デリックさんが変態
どうしようもなく変態
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パリーン、と音がして高そうな、いや、絶対高いカップを割ってしまった。

「またか」
そういって俺に絶対零度の視線が突き刺さる。
あああ、本当に…
その視線はヤバい!クる!
俺がこうやって何度も食器を割ったり、カーテンを破ったりしてしまうのはこんなご褒美があるからかもしれない。


諸事情で王族の世話役、なんてとんでもない仕事に就職してしまったのだが、不幸中の幸い。そこには俺の運命の相手が居たのだ!
それが、今、俺を睨んでいる日々也である。
この王子様は俺のM属性を目覚めさせただけでなく、同性愛なんて新しい道を開拓させてしまった強者だ。
本人にその気はなくとも、サラサラの黒髪に透き通った薄茶の目、抜群のスタイルに抜きん出た容姿。天使がいるなら、たぶん日々也のような奴だと思う。
そんな見た目にプライドが高く、高飛車で上から目線で傲慢、しかし優秀なんていうギャップ。
落ちない訳が無い!
現に臣下の娘さん方が我先にと妃の座を狙っている。
そんなの俺が許さないが。

今まで同性が好きなんてことは無かったし、言ってしまえば女の子をとっかえひっかえだった俺が、男に一途に恋してしまった。


最近は日々也の毒舌と冷たい視線見たさに、わざとカップ割ってみたりこけてみたりしている。
その度に「馬鹿め」「紅茶を入れることも出来ないなんて役たたずが」「まるで犬だな」なんて言葉とともに向けられる視線は、スッゴいそそる。
正直もっとやってくれ!と言いたい。零した紅茶を舐めろとか、靴舐めろとか、足舐めろとか、それくらいならいくらでもやる、やりたい。(むしろ日々也の足なんてご褒美でしかない。)
が、これ以上はダメだ。
仕事中に起たせるなんて不謹慎なこと出来ない。何より、そんなの見られてクビにされたら日々也の近くにいることができない。

毎晩、その日に貰った罵倒と日々也の顔を想像しながら一人で右手と仲良くするので精一杯だ。
ただ近頃、「尻の穴で興奮するなんて変態だな」と言わたい、なんて高望みな願望を持っている。
叶う気はしないけどな。



「おい、何ボーッとしてるんだ。」
「あ!申し訳ございません!」
声をかけられてやっと正気に戻った。すみません、と言うとはぁっ、と大きい溜息をつかれてしまった…。
あぁ、そんな顔も可愛いな!!

割れたカップを拾って紙に包む。まだ中身が無かったので片付けは楽だった。
予備のカップを取り出し、今度こそ丁寧に、手を滑らさないように、中に紅茶を注ぐ。
「ご希望の、ダージリンティーです。」

ポットからそっと液体を注ぎ入れ、ソーサーを添えて日々也の目の前に置こうとする。
完璧だった、そこまでは完璧だった。自分で言うのもなんだが、美しすぎるくらい綺麗に流れるように出来たのだ。

近づいた瞬間に「あっ、いい匂いする」なんて考えたのがいけなかった。
一瞬、手の力を弛緩させた瞬間。バランスを崩してしまった。
しかもさっきと違ってカップの中には中身が入っている。そして何より…

「ぁっつ!」
「あああ、わりぃっ!」
焦り過ぎて素が出てしまった。日々也の膝の上で零してしまった!やっちまった!!

「す、すみません!今すぐ拭きます。いや、脱いで下さい。新しい服を持ってきます!で、手当てしないと…」
「ああ、服を持って来い。あと手当ては別にいい。舐めておけばなおる程度だろう、これくらい。」
「じゃあ舐めます!」

は?と日々也の目がまん丸になる。あー、こんな表情は初めて見たなぁー。
因みにいま、俺の頭は混乱している。舐めることに関して、下心なんて無かった。断じてな!

「失礼します」
「あ、ちょっと待て!」
早速、ズボンとタイツに手をかけて手荒に脱がしていく。
現れた白い肌は、かなり赤くなっていた。
どうやら、右足だけにかかっていたらしく、左足は白いままだった。

「赤くなってますね…」
太ももに口を近づけて、そっと舐める。きめ細かい肌は、触り心地も舌触りも最高だった。
なんて役得!
一生こうしていたい。

少しずつ足の付け根に近づいていくと、上で止めろ!だとか騒ぎはじめた。
髪の毛をぐちゃぐちゃにされて、どうにか頭を足から離そうとしているようだが、そんな抵抗は王子様のひ弱な腕じゃ痛くも痒くもない。

ちょっとだけ頭を離して日々也の顔を見る。
………………。

その、あのな、勃った。
顔を真っ赤にして目には涙を浮かべて唇を噛みしめている。
何より、上着に素足という格好がエロい。

「やめろ」
擦れた声で命令し、本人はいつものように冷たい視線を送ってるつもりだろうが、涙目で、むしろ熱っぽい視線にさらに下半身に血が集まる。

「まだ、です」
それだけ言うとまた日々也の足の間に顔を埋める。
何度も舌を行ったり来たりさせ、たまに吸い上げてみる。
その度に吐息まじりに離れろ、止めろと言われ興奮した。
あれ?俺ってMじゃなかったっけ?なんかやってることSっぽくねぇか?
まぁ、たぶん、日々也だったら何でもいいんだな、と勝手に自分の中で納得した。


ついに足の付け根にたどり着くと、何かが頬に当たる。不思議に思い横を向いてみる。

「うぁ、見るなっ!」
「ひ、びや様?」

いやぁ、うん。見るよな。見た。
今は日々也が上に着ている服を必死に伸ばして見えないが、確かにアレが下着を押し上げていた。
唖然とした。
まさか日々也が俺に感じるなんて…!

「日々也さま。」
「…なんだ」
恥ずかしくて俺の顔が見れないのか、顔は明後日の方向を向いている。

「ここも腫れてるのかもしれませんね、だから舐め…ぐっ」
これはチャンスとばかりに下着に手をかけたら、顔を足で押さえつけられた。
顔を足蹴にされるなんて…。我々の業界ではご褒美です。

「いい加減にしないと、クビにするぞ」
顔に足をおかれたまま言われた言葉に戦慄が走る。
それだけは、だめ、絶対!
日々也のちんこを舐められないのは残念だが、クビにされるのは死んでも死にきれない。

とりあえず、目の前にある足の裏を舐めてから離れた。
「なっ、おま、舐め」
顔を真っ赤にして混乱している日々也は物凄く可愛い。

「では替えの服を持ってまいります。」
有り余る熱やら股間を隠しながら、ニコッと笑って部屋を出る。

…服取りに行く前にトイレだな。
しばらく夜のオカズに困ることは無さそうだ。


この時、部屋に戻ると自慰してる日々也を発見してしまう、なんて、さらなるご褒美があることを、俺はまだ知らない。









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本番書きたかったけど日々也さんが許してくれませんでした←
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