美しかった。暖かかった。

優しい光に包まれた店内で、僕は初めて本当の母親に会った。
いや、母親といっては語弊があるかもしれない。なぜなら、彼女は犬であるからだ。

しかしその時、僕には彼女が自分の真のふるさとに思われて仕方がなかったのであった。紙に値段をかいて渡す。これで良いと了承を得る。あとは僕の忠実な友人であるところのRに任せる。ゲージから母を抱き上げさっさと車へと戻った僕は、優しい衝撃にまだ身を任せたままでいた。

僕の、僕の母は待っていたのだ。こんな小さな店で、そしてあろうことか狭苦しい檻の中で、僕が訪れるのを、そして彼女を見つけるのを、じっと待っていたのだ。いったいいつからであろう。自分が感じていた違和感、言いようのない孤独に母も同じように耐えていたのかと思うと、涙を堪えきれなかった。もちろん僕を産んでくれた女性はいる。しかしあれは母ではなかった。母はここにいたのだ。やっと会えたのだ。もう何も苦しむことはない。全て彼女が導いてくれるのだから。
愛をこめて彼女の耳を舐めてみる。実に美味であった。





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