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25



―ぎゃああああああああ!!!
城の中からチョッパーの声が聞こえてくる。
何だろうと暇つぶしに作っていた雪玉を放置して、立ち上がって城の方へと近づいてみると。
―チョッパー!!待ちなぁ!!!
ドクトリーヌの声も聞こえる。なぜか言葉からして彼を追いかけているようだ。
何が起こってるのだろうと思っていると、私の様子に気が付いたゾロが「どうかしたか?」
と尋ねてきた。
「チョッパーがドクトリーヌに怒られてる声がする。」
そういうとみんな城の方へと目を向けた。
だんだんと騒々しい音がこちらに向かってきている。
「何だ城の中が騒がしいぞ…」
「まったく野暮なんだから…人の別れの夜にどうして静かにしててあげられないのかしら」
ナミちゃんは呆れたようにため息をついた。
心配だからちょっと見てくると言って、城の入り口までいって顔をのぞかせてみる。
「シロ!!」
チョッパーが上から駆け下りてきた。そのまま私の手をつかんでソリがある倉庫まで走っていく。城の中からドクトリーヌの声が響いている。
何が起きているのかわからず、彼に何があったのか聞くと。
「ドクトリーヌに反対された、でも俺世界を見てみたいんだ!!だからシロ達と一緒にいく!」
チョッパーはトナカイの姿になると、「ソリは多分あいつらで定員オーバーだから、背中に乗って!」と私を背にのせて走り出す。
ちょうどその時、
「お前なんかが海に出て一体何ができるって言うんだい!!?」
後ろの入り口からものすごい顔をしているドクトリーヌが現れた。
「あのやぶ医者の様に幻想に生きるのかい!?」
一段と強い風が吹き、城の旗がバサリと揺れる、チョッパーはその言葉に違う!!と振り切るように叫んだ。
「ドクターの研究は完成してたんだ!!!!」
それを聞いてまたドクトリーヌは青筋を浮かべこちらに向かってくる。
両手に包丁を持ったその姿は本で見た鬼婆のようで、二人してぎゃああああああああ!!と声を上げた。

「なみちゃーん!!みんな―!!」
「シロ!?え!!?どういうこと!!?」
なんであんた達追われてるの!?、私たちを見て困惑した表情だ。無理もないだろう、だけど止まっている暇もない。
「後ろから!鬼婆!!!うしろ怖い!!」
「みんなソリに乗って!!!山を下りるぞぉ!!!」
この距離くらいになればみんなも見えるとはずだ、私とチョッパーの背後に迫る。
待ちなぁ!!と包丁を振りかざしながら走ってくる彼女の姿に。
「んな何〜〜〜〜〜!?」
「はやくのってー!!」
チョッパーの引くそりに全員飛び乗る。そのままロープウェイのロープを伝って山の下へとかけ下りていく。
後ろを振り返るとドクトリーヌが何も言わずにこちらを見ていた。
「ドクトリーヌ、怪我診てくれてありがとー!」
彼女は何もただじっとこちらを見ていただけだった。


ドッドッドッドと雪の上を駆けていく。
うはー!!いい〜気持ちだったー!と船長のご機嫌な声が響く。
もっかいやろうという彼をたしなめるナミちゃんの声。ソリの上をわいわいとにぎやかだ。
後ろの様子とは違って前を向いて走るチョッパーは何も喋らない。
先程から何か考えているようで、その顔は険しい。
チョッパーと声をかけるが全く聞こえていないようだ、
すると。
どぉおんと大砲の音が響き渡ったその数は一発だけじゃなく何発も何発も聞こえてくる。
音のするのはドラムロックの頂上からだった。
その音で後ろを振り返ると山全体が輝きだす。そして見えきた物は。


*
ナミちゃんから借りた本である写真を見たことがある。
それはふわふわとした花がいくつも咲く植物のものでとても可愛いと思った。
たまたま隣に居たゾロに、この植物は何処で見られるのか聞くと春に咲く植物らしく、暖かいところに行けばもしかしたら見られるとのことだった。
でも今向かっているアラバスタは暑すぎるらしくて、当分は無理だろうなと言われたのを覚えている。
たしか、あの植物の名前は。

「さくら」

ソリを止めてみんなでその光景を見上げている。呆然というのか、みんながその景色に見惚れいた。
「あれ、さくら?」
「……あぁ」
冬にも咲くんだねと隣にいるゾロに言うと、そうだなと返される。
図鑑も間違える事あるんだなと学んだ。
綺麗と誰かが言った。
すごいと誰かがつぶやいた。
急いで船に向かわないといけないのに誰もその場を動くことができなかった。
それほどまでにその景色が美しかった。
全員の目の前にはとてつもなく大きな大きな、桜の木があった。
チョッパーはそれを見上げて大きな声で泣いている。でもその涙は悲しいものではないようだけれど、うれしいと言ってもいいのかわからない。。
ただこの景色がとても美しいものだという事だけはわかった。

船の上の桜の花見はどんちゃん騒ぎで、その時知ったのだけどナミちゃんと私以外全員チョッパーを医者と思ってなかったようだ。