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黄金色の巡り合い



目の前にいる彼と見つめ合う、会いたいと思っていた。
何度も何度も載っている本を読んでいた。
まさかこんなところで彼に会えるなんて、カバンに入れていた本を差し出す。
「サインください!!!!」


*

グランドラインのある島にハートの海賊団は船を停めていた。
ログが溜まるのは明日の夜、それまでこの島で必要物資の調達をするためそれぞれ町に繰り出している。
治安も良い町であらかたの物は手に入り、べポ船に戻っている最中に事は起きた。
沢山の荷物を抱えて歩ていると腹部あたりに衝撃が走りそちらを見ると、小さな子供がイテテと尻もちをついている。
どうやらわき道から出てきた所を自分にぶつかってしまったようだ。
「大丈夫?ごめんね」
オレよそ見してた、そう子供に手を差し出す。彼女も自分こそごめんなさいと言ってべポを見上げた。そしてそのまま目を見開いて固まっている。
「…さんだ」
「え?何?」
「Pさんだ!!!!」
本物だ!そう言って頬を赤らめ差し出されていたべポの手をがっしりと握り。そのままぶんぶんと手を上下に振りその様子はとても興奮したようで、べポは何が起きたのか一瞬理解が出来なかった。
「Pさん!私本読んでます!いつも!チョッパーと一緒に読んでます!」
これ!サインください!そう言って彼女は肩にかけているカバンから一冊の本を取り出して、べポにずいっと差し出した。それを見て彼女がどうしてこんなにも興奮しているのか理解する。
(あ、このクマと勘違いしてるんだ)
そこには世界的に有名な、蜂蜜中毒のクマがその表紙にでかでかと描かれていた。
べポは、自分が人違いならぬ熊違いをされていることに気が付き、自分じゃないよと彼女に話そうとするが、目の前にいる子供のキラキラとしたその眼にやられ本とペンを受け取ってしまう。
「名前へて書いてください」
「う…うん」
わかったと受け取ってしまい、今更嘘とも言えない。どうしよう、どうしようとしばらく考えた末、自分の名前を書くわけでもなく、このクマのサインを書くわけでもなく。クマの顔と手のマークを書き彼女の名前を書いて名前に本を返した。
受け取った彼女は、ありがとう嬉しそうに受け取ると大事そうにカバンにしまう。
「みんなと一緒じゃないの?」
「えーと、みんなって?」
「プグレットとテガーとエーヨーだよ。」
そんな人たちクルーに居ない、そう思い今は一緒じゃないよと返した。そっかーと名前はポケットにから飴を出してべポに差し出す。
「Pさんお話しませんか!」
「い…いいよ」


そこから少し名前と他愛もない話をしていると、太陽が少し傾きだしているのが見える。
そろそろ船に戻らないとキャプテンに叱られると思うが、目の前にいる彼女はまだまだ自分を放してくれそうにない。
どうしようと思ているべポの耳に聞きなれた声が入ってくる。
そちらを見ると、我が船の船長が自分と名前を見て何やっているんだと言いたげな顔をしていた。キャプテン、俺も良くかわからないんだ。
「べポ、何してる」
「キャ、キャプテン…」
実はと軽く今までの事を説明すると頭の切れるキャプテンは大体の事が把握できたようで。名前の方を見ると
「こいつは、お前の知ってるクマじゃねぇぞ」
だからどっか行けと名前に言うが、彼女はキャプテンをみてポツリと。
「大人になったCストファー…?」
サインくださいとまた本を取り出す。
「違う」
スパンという音が合いそうなキャプテンに一言に、名前は何だ違うのかと本をしまう。
自分も最初そういえばよかったと思いながら、やっと彼女に自分はPさんではない事を話、黙っててごめんねと謝った。
「PさんはPさんじゃない」
「うん、オレべポ」
「そっか、Pさんじゃないのか、残念」
でもべポと話せて楽しかったよと笑っていたので、彼女を悲しいませずにすんでよかったと胸をなでおろした。そこに強い風が吹いて名前のかぶっていた帽子が飛ばされてしまう。
運よくこちらに飛んできたのでそれを掴み彼女に渡そうとすると、名前は自分の頭をカバンで隠すようにしてしゃがんでおり。その頭には帽子の飾りだと思っていた角が彼女の頭部から生えているものだと気が付いた。
「もしかして」
「ちがうよ!竜じゃないよ!人型じゃないよ!」
「えっ」
自分の思ったことを言う前に名前はそう口走ってしまい、あっと慌てて口を押えているがもう遅いよと思った。
目深にかぶっていた帽子がなくなり現れた名前の顔を見て、キャプテンは麦わら屋の所に居る奴かと物珍しそうに彼女を見ている。
「せんちょーしってるんですか」
「お前らのエニエスロビーでの事は全世界が知ってる」
「うぇへへ、照れます。」
褒めてねぇと言いたげなキャプテンはその視線は名前から離れていない、そう言えば、キャプテン人型の竜とか興味あると言っていたなと思いだす。
「麦わら屋たちはどうした。」
「せんちょーはサンジに怒られて船の掃除してる」
買ったご飯みんな食べちゃったのとうちの船ではありえない事をなんてことない様子で話しているから、名前の船ではよくある事なんだろう。
「もうすぐ出発なのにせんちょー全部食べちゃうから、また買いに来たの」
ナミちゃんと一緒にと言ったところで名前はあれとあたりを見回す。
彼女の言っているナミちゃんという人物の姿はない。たしか自分と出会った時にはもう一人だったよと伝えると名前はむむ…と手を顎にあて何か考えている。
「ナミちゃん…迷子か…」
「お前だろ、十中八九」
「私が迷子か!!」
はっと、気が付きどうしようと悩んでいる。とりあえず船に戻ろうと思い立ったようで自分達にサニー号は何処ですか!と聞いてきたが彼女の船の場所を知るはずもない。
「ごめん、わからない」
「そっか、探すしかないか」
そうはいってもこの島はなかなかに広い、一人で探すには相当の時間がかかるだろう。まもなく出発すると言っていたが、何時頃なのかと尋ねると。
この島でなる夕方の鐘が鳴る頃と名前が話したそのすぐあと。
カーンカーーンとその鐘が鳴り響いた。
「鐘なった」
「なったね」
「どどどどどどうしよう、サニー号出発しちゃう」
うぇぇん置いてかれちゃう!と涙目で慌てる名前に大丈夫だよと自分も探すよと言って励ます。キャプテンも手伝ってと言って彼を見ると、何かを思ったのか名前の方に一歩近付くと、彼女に置いてかれたのなら、俺の所に来るかと言った。
何言ってるのと驚いた自分に、キャプテンは、もともとこいつには興味があった、このまま別れるのは惜しいからなと何とも海賊らしい顔をしている。
多分名前が一言でも肯定すれば、さっさと船に連れていくつもりなんだろう。
「うちにはお前の言ってたPさんじゃねぇがこいつが居るぞ」
しかも、自分をPRポイントとして使っている。キャプテンそれはずるい。名前も少し心惹かれている様子でうーんと唸っているが、しばらくして。
キャプテンを見ると行かないときっぱりと断った。
「せんちょー達に会えなくなるのはいやだ。」
「置いてかれてるかもしれねないんだろ」
「頑張って追いかける。だから、一緒には行けません」
ごめんなさい、と頭を下げる彼女にキャプテンは、今回は引き下がってやると言っていて、まだあきらめるつもりはないようだ。そして、西側の港に花のような船首をした船があったと今思い出したかのように教えているけど多分最初からその船が麦わらの船とわかっていたと思う。そんな事は露知らず名前はありがとうとキャプテンにお礼を言って立ち上がった。
「べポまたお話しようね」
「また会えるかな」
「ご縁が出来たから大丈夫だよ!また会えるよ!」
ロビンが言ってた!と一度縁が繋がると人は生きている限り、どこかでまた巡り合えるそうだ。だから大丈夫だよと名前は西の港へと駆け出した。
少しして振り返った彼女は、自分とキャプテンに向かって大きくばいばーいと手を振ってまた駆け出していく。
燃えるような夕日に走っていく名前は何処か幻想的で不思議な子だったなと思う。
しばらくそちらを眺めていると、隣にいたキャプテンがいくぞと言って船のある東の方へと歩いていく。彼に遅れなよう慌てて荷物を持って後を追う。しばらく歩いているとポケットがカサっと音がするので何だろうと探ると、名前からもらった飴が二つ出てきた。
一つを口に入れもう一つをキャプテンに渡す。
「甘いもんは好きじゃない」
「でもこれ舐めたら、名前ともっと縁が繋がる気がする」
キャプテンもまた会いたいと思ってるでしょ?そう問うと、彼はそうだなと言って飴を口の中に放り込んだ。
「甘ぇ」
「蜂蜜味だね」


飴の効果か解らないけど、彼女とはこの後シャボンディ諸島で再開することなった。「べポだ!!」「名前久しぶり!!」