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狂賽の鳥



―籠目、籠目
―籠の中の鳥は



*
夢を見る。
何度も何度も見るとても怖い夢を見る。
目を開けると私は何処か暗い建物の中に一人きり、あちこちが崩れ落ちていて、煙が立ち込めているそんな場所。
所々に見える赤いランプが血とも炎とも見えてたまらなく怖かった。
あぁまた、此処に来た、来てしまった。
嫌なのに、拒否したくても私は此処に来てしまう。
何回も何十回、数えきれないくらいに、何度も何度もこの夢を繰り返した。
だから夢の結末も知っている。
背後からずり…ずり…と何かが床をするような音がしてくる、
この音の正体はわかってるだけど、体が勝手にそちらを見ようと動いてしまう。
嫌だと思ってるのに、見たくないと思っているのに。
「あ…あぁ…」
振り返るとそこには黒い巨大な物体が居た。
人の形をしたそれの周りを足から頭まで、うねうねと黒い蛇のようなものがひしめき合うにし包み込んでいる。
顔は解らない、この世の物とは思えない「それ」がそこにいて、ないはずの目で私をとらえた。その瞬間体の自由が戻り走り出す。
アレに捕まってはいけない。
もしも、
もしもアレに捉えられてしまったら最後。
(殺される)
いや、もうすでに何十回、何百回と私はあれに殺された。
首を絞められ。腕をもがれ。叩きつけられ。潰され切られ折られ飲み込まれ。
そうやって数えきれないほど私は死にまた数え切れないほど私はここに戻ってきた。
始まりは何時だったのか覚えていない。
もう遠い昔の事だ。
私が死ぬことでこの夢が終わる。
解っているだけど逃げたかった。アレに命を奪われる毎に私の何かが消えていく、空いた穴から水が溺れるように段々と無くなっていく。
そんな気がしていた。
これ以上私から何も奪わないで欲しい。
お願いだから。
そう願ったのも束の間
首にアレの手が巻き付いて、木の枝を折るように私の首を折った。


助けて■■■■
 

―いついつ出やる
―夜明けの晩に


夢を見る。
何度も何度も見るとても怖い夢を見る。
目を開けると私は何処か暗い建物の中に一人きり、あちこちが崩れ落ちていて、煙が立ち込めているそんな場所。
何度も何度もこの夢を繰り返した。だから夢の結末も知っている。
振り返るとそこにはアレが居て、私はそれから逃げた。
誰か助けてほしい。そう呼びたくても呼べる名前がなかった。
本当になかったのだろうか?
昔はあった気がした。
呼べる名前が、私の手を握ってほしいと言いたかった人がいた気がする。
我武者羅に走ってたどり着いた部屋の中に逃げ込んだ。
ロッカーの中に入ってアレが通り過ぎるのを待つ、外からガタガタと音が聞こえてくる。
小さい頃、■■■■が怒っていてそれが怖くて二人で一緒に隠れていたな。
少ししたら■■■■がもう大丈夫て開けてくれたそれまでずっと手を握ってた…。
誰と?解らない、何処で隠れていたんだっけ?■■■■て、誰の事?
そんな人いるの?
もし本当にいるならなんで私は今一人なの?
その時、ガチャりとロッカーの扉が開いて
空いた隙間からアレと目があった。


何で迎えに来てくれないの■■■■


―夜明けの晩に
―鶴と亀が滑った


夢を見る。
何度も何度も見るとても怖い夢を見る。
目を開けると私は何処か暗い建物の中に一人きり、あちこちが崩れ落ちていて、煙が立ち込めているそんな場所。
何度も何度もこの夢を繰り返した。だから夢の結末も知っている。
走って、ただひたすらに走ってアレから逃げながら私は探していた。
もしかしたら、■■もここにいるのかもしれない、同じ夢を見ているのかもしれないだって私達■■だから。見つけてあげないと、■■は泣き虫だからこんな夢怖くて耐えられないと思う。もう大丈夫だよて言ってあげないと、私も怖いけど、頑張らないと。
これくらいの事一人で出来ないとダメなんだよ。
だって私■■■ないだから、■■■■が言ってた。
■■は■■■■で私は■■■ない。

だからかな、私が独りぼっちなの。
だから助けに来ないのかな。
だから迎えに来てくれないかな。
じゃぁ■■も此処にはいない?
もし、■■が此処に居たとしても私みたいに■■■ないじゃないからもう■■■■に助けたもらった?
■■■■に迎えに来てもらった?
そもそもこんな怖い夢見てないのかな。
アレがいつの間にか回り込んでいて私の頭を掴むとグシャりと握りつぶした。


■■、私も怖いよ。



夢ヲ見る。
何度モ何度も見ルとてモ怖イ夢を見ル。
目を開ケルと私ハ何処カ暗い建物ノ中に一人キり、アちコチが崩レ落ちテイテ、煙が立チ込メテいルソンな場所。
何度も何度モコノ夢を繰り返シタ。だカら夢の結末モ知ッテいル。
嫌ダよ、なんデ。
何で私ナの
ナンデ私バッカリコンナ怖イ夢を見ルの?
モウ嫌ダ、怖イのモ痛イノも嫌ダ、ドウシテ誰も助ケてクレないノ?
■■ダッテ頑張っタノニ、怖イけド頑張ッタノに。
何デ誰も来テくれナイノ。
後ろカラあれが来テル、ケドもうイイ。
もうニゲたくナイ、疲レた。
私が呼ベル名前モウない。
わかラナい。
覚エテなイ。

―ほんと?

小サな女ノ子がイタ
見タ事アルようナ気ガする。ソンな女ノ子

―ほんとに覚えてないの?
―いつも一緒だったじゃん、

シラナイよ。
ワカラナイ

―そっか、大事なものだからこぼれない様に、奥の奥にしまったんだね
―自分が解らないくらい

女ノ子の手ノ上に小サナ箱が現わレタ。
白ト赤の小サな箱。

―私が預かってあげる、大丈夫だよ
―お兄ちゃんは絶対に私を助けてくれるよ
―だからもう少し頑張ろう。

女ノ子ハ消えテシマッた。
【お兄チャン】
オ兄ちゃん、
イツも優シクて、寒いト手を握ッてクレて。おマジナいシテくれタ。
どコニ居ルの?サミシイ、あイタい。


「お兄ちゃんに会いたい」

バキリとヒビが入るような音がして建物がドンドンと崩れ始めた。
あれも苦しそうな様子でその身体にもヒビが入っていき崩れていく、私以外の物がドンドン無くなっていく。
「名前」
私を呼んでる声がする。
立ち上がって声のする方に向かって歩き始める。
怖いと感じない優しい声だった。



―後ろの正面
―誰?


*
ゆっくりと目を開けると綺麗な色の瞳があった。その眼の色を私は知ってる。
『お兄ちゃん?』
「あぁ、そうだよ」
その人は、優しく微笑んだ。
『名前のお兄ちゃんだ』


やっと会えた、会いたかったずっとずっと寂しかった。
「会いたかったよ、お兄ちゃん」