今日は2月14日だ。世間でバレンタインデーと言われている日らしい。元々チョコを送り合う儀式の日では無かったはずなのに、日本の製菓会社の企業戦略のおかげで、すっかり「手作りチョコ」が浸透してしまった。
それを知ったサイケと日々也が「チョコ作りたい!」とか言い出したのだ。


「臨也くーん。カニバリズム?ってどうやるの?」
「テンパリングの間違いだね。どこからそんな語彙が湧いて出てきたの?凄く不安。」

しかし、自分たちだけでは作れないだろう、と臨也も手伝うことになったらしい。
黒いエプロンをつけてる臨也は凄く可愛い。いつか裸エプロンやってほしい。
でも、「君たち、誰にあげるの?」と言っていたあたりが、やっぱり臨也である。アイツら二人があげるのなんて、臨也以外に誰が居るというんだ。鈍感なのも可愛いが。

日々也の方は自分でテキパキと、ふぉんだんしょこらなるものを作り上げて今はオーブンで焼いている。
だが、サイケはチョコを溶かすことさえ出来ていない。

「まず、チョコレートを小さく刻むんだよ」
「こう?」
「違う!全然違う!」

サイケはあろうことか、チョコレートを手で押さえることもせず、まるで叩きつけるように包丁をまな板にぶつけだした。
危ないだろう、それは!
臨也に何かあったらたまらない、と思って身構えたがそれは杞憂だったようだ。
後ろから軽くサイケの腕を掴むと、改めてきちんと包丁を持たせて、上から自分の手を重ね、左手も同じように重ねてチョコレートを刻んでいく。

「んふふー」
「どうしたの?」
「べっつにー」

なんだ、それ。
此方から見たら、まるで臨也がサイケを後ろから抱き締めているみたいである。
サイケもそれを理解してか、やけに嬉しそうである。あれは確実に語尾に音符がついているな。

それにしても近い、近すぎる。
とても羨ましい。
それを隣で見ていた日々也が、僕にも教えてくれ!と騒いでいたが、臨也は不思議そうな顔で、何で?出来てたじゃないか。と一蹴りしていた。流石である。
あぁ、俺も手取り足取り腰取り、チョコの刻み方からあれやこれまで色々教えて欲しい。

「羨ましい…」
食卓に座って(臨也を見てニヤニヤして)いるデリックがボソッと愚痴を零す。
全くもって同感だ。
アイツらだけ臨也と一緒にお菓子作りなんて酷い。
…と言いたいのだが、デリックと僕は一度、臨也のために料理をしようとしたら台所を半壊させたという前科があるので、それ以来、冷蔵庫以外触るな、用が無ければ台所に入るなと言われている。
今は、猛烈に反省している。だから、僕にもそんな風にチョコの刻み方教えてほしい!


「次はどうするの?」
「ボウルに刻んだチョコレート入れて、60℃くらいのお湯で温めながら溶かす。」
「はぁーい!」

サイケのやつ、鼻歌でも歌いだしそうな勢いだ。


「臨也、これ、どうだ?」
どうやら日々也のふぉんだんしょこらが焼き上がったらしい。
そのうち一つを取って臨也が口に運ぶ。

「ん、美味しいよ」
「良かった!」
「中のチョコもとろとろだし、生地もしっかり焼けてて…」
専門家よろしく批評をしている臨也の口許からチョコが一筋垂れる。
ガタッと音がした方向を見るとデリックがキラキラした瞳で臨也を見つめていた。

「臨也くん、チョコついてるぞ」
「あれ、どこ?」
「ここ」ペロッ。

ひ、日々也の奴…舐めやがった!!
またガタッと音を立ててデリックが椅子に崩れ落ちた。
気持ちは分かる。俺だって、俺が舐めたかった。ついでに、臨也の全身もくまなく舐めたかった。
あれが、出禁にされてる台所じゃなければ俺もデリックも飛んで行っていただろう。
アイツらばっかり狡い。

「臨也くん、溶けたよ…って、うわぁっ!!」
「「臨也!」」
デリックと声が揃ってしまった。ちょっと気持ち悪いが、それどころじゃない。
サイケの奴、今度はチョコ入ったボウル持って倒けやがった!
食卓に座っていた僕とデリックが間に合うはずもなく、臨也は頭からチョコレートをかぶっていた。

「ご、ごめんね、臨也くん!本当にごめん!」
「大丈夫か?」
「大丈夫だけど…」

青筋浮いてるよ、臨也…。
確かに、これは怒るな。
でも、ごめん、臨也。
チョコレート塗れの臨也…。エロくていい!!
流石に表情に出ない、口にも出さない、デリックからも「お前は真のムッツリだ」と言われる僕も、これは我慢出来ない。

デリックが床で尻餅をついている臨也をそのまま押し倒して首筋を舐めている。そこ、チョコレートで汚れた形跡が無いのだが。
さっきまでのムラムラが後押しして、僕も負けじと臨也の額や頬に引っ付いているチョコを舐めとる。
後ろでサイケと日々也がズルい!だ、どけ!だ騒いでいる。が、さっきまで彼らがいい思いしてたんだから、僕らも譲る気は無い。

夢中で舐めていると、舌が唇を掠めた。その瞬間、臨也が小さく身動いだのを見て、さらに止まらなくなった。ついでに完璧に勃起した。
デリックにいたっては、汚れてもいないのに、エプロンを捲り、シャツも捲り、臨也の乳首を舐めている。
おい、どういうことだ。卑怯だぞ。


抵抗せず、気持ちよさそうにしている臨也を見て、これは3Pに雪崩こめるか、と不埒なことを考えていたら玄関から大きな音がした。
…嫌な予感がする。

「いーざーやー…くーん…」
語尾に向かうに連れ萎んで行く、聞き覚えのある声。
顔を上げると、台所の入り口に平和島鎮雄が立っていた。

「どういうことだ、これは、臨也くんよぉ!」
「シズちゃん、何だよ、何の用だよ!今日のチンピラは俺のせいじゃないからね!」
「そんなのどうでもいいんだ。この状態は何だ?」
「…さぁ」

確かに、他人の目から見たらチョコレートプレイをしているようにしか見えないな。
ははっ、ざまぁみろ、シズちゃんさん!!!
僕がシズちゃんさんを見上げて笑ってやると、一気に額に青筋が増えた。

「上等だ」
そうつぶやくと、臨也をデリックと僕の下から引っ張り出した。
そして肩に乗っけると、唖然としている僕たちを見下してニヤリと笑った。

「あとは俺に任せろ」

それだけ言い捨てると、臨也を肩に引っ掛けたまま廊下を戻っていく。


「ちょっと、どこ行くの!」
「あぁ?風呂だよ、風呂」
「はぁ意味分かんない」
「俺が洗ってやる。だからお前は黙って服を脱げ。」
「ちょ、いやだってばぁぁぁぁ」

どうやら無理矢理脱がされ、無理矢理風呂に入れられたらしい。


この時は、シズちゃんさんを恨んだが、数分後全裸で「津軽、助けて!」と風呂場から逃げてきて僕の膝に乗り、擦り寄る臨也を見れたので、やっぱりシズちゃんさん様々だな、と都合のいいことを考えた。



「…ふぅ」
「美味しい!?」
「ああ、うめぇ」
「シズちゃんには聞いてないよ!臨也くん、どう?」
サイケが、改めて作ったチョコを食べてもらい、感想を聞いている。
臨也は無理矢理風呂に入れられ、信用していた俺に生尻を撫でられ拗ねているみたいだ。あー、うん、と面倒くさそうにしている。
いや、それよりもシズちゃんさんのシャツとパンツ一枚というのはどういいことだ。臨也の素足、生足。僕の服じゃないのが残念だが、生足の魅力には勝てない。
さっき助けを求められたときに生尻は触らせて頂いたが、素晴らしかった。揉み心地から触り心地から何から何まで。デリックが止めなきゃ指突っ込んでた。
そういえば、そのことで臨也は拗ねているのか…。

「悪かった、臨也。」
「津軽…」
何度かシャワーで綺麗になった頭を撫でながら謝ると、別にいいよ、とはにかみながら許してくれた。
こういう時、なんで触ったの!とか言ったりしない鈍さはありがたい。たぶん、事故だと思ってる。
嗚呼、可愛すぎる!
ついでに足触らせてくれ、という言葉は飲み込んだ。たぶん言っても「なんで?」と言われるだろうから。


それを見ていたシズちゃんさんは「あ゙あ゙あ゙あ゙」と言いながら帰ってしまった。うん、勝った。
臨也が「何なのアイツ、何で来たの?何でお風呂一緒に入らされそうだったの?何で急に帰ったの?意味分からない」と言っていたが、「嫉妬だよ」なんて教えない。



その後、なんと臨也からみんなで食べて、と、チョコレートケーキを一つ貰ったのだが、それが標識を模したものだったとか、どう見ても一人分だったとか、出す時は外してたけど本当は綺麗にラッピングしてあったことは、この際気にしないことにする。
勿論、4人で美味しくいただいた。

まぁ、好きなひとから違う人、それも好きな人にあげるはずだったチョコを貰うという惨めさを考えてみろ!と言ったところで、臨也は首を傾げるだろうから、今回ばかりは僕も鈍感になるよ。










―――――
ハッピーバレンタイン!
私もカニバリズムが何故でてきたのかさっぱりです
バレンタイン+リクエストを一緒に済ませる適当っぷりごめんなさい。
「チョコ」さんだけに…。あっ、痛い痛い、やめて殴らないで!

シズちゃんは津軽にしてやられました。
静雄と静雄派生は、きっとみんな変態です。
一つ謝らせていただきます。
シズちゃん空気でごめんなさいorz
こんなのでよければ!

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