とある平日のお昼ごろ。授業が終わり、チャイムを合図に生徒が教室を出たり、昼ご飯を出しはじめた。
俺も、駅前のおばちゃん手作りの唐揚げ弁当(\480)片手に階段を上がって屋上への扉を開ける。


「おや、今日は早いんだね。」
「それ駅前の弁当屋のだな、珍しいな」
「そーだよ。よく分からないけど唐揚げ一個おまけに貰ったことだし、学食からあっちに乗り換えることにするよ。」
扉を開くと、新羅とドタチンは声をかけるてくれるのに、ソイツはこっちを見ようともせず、弟くんのお手製弁当を黙々と食べている。

「シーズちゃん!今日も手作り弁当なんだね。美味しいの?弟くんに作ってもらうとかどんだけブラコンなの?ねぇ」
「黙れノミ蟲。飯が不味くなる。」
どんな挑発をしても、シズちゃんはご飯の時は絶対こっちを見ない。少しだけ、弁当に負けた気がして悔しい。

面白くないなぁ、なんて考えながらシズちゃんとドタチンの間に座る。

「お前、そこそこ食う割に細いよな。」
「臨也は消化器官が弱いんだよ。まぁ僕の知ったところじゃないけど。僕が興味があるのはセルティのあの美しさと心の「うるさいよ新羅。ところでさー」
前シズちゃんがすっぽ抜いた標識が直ってたとか、担任のカツラが新しくなっただとか、どうでもいい話しながら食事を進める。

やっぱりシズちゃんはいつも通り、話振っても「あー」「へぇー」「おう」しか言わなかった。どんだけ弟の弁当が好きなんだ。むしろ好きなのは弟なのか?とか、ボーっと考えていたらオイノミ蟲、と声が聞こえた。

「てめえ頬っぺたにご飯粒ついてるぞ。」
「え!どこ!?」
シズちゃんが自分の頬を指差してここ、とか言ってるのでその場所に触れるが、どこにあるかわからない。

「あー違ぇ。そっちじゃなくて」
シズちゃんの長い腕が俺の方に伸びてくる。
こ、これは、フラグか?フラグなのか?ご飯つぶとって、ドジだなぁお前は☆ぱくっ→俺「(照)」というフラグなのか?
ならば俺は甘んじてそれを受け入れよう。気持ち悪いことこの上ないが一瞬照れた後「シズちゃん本当に何時代の人間なの?臭すぎて吐きそうなんだけど!」と罵ってやる。
だからほらこい!
覚悟を決めて、真っ直ぐにシズちゃんの目を見つめる。

バチコーン!




さて、俺はここで俺の愛する人間の皆に聞きたい。今の音は何だと思う?
では、もう1つ聞こう。こういう状況で、頬についたご飯つぶをデコピンで飛ばす奴がいるなんて考えるかい?

まともにシズちゃんのデコピン(一般人に本気で拳骨で殴られる時の10倍以上の痛み)を食らったのに正気で居られるわけもなく。
呆気なく重心が後ろに傾いて視界が暗くなっていく。

薄れていく意識のなかで、俺は本気で思った。だからシズちゃんが嫌いなんだ!と。




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私は臨也の頬骨が凄く心配です。
因みに何も言いませんがこのノミ蟲はシズちゃんラブなんだと思います。
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