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そうは問屋が卸さない



前々から思っていた、自分の居る海賊船の船長であるこの男は容赦がないと、それが例え。
「べポ、後ろに居る奴をさっさと寄越せ」
先週この船のやって来た、傷だらけの子供に対してもだ。


「でも、名前すごく嫌がってるし…」
べポの言葉で場の雰囲気がより一層重くなるのを傍らで見ていた、シャチとペンギンは感じ取った。馬鹿余計なことをと心の中で悪態をつくが、彼がそう言いたいのも解る。
自分達の視界にべポの後ろに居る小さな影が見え隠れしているのが確認できた。この人物こそ、この話の中心人物である人型の竜、名前である。彼女は数日前に沈めた敵船の船の中にいたのを発見された。
その当時の姿は、あまりにも酷く、正直良く生きていたと言っても良いくらいの様子でメンタルに大分来たと言うクルーも数名いたほどだ。海賊がそんなことでどうすると思うだろうがそれほどだったと思ってくれれば幸いである。
そんな状態だった名前はキャプテンを中心にクルー達の手厚い看護の末、自分の意志で歩けるようになった時には一つ問題が解決したと胸をなでおろしたものだが、そうは問屋が卸さなかった。
意識が戻り、動けるようになった名前は逃げたとにかく逃げた。誰とはもちろん我がハートの海賊団船長、トラファルガー・ローその人からである。

「嫌も、クソもあるか。そいつはまだ完治してねぇ」
さっさと来いと、キャプテンが青筋を浮かべてべポの後ろに居る名前に言うが、彼女はべポの服をしっかりつかみ嫌だと首を横に振る。
理由は単純にキャプテンの顔が怖いとかではない、治療を嫌がるのだ。
誰がなだめても、もので釣ろうとしても。説明しても泣いて嫌だと拒否をし続ける彼女には全員お手上げ状態であるのが今この船の問題になっている。
何が嫌なのかと聞いても、まだうまく人語を話せない名前は嫌だとしか言わずどうするべきか見当がつかない。
「キャプテン、これだけ名前が嫌がってるのきっと理由があるんだよあまり無理させるのも体に良くないと思うよ」
だから今日は、勇敢にも今最高に機嫌の悪いキャプテンに物を申す白熊に二人は称賛の拍手を送りたくなるがそんなことすれば、こちらに飛び火が来る。
「自分も、べポの意見には賛成だ。原因を探ったほうが良いかもしれない」
その方がキャプテンの手も煩わせないと思うと隣にいたペンギンも進言をした。
二人の言葉にキャプテンは深いため息を一つ吐く。
「お前らの言い分も理解できる、だがこいつは少し前までいつ死んでもおかしくない状態だった。」
まだ手放しに安心できる時じゃねぇ、そう言ってキャプテンはポケットから何か紙を取り出した。名前が彼が何をするつもりなのかわかった時には、能力が発動しており紙と彼女の位置が交換されていた。
「その原因を探すのはお前らにまかせる。」
「うぇぇーべぽー!」
名前がたすけてと言うかのようにべポに手を伸ばすが無情にもそれはかなわない。ひょいとキャプテンの肩に担がれ連れていく彼女を涙を呑んで見送るしかできなかった。
「ご、ごめん名前!」
「毎度のことながら胸に来る」
「あいつの為だから仕方ないんだがな」
べぽー!べぽー!といつまでも聞こえてくるその声に、この後船内中に響く彼女の泣き声を思うと早く何とかしないと自分たちの為にも辛いと全員が思った。
「本当になんであんなに治療がいやなんだろう」
船長が嫌いなわけじゃないんだよね、そう首を捻るべポの疑問は自分達も思っていた。
名前は治療以外の時は割と彼に引っ付いていることが多い、島の上陸の時もひょこひょこと後ろについていくのを見ている。
「治療という行為が嫌なのか」
「絵とかで説明してるから理解はしてると思うんだけどな」
まじでわかんねー!そう頭をかく自分たちの耳に医務室からの泣き声が届いてくる。
とりあえず彼女について今一度調べなおすかと全員がその場を離れた。





カシャンと医療器具をトレーに置いて、はぁと一つため息を落とした。
治療を始めて数時間ようやく終わった。
自分の前にある診察台の上に寝ている名前に手を伸ばしその頬を指で撫でる。泣きつかれて、気絶するように寝てしまった彼女はピスピスと寝息を立てており触れている頬にはいくつもの涙の痕が見受けられた。
泣きわめく名前を押さえつけて始まる治療は毎回の事であり、早く何とかしなければと理解はしていた。
だが、先ほどべポ達に言ったように彼女はつい此間まで死にかけていた、言葉通り三途の川の数歩足を進めていた状態であった為。本人が嫌がっていても治療を間を開けることは医師として許すことはできなかった。
「毎度毎度世話の焼ける奴だ。」
そう言い彼女を抱き上げ、頭を撫でる。自分の手にすり寄る名前が一瞬、ラミに妹とかぶって見えた気がした。自分が此処まで彼女に世話を焼くのは、医師としてもあるがどこかで妹に重ねているところも大きいと理解はしている。
初めて名前を見た時、あいつもこれくらいの年だったなと思った。姿形が似ても似つかない彼女に、遠い昔の記憶に置いてきた妹を重ねて、してやれなかった事出来なかった事をする。そんな自分が酷く滑稽だなと思いながらもこの温かみを手放すことはもうできそうにないと思った。
「お前は、死んでくれるなよ」
聞こえてるはずのない名前にそう言い含める。


ローが部屋を出ると、丁度べポ達がやってくるのが目に入った。
「キャプテン今終わった所なんだね」
迎えに来たよと抱えていた名前をなれたように受け取るのを母性働きすがじゃねとシャチが茶化している。それを諫めるように小突くペンギンが様子はどうだったと尋ねる。
「変わらずだ」
泣いて、気絶して、終わらせた。そう何時もと同じ光景を思い返し、答えると。
三人は自分達が調べてきた事を話した。
「もしかしたら、部屋が嫌なのかも」
「部屋だと?」
言っている意味が理解できず、ローは詳細を話すように聞き返す。
聞くには、彼女のカルテなど読み返しても理由が解らず、他のクルー達にも何か気が付いた事はなかったと聞いて回ったらしい。そこで、イッカクがもしかしたらと思い当たる事を話し出したそうだ。
「名前は医者の絵とか嫌がる」
三人も彼女の言っている意味が良く解らなかったようで、どういう事なのかと詳しく聴いたところ。
女性クルーのイッカクは彼女と同じ部屋であるため、名前によく絵本を読んでやるらしい、ある時空を飛ぶ10万馬力の某少年ロボットが出てくる本を読んでやろうとしたところ嫌だと泣かれたそうだ。
何が嫌なのかと問うと、ロボットが作られていく絵をさして嫌だといい、その近くにいる博士の絵を指して嫌だとないた。
この本だけが嫌なのかと思っていたところ、他の本でも医者や治療、手術する絵を見ると嫌だと言っていた。イッカクからそう告げられた三人は、それは嫌だと言うよりか何か彼女の中で恐怖が湧くのだと思ったそうだ。
何故医者?と頭を捻る三人に対して、ローは何か思い当たったように眉間の皺をさらに深めた。
「キャプテン、何か解ったの?」
「人体改造、もしくは実験」
それを連想したんだろうと答えた。正直名前の生い立ちは初めの段階で大体の事はわかっていた、ある研究施設の被験者。そこでどんな事をされていたのか詳細までは知らないが、実験動物らしい扱いをされていたことは想像に容易い。
「じゃぁ、名前はあの部屋に行くのが嫌だったのか。」
「うちの治療室結構設備いいからな、あと専門器具も多いから」
昔を思い出して怖がってたんだろう。べポはよしよしと名前の頭を撫で気が付いてあげられなくてごめんねと落ち込んでいる。
「で、どうします?」
理由は見当は付きましたが、とペンギンの言葉の先はわかっている。
「決まってる。治療をやめるつもりはない。」
やり方を変える。そうローは三人に答えた。

「うぇぇん、べぽー!」
昨日と同じく名前はべポを盾にローに抗うが、昨日と同じように捉えられた。
そこに関してそろそろ戦法を変えるべきだとシャチは思うがこれも今日終わるはずだと切に願いながら彼女を見送った。
隣ではべポは涙ながら手を振り、ペンギンは見当を祈ると敬礼をしている。




名前が連れてこられたのはいつも来る【怖い部屋】ではなかった。今まで来たことのない部屋でたくさんの本が棚におかれ、木のテーブルや椅子、奥にはベットが置いてあり、自分の部屋と雰囲気が似ている。しかし広さや物の良さは自分の所と全く違うのは名前の目からも解った。
「俺の部屋だ」
泣き止んで、抱えられたままキョロキョロと見回す彼女にローはそう告げる。そしてベットにポスリと彼女をおろすと今日から治療はここですると告げた。医療器具をベットのわきのテーブルに並べると自分もベットに腰を下ろした。
自分の膝に名前を載せると、そのまま彼女の細い腕をとる、そこにはどうやったらそこまで下手にできるのかわからない注射の痕がいくつもあった。それを労わるように指で撫でる。
「痛かったか」
そう聞くと名前は撫でている所を指すと嫌だと答える、そして服をまくり腹部などに残っている数多の数を指して嫌だとつづけてローを見た。その眼をどこか不安そうである。
恐らく、彼女の嫌だは怖いと同じなのだ。
「よく耐えた、大したもんだ。」
そう名前の頭を撫でると、彼女はうぇへへとなんとも形容しがたい声で笑い、すりすりと頭をローにこすり付けた。
この行動は竜の愛情表現であると知っているので、警戒や嫌悪はもたれてないと胸をなでおろす。
「俺がやるのは治療だ、実験じゃない、お前がされてきた胸糞悪い事と違う。」
お前の体調をよくするもんだ。そう何度も名前に言い聞かせる。しばらくして理解したのか彼女は「あい」と頷きローに体を預けるように寄りかかった。それを確認し、ローは注射器と薬を手にする。
「これは、お前の身体の免疫を上げるものだ」
「あい」
一つ一つ使う物は何の為かと説明していき治療を始めると、今までの事が嘘の様に、名前は大人しかった。
そして、今までの半分以上の時間ですべての治療を終了した事に名前自身驚いているようで、もう終わりと言いたげにローを見る。
「もう終わりだ。」
名前をベットからおろし、部屋に戻るように言い、自分は彼女のカルテを書き始めるが一向に名前が出ていく様子がない。どうしたのだと見ると、彼女は自分に向かって手を広げている。
「なんだ」
「だっこ」
抱っこ忘れていると言いたげに不満そうな顔をしている名前にもしやとローは、毎回診療終えた後自分が彼女を抱えて送り届けているのを知っているのかと問うと。名前はしまったと言う顔で顔をそらした。だがもう時すでに遅し、がっしりと頭を掴まれギギギッと頭を戻される。
「俺を足に使うとはいい度胸だな」
「だっこ…」
叱られているのが解っているのだろうが、諦めるつもりのない彼女にはぁとため息を一つ吐き、しょうがねぇと彼女を抱え上げる。
「もう少し太れ」
「あい」


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