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初めて見た時、凄く冷めた瞳だと思った。







「ってぇ‥」




ナマエを初めて見たのは、艦内の通路で。
目の前から見たこと無い顔の奴が歩いて来るな、と認識はしていたものの、たまたま本を読みながら移動していたせいか、通り過ぎた時に互いの肩がぶつかった。

突然の痛みと妨げに、小さく舌打ちして痛いと言うと相手を睨み付ける。
それが初めてナマエを見た瞬間。
目と目がぶつかって、一瞬言葉を失ってしまった。



とても冷めた瞳。
人を、物のように見ているような、そんな瞳が向けられて。



ぞく、と背中に鳥肌が立った。




「……悪い、」




俺が何も話さないのが判ると、眉に皺を寄せては目を伏せ短く謝り逃げるようにその場から去ろうとする。
その姿が嫌に儚げで、表情が今にも泣きそうで、どこかに消えてしまいそうに見えて。

何故そう思ったのか判らない。
普段はそんな事、微塵も思わない筈なのに。
でも、そう見えて、だからなのかは判らないけど、俺は無意識にナマエの腕を掴んでいた。



「あ、」

「‥何?」

「いや…俺も本読みながらだったし……わ、悪かった、」

「ああ……それだけか?」



なかなか手を離さない俺に、感情の無い声で問う。
再び見えたナマエの顔はさっきのような泣きそうな表情ではなく、ぶつかった時と同じような冷めた瞳に戻っていて。


俺らしくないって思ったけど、どうにか、この瞳を笑わせてみたいって思った。



「お前、なんて言うんだ?」

「は?」

「名前。」

「………」



凄く、驚いたような表情が見えたような気がした。
まあ、気がしただけだから確実って訳じゃないけど。

でも少し、違う表情が見れて内心嬉しくて。



「俺は、オルガだ。
オルガ・サブナック。」

「俺、は…」



凄く小さな声で自分の名を告げたナマエを見て、もっともっと違う表情が見てみたいと思った。
自分以外の人間に、興味は無いのに。


今思えば多分…、いや、絶対一目惚れだったんだと思う。

冷めた瞳に、溺れたんだ、きっと。




END




その瞳、どこか 似てたから。






ぶつかって一目惚れしちゃったのかよオルガさん!みたいな話が…書きたかったん‥だ。

スランプ!(゚∀゚)


≫20070125




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「見えない臓器の名前は」
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