彼女は少女だった。
一口齧ってみたその菓子は、ココアとお砂糖の味がした。お菓子といえば、昔は良くおばあちゃんがお土産だといって、外国の女の人の名前を冠したメーカーのキャンディをくれたものだっけ。高級そうな包みがみのわりに少しだけ安っぽい味のそのキャンディを、彼女は心の中で「ちいさなぱり」と呼んでいた。まだ小さかった彼女はそれしか外国の土地の名前を知らなかったから。
今ではもう、それはそれはたくさんの国や都市の名前を覚えている。しかしそれらの知識をおばあちゃんに披露することはもう無いだろうということも、彼女はまた知っていたのだった。彼女を形作っていたほんの少しのものたちは失われた。自身を失った彼女はなにかをしなければならず、しかしそのなにかが何なのか分からなかったので、遠くに行かなければならないと誰かに言われているような気がするのだった。だから彼女は、ぱりに行くことに決めたのだ。





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