レースカーテンをすり抜けて差し込む太陽光線があまりに柔らかな色を帯びているものだから、まるで部屋中に初心を溶かしたようにミルキーな様相を呈してしまっていた。窓を背にして椅子に腰掛けると背中がほんわりと暖まり、今にも翼が生えてきそうだ。

こういう時ぼくはいつもきみのことを考えていて、緩い安らぎを表情している。側に来て甘えてくれたらいいなあ、あわよくばこの膝に飛び乗って喉を鳴らしてくれないかしらん。

しかしそれもつかの間のことで、気がつけばメランコリアが直ぐさまぼくを襲う。こんなに暖かな陽射しの中で一体何をしているのだろう。ぼくはなんて無価値で無意味で無駄な存在なのだろう。自らのふがいなさに憤り、悲しむぼくを、きみは睨みつけ去ってしまうのだ。求めても求めてもスルリとぼくの手からすり抜ける絹のようなきみの尻尾は、まるでどこへもゆけないぼくの絶望を象徴しているかのようで、あまりに歯痒かった。

するときみは忘れ物を思い出したようにまた部屋に戻ってくる。そして気まぐれにぼくの膝に鎮座ましましてはちくちくと柔らかな頬をすりつけてニャアと鳴いた。嗚呼、やっぱりきみはぼくのことが好きなんだね。きみがとってもシャイで、そのくせ甘え上手なことをぼくはよく知っている。

それまで部屋に見えない影を落としていたディストレスは嘘のように霧消し、背中に射す熱はいつのまにか暑いほどであった。ぼくが椅子から立ち上がる前にきみは床に軟着陸して部屋から出て行ってしまった。そうだね、ぼくは今から夕食を作るからそれまでに散歩でもしてお腹をすかせておくといいよ。今日はきみの大好きな魚を買ってきたから。




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