希乃子は雨が嫌いだ。 雨が降るたびに頭は割れそうに痛くなり、 心臓は目には見えない圧力で押しつぶされているようだった。 希乃子は雨の日の電話は特に嫌いだ。 電話の主は必ず希乃子に罪を気づかせる。 取り返しのつかないことをしたのだと、 もう希乃子に生きていく術は残されていないのだと。 希乃子はそれを知っている。 希乃子は希乃子の部屋で雨音を聴いている。 耳が痛くなるまで聴きつづける。 その音が止んだとき、希乃子は既に死んでいた。