もう誰もいなかった。部屋の中心に寝転んだけれど、視線の先にあるはずの天井は無く、そこには青っぽい液体のような物質が渦巻いている。世界だ、と、思った。今自分が生きているこの世界なのか、それともまたこことはちがう別世界なのかは分からなかったが、それは世界だと思った。そしてこのようにして廻っているから世界というのは丸いものなのだ、とその時初めて気がついた。混沌としているが、美しいと思った。きっと本当の世界の色は、美しい青や緑であったと私は思う。しかし時折赤や黒の滴が落ちてきていたので、この世界では戦争が起こっているのだと私は知った。そうこうしているうちに世界の回転はどんどん加速していく。あまりに速くてもう色も分からなくなった頃、私の口の中へ吸い込まれるようにして飛び込んできた。驚きと衝撃に身体が反る。音は無かった。次第に世界はその触手の数を増やし、私のありとあらゆる穴、穴という穴へと恐ろしい勢いで伸びてきた。目から耳から鼻から世界が入り込んでくる。遠くで小さく機械音が聞こえる。遠のいていく意識の中、世界を飲み込みながら気づいたことがもうひとつ。…これ、たぶん世界なんかじゃない。




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