munya | ナノ


越えられない、一線




あの日を境に、わたくしとナマエの間にはなにか見えない壁が出来てしまいました。
彼女は何もなかったかのように接しているつもりなのでしょうが、目を見て話してはくれません。笑顔も、声も、いつもの元気さはなくて、とてももどかしい。
全ての原因は自分自身だと謂うのに、わたくしは勝手な事にそんなナマエを見ているのが凄く嫌で嫌で仕方ありません。
本当に、どこまで自分勝手なのでしょうか、わたくしは。


「ナマエ」


伝えてしまった事を今更後悔するなんて遅すぎて、自嘲を漏らして彼女の名前を呟けば、渦巻く後悔の闇に飲み込まれそうになる。
ああならば一層その闇にのまれてしまいたい。そしてわたくしのその醜い感情を、すべてを、隠して。


「‥っ、」


涙なんか、流しても仕方無いのに。
どうして、どうして。どれだけあなたが愛しくても、この気持ちがあなたを困らせた。あなたから笑顔を奪ってしまった。
今は彼女に触れるのも、話すのも、傍に居ることも、全てが怖い。気持ちを伝えた時点で、わたくしは彼女にとって、プラスになる相手ではないのです。(いいえ、それは最初からわかっていた事でしょう。)
それでも気持ちばかりが募るばかりで、どうすることも出来ません。わたくしはいつからこんなに臆病になってしまったのでしょうか。

馬鹿みたいに必死になってもがくことも、できないのです。


失ったものは、とても大き過ぎた

(ごめんなさい、ナマエ)


20080622







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