munya | ナノ
ねえ、貴方は誰?
どうして、わたしを連れてくの?
ねえ、父さんも母さんも、何で泣いてるの?
ねえ、わたし、何処に行くの?
「ほら…もっと鳴いて?可愛い声、聞かせてよ」
耳元でそっと囁かれた声。
壊れものを扱うように、優しく頬を撫でられる。
わたしが、この人に連れられて家を出た時も、同じように撫でながら涙を拭ってくれた。
でも今は、拭ってはくれない。
恐怖と、拒絶、快感と、寂しさを埋めてくれるような安らぎと。
色々な気持ちが入り混じって流れる涙。
先程会ったばかりなのに、彼とわたしは身体を重ねた。
名前さえ、教えてもらわずに。
「あ、や…う、や、いやぁ!」
「嫌じゃないでしょ…身体は素直に反応してるんだから、」
「っん…そ、な事っ、あ」
綺麗な紫の瞳と、月の光で照らされて透き通る様な茶色い髪が揺れる。
言葉とは反対に、段々と火照る身体。優しい彼の目を見て恐怖さえも快感に変わってしまう。
いやいやと首を振り拒絶を表しても彼は止めてくれる筈もなく、腰を打ちつけてくる。
わたしを気遣いながらも、己の欲を打ちつけるように段々と速さが増してゆく。そして皮肉な事に、わたしの身体も快楽を求めいて。
もう、そこまで来ている絶頂に、わたしは身を委ねるしか、できない。
彼の顔が、僅かに歪んだ。
「っは…っ僕、そろそろダメかも…っ
君のナカ、良す、ぎ、」
わたしの首筋に唇を寄せながら息も絶え絶えに彼が囁く。
舌が首筋を這い回って、背中にぞくぞくと快感が走り抜ける。
わたしも、もう、だめ。
「ひっ、あ、だめ、いく、いっちゃ…っうぁあっ!」
「っく…!」
互いに絶頂を迎えて、情事の後の余韻に耽りながら息を正しているときゅっと抱き締められた。
ふわり薫った彼の匂いにすごく安心して、緊張の糸が解れたのかすごく眠くなって意識が遠のいてしまう。
それでも何も言わない彼は、眠ってもいいよと言っているように髪を撫でる。
段々と薄れていく意識の中。
彼が悲しげな瞳でわたしを見つめながら呟いた言葉を聞いた。
「ごめんね、ナマエ」
わたしは悟った。
もう、父さんにも母さんにも会えない事を。
そして毎晩、名前も知らない彼に抱かれるだろうと。
せめて、意識が戻ったら名前を聞こう。
きっと彼は答えてくれる。
だからまだ、今はこのまま眠りにつこう。
「あなたの、名前は?」
ほら、答えてくれた。
-End-
※20050908
改※20080603
マガで配信した夢を加筆修正タイトル変更しました←またか
これは裏になるのか?それとも微裏?
よくわかりませんな(´・ω・`)
敢えての白キラです。私が書くときもちわるい事になりますね。すみません。
何にも設定考えずに訳の判らないパラレルを書いてしまうのが悪い癖です。
キラは大富豪のお偉いさんって所ですかね。その他設定は御自由に妄想で!←
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