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『ナマエ!!!』



バタン!といきなり大きな音を立ててドアが開き、己を呼ぶ声が重なって聞こえた。
ナマエがビクッと肩を揺らして驚きながら、それが聞こえた方向に目を向けると、赤と緑の髪が視界に飛び込んだ。



「ちょっと、赤に緑。いきなり入ってくるなって何回言ったと思ってんの?
それに、ドアはゆっくり開けてよ。毎回毎回、そう大きな音を立てて開けられると壊れるだろ」



視線の先には褐色の肌に良く映える、赤い髪と緑の髪をした狼男。
今、一番セットでは会いたくない2人が目の前に現れた。
音の原因が彼らのせいだと認識すると、ナマエは眉を顰めて女の子にしては多少低いであろう声でそう言ったのだった。



「わかってるけどよぉ…緑に先越されると思ったらついつい…な?」



「なっ、なに言ってるっすか!赤がいきなり走り出すからじゃないっすか!!」



くつくつ笑う赤の言葉に間髪入れず、緑が言葉を続ける。
にっと胡散臭い笑みを浮かべる赤と、僅かに眉をつり上げ機嫌が悪いであろう緑を、ナマエは交互に見ると短く溜息をつき、口を開く。



「…で、何の用?

さっさと言って早く出ていけ」



ハウス、とまるで飼い犬を扱うかの如くそう付け足し、冷たい目線を赤と緑の両方に向けドアを指差す。
相当機嫌が悪いのか、眉間には更に皺が寄る始末。


「まぁまぁ、んなツンケンすんなって、」



「そっ、そうっすよ!せっかくの綺麗な顔が台無しっす!」



そう言えば、赤はナマエの頬を優しく撫でて笑み、その姿を見た緑はきゅっと彼女の服の端を掴んで、柔らかく笑んだ。





う…、と小さく声が聞こえるとナマエの頬が軽く紅に染まる。
そんなナマエの状態を見逃さなかったのか、直後。



「俺はただ、お前の顔が見たかっただけだ…」


「俺も、ナマエの顔が見たかっただけで……」




同時に、
軽く耳元で囁いた。


緑が申し訳なさそうにきゅうん、と耳と尻尾を下げてナマエの顔を見上げ首を傾げれば、負けじと赤の指がナマエの唇・首筋の順に這う。
そんな言葉をかけられたのと、小首を傾げた緑の姿、赤の行動にナマエの頭はパンクしそうな程で、



一気に頬が真っ赤に染まった。




「〜〜〜っ、そんな下らない理由なら早く出てけーっ!!!」




フーッと猫が威嚇するように真っ赤になって睨むと、2人を殴り飛ばす勢いで部屋から追い出した。

バタン、とドアを閉じ鍵を締めると、ドンドンとドアを叩く音と共に、酷いやら開けてなどと声が響く。




「あー……ヤバいなぁ、」




ナマエはそう呟くと未だにドンドンと叩かれる扉を、
真っ赤になった顔を両手で覆いながら見るのが精一杯だった。



END






いつまでたっても慣れないってば。





20070204








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