
ご飯を食べて探して夕方にあの人の所に行けば間に合うはずだろう。
問題なのは、誰にもばれてはいけない、ロビンは一緒にいたから仕方ないとしても後の皆には知られてはいけない、迅速に速やかに行動しよう。部屋で必要な花の色をかいていく、これも見られてもいいようにドワーフ語で書くことにした。ばっちりだ。
「赤でしょ、緑に黄色、青、オレンジ、ピンク、紫。あとこれ。8個見つければいいのか、大仕事だ」
書き終えた紙を肩掛けのカバンに入れ枕もとに置く。
そして早々に布団にもぐった。
「うぇへへ、皆びっくりするだろうなぁー」


次の日朝食を済ませたあとメリー号を出る。
本を読んでるナミちゃんになんとなく散歩してくると言いうまく外に出た。
船の近くの海岸で釣りをしていた船長とウソップに出くわしたけど、お花が咲いてるのを見に行くと言うと2人ともちょうど魚がかかったのか、気をつけてなー!と言ってくれたので詳しく聞かれる前に走ってその場を後にする。
しばらく走ってメリー号が見えなくなったところでふぅーと息を吐く。
「しゅっぱーつ!」
そう一声あげ森の中へと足を踏み入れた。
あの女の人が言っていたとおりに森の中は色々な花が咲いておりあたり一面絵の具を撒いたように鮮やかな景色である。
花の王国みたいだと楽しくなって進む足を早める途中見た事ない花もあり夢中で駆け回った。
ここに来た目的を思い出したのはそれからしばらく経ってからの事である。
慌てて紙を取り出して頭のイメージに合う花を探し始めた。
これが思いの外大変な作業である事だとわかるのはしばらく経ってからである。
「ないなー、これじゃないし」
7つまでは順調に見つけることができたのだが最後の一つがどうしても見つからない。
近いものは見つけるが、なんかちがう、これじゃないと思い納得のいくものが見つからない
木々の間から入る明かりもだんだんと橙色に色づいて来ている。
おにぎりを食べてからの時間からしてもそろそろ見つけ出さないといけない、困ったなと思いながら歩いていると高い断崖に行き着いた。
その崖を見上げると途中の出っ張りに探していた色の花が咲いているのがみえる。
目視で確認できるかぎり、自分の想像していた色に一番近い物のように思えた。
「 よし!」
肩にかけていた鞄と積んだ花を飛ばされないように置いて袖捲りをする。
そして意を決して崖に手をかけ登り始めた。


*

名前がいない?

甲板で本を読んでいたナミがそう聞かされたのはまもなく日が水平線につき始める頃だった。
チョッパーが彼女に用があるみたいで探しているのだから見つからないと言う。
朝食のあと散歩に行くと言ってきたきり自分もみていない。
他のところも見たのかと尋ねると、一番居そうなゾロの所へも尋ねたが、筋トレの後昼寝をしていたが彼女は来ていないと言われたそうだ。他にも思い当たるところは見たがいなかったとチョッパーは首を横に振る。
「もしかして、誰かにさらわれたんじゃ!」
「落ちついてチョッパーまだそうと決まったわけじゃないし」
全員に聞いてみましょうとナミは本に栞をはさみ彼と一緒に名前を探し始めた。しかし、現在の彼女を知る人は誰居ない。ひとまずあたりを探そうと手分けして捜索をはじめるが、だれも名前を発見することはなかった。
町に出かけているロビン以外が一度集まり、今一度情報の整理を始めた。
「朝飯のあとに名前ちゃんにおにぎりを作って欲しいて頼まれたから作ってあげたんだが。」
俺はてっきりルフィ達と一緒にいるもんだと思ってた。そういってサンジはルフィとウソップへと視線を移すが二人も今の今まで釣りをしていたらしく名前は見てないと手をふるがそういえばとウソップが釣りを始めたころに名前がお花を見に行くと言っていた事を思い出した。
「花?町の方に行ったてことかしら」
「名前が一人でか?」
それはないんじゃないかとウソップが首をかしげた。彼女は自分がどういう存在であるかナミからそれはそれはしつこく口が酸っぱくなるほど言い聞かされている。
人が多いところに一人で行く事は今までなく、名前自身も一人で行きたい言ってきた事はなかった。
日が沈み徐々に暗くなり始めており、全員の脳裏に本当に攫われたのかという考えが浮かび始めたころ
「あら、皆集まってどうしたの」
町へ出かけていたロビンがメリー号に戻ってきた。ナミが掻い摘んで訳を話すと彼女はまだ戻ってきてないの?と目を丸くしている。
「ロビン、何か知ってるの?」
「知っているというか、あの子が行ったところに心当たりがあるわ」
そう言って、名前が今いる所は恐らくあそこと森の方を指す。
示された先にある森は暗くどこかおどろおどろしい雰囲気が漂っている。遠くの方で獣の遠吠えらしき声も聞こえており、昼とは全く違った様子をしていた。
あの中を彼女が一人でいるのかと思うと気が遠くなりそうだったがそうも言ってられない。
「名前探すぞ」
ルフィの一言で森の方へと向かおうとした瞬間、がさりと近くの草むらが揺れ、人影が現れた。
「あぁ、本当に海賊船なのね」
「あらあなた、昨日の」
その姿を認識するとロビンはそう言った。現れたのはロビンと名前が昨日であった商人の女性とそしてもう一人、彼女に連れられて来たのは、今全員が探していた名前がである。
彼女は所々泥だらけで、あちらこちらに擦り傷をこさえていた。
「森で商品の材料を探していたら、この子が倒れているのを見つけたんです。」
多分崖から落ちたんだと思いますと名前にあった経緯を話してくれる。軽い治療をしてくれ、土地勘がない名前を船のある所まで連れてきてくれたようでそんな女性にルフィはありがとうとお礼を言って名前を呼んだ。
「なんで一人で行ったんだ」
その声のトーンに全員が驚く、静かでどこか怖い声だった。珍しく彼が怒っている。敵に向けるような激情のような勢いとは違うそんな様子で名前を見ていた。
「だ、だって」
「だってじゃねぇ、ナミにいつも言われてんだろ」
皆心配してたんだ、お前が攫われたんじゃねぇかって。そんなに泥だらけで、なんで花なんて探してたんだ、どうして俺たちにちゃんと言わなかったんだそうルフィは淡々と聞く。
名前はそんな彼の様子に段々と目に涙を浮かべ、だってだってと嗚咽をこぼし始めてしまう。そこに助け舟を出したのは、女性だった。
「皆さんに贈り物したかったんですよ」
そう言って昨日の名前との会話とここまでの道のりで名前が教えてくれた贈りたかった訳をルフィ達に話してくれる。
【みんなが見つけてくれたの、名前もくれたし、お家もできたの。すごくうれしかった、毎日がお花みたいに色がついてね。お姉さんのお花みたいにきらきらしてるのだから】
「そんなきらきらをくれた皆にあげたいと思ったらしいです。」
話し終えた最後に怪我した名前の代わりに持ってくれていた花を8本見せてくれた。それはすべて色が違う花であり、皆さんをイメージしたものであると教えてくる。
それを聞いた全員ははぁーと安堵のため息をはき、そしてどこか気恥ずかしさを覚えた。
これではこの子供を怒るに怒れない。
ルフィはもう一度名前を呼んだ、その声は先ほどの怖さはもうなかった。
「ありがとな」
そう言ってやっと名前の頭を撫でる、そこで彼女の涙腺も限界が来てしまったようでボロボロと涙がこぼれ始め名前はルフィに飛びついた。
「ごめ、ごめんなさい、せんちょーごめんなさい」
わんわんとそう言って泣く彼女を抱え上げると女性に花の加工を改めてお願いする。彼女もそれを快諾し、お代はいらないとまで言ってきた。
「元はと言えば、私が森が良いよと言ってしまったのもありますしそれに」
「それに?」
「そんなに素敵な人たちに私の花を贈りたいと思ってくれたのがすごくうれしかったのでこの仕事やっていてよかったと思いました。」
加工は最優先でやりますね、そう言って女性は町の方へと帰っていった。

*

加工された花は後日船に届けられた。
「少しサービスをしました、旅のご武運を祈って」
そう女性はメリー号の出向を見送ってくれる。
彼女が見えなくなるまでルフィと名前は手を振り続けた。

「あけるよー」
綺麗な茶色の箱に入れられ、赤いリボンがされたそれを全員が見守る中名前は慎重にその箱を開けた。
その姿を目にした瞬間綺麗ね、素敵、すげーと口々に感嘆の声がこぼれる。
「お花の輪っかだ!」
そこにあったのは名前が探してきた八本の花をメインにあしらわれた花のリースだった。それを手に持ちあげると角度を変える度にキラキラと輝いている。
そのリースはラウンジに飾られることになった。
「ところで名前どの花が誰なんだ?」
彼女と並んでそれを眺めていたチョッパーが尋ねる。名前は一つ一つ指をさした。
「赤がせんちょー、緑がゾロ、青がサンジで黄色がウソップ。オレンジがナミちゃんでピンクがチョッパー、紫はロビン!」
「じゃあ、あの白い花は名前か!」
「違うよーあれはね」


メリー号!!


皆いつもありがとう!!!