今朝見た夢が思い出せない。
腹の中にいるこいつのせいだ。
おとといから私の腹で暮らし始めたこいつのせいだ。
中から喰われてるんだ。ずっと変な音がするんだ。咀嚼音とかげっぷ音とかそういった類の音だ。音だけならまだいいが、どうにも臭いんだ。なにしろこいつはどうも私の身体を侵略したいらしい。左手の指先に痛みが走ったと思ったらもう動かなくなっていた。次は右手か?それとも左足?
私は好きでこいつを囲っているわけじゃないのに、あの人は私がこいつを養っているという。そんなわけない。今すぐつまみだしたい。だけどもうできないんだ、完全に根を生やして居座ってるんだ。
あなただけは私のことわかってくれると思ってた。あなたのこと好きだったの、私のせいじゃないの、こいつのせいなの全部全部、おねがい置いていかないで。おねがいおねがいおねがい。縋ったけれど、だめだった。彼は行ってしまった。
全てこいつのせいだ。
こいつの根が深く拡がるせいで私はこの部屋に釘付けだ。こいつは朝から晩まで私の身体を喰っているからハッと目を覚ました時に夢も喰われてしまったんだ。夢は私を知る術なのに。明日も夢を喰われるだろう。あさっても。しあさっても。そうなる前に私がこいつを喰わなくちゃ。
もしもし、誰かそこにいるなら、お醤油をください。




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