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メリー号のちょっと不思議で騒がしい一日






この偉大なる航海【グランドライン】を航海していく中で、
ありえないことはないと、不思議なことはなんでもあると頭に良く刻んでいる。
だが
今目の前で起きていることはちょっと。
「ルフィ、手に持っているそれは何?」
わが船の船長である男が持ってきたそれは本当想定外だった。
「名前だ!」
よくわかんねーけど竜になっちまった!そう笑うルフィと腕の中にであたりをキョロキョロと忙しなく見ている、竜になった名前。
元々この子は竜だから元に戻ったと言った方が良いのだろう。その一人と一匹により本日の船の一日は大変なことになるだろうと頭を抱えてしまった。

*
竜に戻ってしまい、言葉を交わすことができない名前をチョッパーと博識なロビンに任せ、残ったものでルフィに事の始まりを聞き出していた。
「つまり、この前の無人島でとった木の実を名前が食ったら元に戻った、そういう事か」
ウソップがルフィの供述をまとめた結果、
数日前に出発した島で持ってきた実が残っていたのを見つけ、釣りの合間のおやつとして食べたとたんに隣に居た名前はもうすでにあの姿になっていたらしい。
「だから、オレは何も悪くねーて」
「いいからどんなのだったか早く探せ」
今、自分たちの目に前には何冊もの図鑑があり、あの子が食べたものを探している。
「なんでお前がなんもなくて名前ちゃんだけそんなことになってるんだ」
「俺の食ったのは違うやつだ、名前の奴のほうが美味そうだったから」
交換してもらったというルフィの頭にサンジ君の足が落とされる。
年下の子になんて事しているのだ、この男の食い意地はいい加減どうにかしなければいけない。
「そっちの様子はどう?航海士さん」
はぁ、とため息をついていると、名前の様子を見ていたチョッパーとロビンがこちらに来た。彼女の手には大きなバスケットがありその中に名前がいるようだ
「見ての通りよ、なかなか見つからなくてね」
少しお手上げ状態と答え、あの子の様子をうかがう。
「今ちょうど寝たところよ」
バスケットにかけられてる布をめくるとそこには鮮やかな赤色の鱗を持った竜が体を丸めて寝ていた。
ピルピルと寝息が聞こえる、体に何か問題はないようでひとまず安心だ。
「船医さんがこの子と少し話をしてみたんだけど、ただ元に戻ったわけじゃないみたい」
そうよねとロビンは隣にいるチョッパーを見る。
チョッパーはこれは自分の推測なんだけどと前置きをして、
先ほど名前と話して彼女が此処がどこなのかも、自分たちの事も全くわからない事。
言動がいつもよりもたどたどしい事が解り、
「戻ったというか、若くなってるんだ。」
多分、人の形をとれるようになる前の年齢くらいにと口にした。
なるほどそれは、盲点だった。
「あ、これなんじゃないか、こんなのオレも見たぞ」
チョッパーの話聞いたウソップがある実の絵をつけてきた、外見はくすんだ青い実で確かにあまりおいしそうには見えない。そのページをルフィに見せる。
「それだ、そのマズそーな実だ!」
決まりだ、慌ててその詳細な内容を確認すると。
どうやら毒などはないようで、
美容と健康に特化した植物であり、実は若返りの効果があると記載されていた。
「効果ありすぎだろ」
ゾロの言葉に全員が同意する。
バスケットの中身がモゾりと動いた。

*

その実は定期的に摂取しなければ効果はすぐに消えるらしく、今日明日様子を見ることに決まり。船はようやく落ち着きを取り戻す。
「竜ってもっと警戒心が強い生き物と聞いていたのだけど」
あの子全くないわね。そう珈琲を口にしながらロビンが船首の方へと目を向けている。
目線の先には、名前の姿がある。
今はルフィの頭によじ登ってメリー号の頭のところで海を見ていた。
その様子から全く警戒心のかけらも感じない。
動物的な思考が強くなっていると思い、あまり構わないようにと思っていたが、先ほど目を覚ましてから誰かの後を追ったりと、本で読んだ竜の性格とかけ離れていた。
彼女が元から人懐っこい性格のようだ。
「普段からもうちょっと警戒心は持ってほしいわね」
自分が様々なと所から狙われている自覚を持ってほしいのも確かだ。
「それがあの子のいいところでもあるのよね」
「変に怯えられるよりは、まぁそうね。」
そんなことをロビンと話していると。
ドボンと何かが落ちる音がする。
「あぁ!!!名前が海に落ちたー!!!」
「何やっとんじゃー!!!!」

*

あの後すぐにゾロとウソップにより名前は救出され、命に別状はなかった。
「本当に申し訳ありまべんでした」
「あんたもう元に戻るまで名前に近づかない事」
バスタオルに包まった名前を見て、ルフィにそう告げる。
その宣告にルフィがえぇとショックを受けたようだ。
「まだ全然名前で遊んでねー!!」
「名前でってなに!名前でって!玩具じゃないのよ!」
こんなこと何度もあったらたまったもんじゃない。
名前がへっぷちとクシャミをした。
「ナミさん、この馬鹿は俺たちが見とくから、名前ちゃんの事はロビンちゃんと一緒に任せてもいいかな?」
そのほうが安心だからと、サンジ君は名前の頭を撫でる。その手が気に入ったのか名前はその指をぺろりと舐め、カジカジと甘噛みをし始める。手はやめてね手はと言うがちょっと満更でもないようだった。

パラソルの椅子に腰を掛け、椅子の下にあるバスケットに彼女を下ろす。
此処に居れば少なくとも海に落ちることはないだろうと、そこで大人しくしていてと言うが何か落ち着かない様子だ。
どうしたのだろうと見ていると名前と目が合う。
普段よりも大きくぱっちりとしていて、まるで宝石のようだ。何かを訴えるようにクルルとかキュルルと鳴くが全然わからない。
「あなたに抱っこしてほしいんじゃない?」
私たちの様子を見てロビンがそういった。まさかとは思ったが試しに抱えてみると、満足したのかぐりぐりと角をこすり付けてきて名前はキュルキュルと喉を鳴らした。
やっぱりねとロビンは微笑ましそうに私たちを見る。
甘えためと名前の額を小突くギャオと満足そうに声上げた。

次の日名前は元に戻っていた。おはよーナミちゃんと言う彼女の額を軽く小突いてやった