munya | ナノ
「沖田」
「なんでィ」
「なんでアンタがここにいんの」
長期の仕事を終え一週間振りに我が家に帰ると何故か居るはずのない奴がいた。呑気に茶ァ啜りながら寛いで、私が入った瞬間「あ、お帰りなせィ、風呂なら沸いてますぜ」なんて最早住人気取り。
いつからいたんだろう。つか仕事はどうした仕事は。
「なんでって、ハニーの留守を」
「しね」
「酷いですねィ、まだ最後まで言ってないっていうのに」
「うるせ、不法侵入で突き出すぞ」
ちっと舌打ちして不機嫌丸出しに会話にならない会話を続けながら堅苦しい服を着替える為に箪笥の前に行くと、不意に後ろから抱き締められる。(ま、そんな気はしてたけどね)
ご丁寧に両腕まで掴まれて、動くに動けない。
本当なに考えてんの、この男。
「抱き締めんな」
「んな照れなくても取って食おうってんじゃ」
「だまれ」
「…酷いや」
俺は寂しかのったのに、なんて心にも思ってない事を耳元で囁きながら首筋に唇を寄せてペロリと舐め上げる。
ん、と小さく声が出てしまい奴の顔を見てやればにこりと人当たりの良さそうな胡散臭い笑みを浮かべるばかり。
けど、手はしっかりと釦を外そうとしている。抜かりないわ。
その気にさせようってか。
「着替え、手伝ってやりまさァ」
頬に口づけて、にやりと奴は笑った。
さみしいなんて 口先だけ
(…ほんと死なないかな、コイツ)
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20080616
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