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→臨也甘楽が双子かつシズちゃん年上になってます











恋を味わうというのは人生の中で最も幸せな時間だろう。しかし、恋は罪だ。俺は解っていなかった。


俺と双子の姉の甘楽は、二卵性双生児で、性別も男と女別々、中身は甘楽は甘えたがりなのに対して俺は人見知りだったりと似通ってない部分も多かったのに、見た目だけが全く同じだった。まだ身体の発達していない小学生の時期なんて、黙っていれば誰も見分けがつかないくらい似ていた。

両親は共働きで、家には二人だけのことが殆どだった。学校では友達も殆どいなかったので、誰かと遊ぶことも無くいつも二人でいた。

小学校低学年の時、たまたま隣に引っ越してきたのがシズちゃんだった。
3つ年上だったけど、俺達を可愛がってくれたし、毎日のように一緒に遊んでくれた。甘楽がシズちゃん、なんてふざけた名前で呼んでも、なんだよ、と照れ臭そうに笑い、俺が静雄くん、と呼ぶと優しく微笑んでくれた。
甘楽も俺も、そんなシズちゃんが大好きだった。


「なぁ」
「ん?なぁにー?」
「俺、静雄くんのこと好きみたい」
「私も好きですよー?」
ベッドに座って、足をブラブラさせながらそれがどうしたの?とでも言う風に、笑う。
中学生にもなれば、ふとした笑顔に昔のあどけなさは影も形も窺えなかった。

「違う、恋愛感情なんだ」
そう言うと、甘楽の足の揺れが止まった。さっきまでの振動の余韻を残すベッドのバネが、俺の脳髄まで揺らしてるみたいで、吐き気がした。
言ってしまった、なんて後悔が頭に過る。でも、これは言わなければならなかったことなんだ、と自分を励ます。
今まで隠し事なんて何もしなかった。親には言わなくても甘楽には話したし、それは甘楽も同じだった。

「そっか…」
「気持ち悪い?」
「うぅん。そんなことない!だってシズちゃんカッコいいもん!」
二人だけの秘密、と言って笑い合いながら指切りした。


偶然、というのは恐ろしいものだ。奇跡や偶然なんてものはたぶん、仕組まれた必然なのだろう。
その日は、委員会があって帰るのが7時を過ぎる、と甘楽に伝えていたのに、先生の急用とかで用事が無くなってしまった。

やることが無くなった俺は、真っ直ぐ家に帰った。
玄関を見ると、見慣れた靴と、父の物ではない男物のスニーカーが脱ぎ捨ててあった。

「…ったく」
かかとを揃えて履きやすいように置き直して、少し小さい自分の靴も同じようにして隣に並べた。

部屋に入る前にリビングを覗いたが、誰もいなかったので、たぶん甘楽の部屋にいるのだろう。
自分の部屋の手前にあった甘楽の部屋の前を通り過ぎようとした、その時だった。

「あ…ぁんっ」

聞いたことのない、声だった。確かに甘楽のものだと分かっていても頭の何処かで違う、と否定する。

「かんら…っ」

苦しそうに吐き出された言葉に、俺の逃げ場は無くなってしまった。俺が大好きな人の声を聞き間違えるはずが無かった。
この部屋の中で甘楽とシズちゃんがセックスしてる。ということは甘楽とシズちゃんは恋人同士で、愛し合っててつまりそれは―――。

今までのことが走馬灯のように流れていく。
テレビゲームして本気で喧嘩したり、夏休みの課題を手伝ってもらったり、晩ご飯一緒に食べたり。しょうもないことばかりだったけど、「幸せ」なんて臭い言葉が似合うような記憶だった。
それが音もなく崩れていく。
いつからそういう関係だった?俺が甘楽にあの事を伝えた後から?空気が読めて無かった?もしかしてずっと邪魔だった?

両親だって、俺のことを「邪魔だ」と言った。数年前、夜起きてトイレに行った時にリビングで父さんと母さんが話しているのを聞いた。二人養うのは精神的にもキツいわね、本当は女の子一人のつもりだったのにな、あの子を産むのは想定外だった、でも産んじゃったんだから仕方ないわね、口減らしなんてできないし、我慢するしかない。そんな内容だった気がする。面と向かって言われたことは無かったけど、その夜からは、両親と顔を合わせる度に呪いのような言葉が頭を満たす。

シズちゃんと出会えて初めて可愛がってもらえることの心地よさを知った。愛されることに対して疑心暗鬼の塊だった俺の心を溶かしてくれたのがシズちゃんだった。
その彼が、今度は俺の気持ちを暗く閉ざしていく。

理解はしていた。
誰が誰を愛そうが、それは自由なことで、例えシズちゃんが俺の気持ちを知っていてもいなくても、甘楽と付き合うことを俺なんかが咎められない。
甘楽だってそうだ。あの約束だってただ、俺がシズちゃんが好きなことは秘密、っていう約束だ。それだけなのだから、付き合っていることを黙っているなんて酷い?そんなことは言えない。もし事実を伝えていたら、何より俺が辛かっただろう。それを、案じたのだ、彼女はきっと。

そうだ、誰を責めることも出来ない。


いつになく、冷静だった。
出来るだけ静かに玄関へ向かい、靴を履く。
7時過ぎに帰ると言ったから、あと2時間、近くのカフェで過ごせばいい。
何も無かったような顔をして帰れば、大丈夫だ。
彼女が出来ない、なんて愚痴ったシズちゃんには彼女が出来て、甘楽もカッコいい彼氏が出来て。
めでたしめでたし。
何も悪いことは無い。
何にも。


「ただいまー」
いつもは口に出さないのに、今日だけはつい言ってしまった。
玄関にあったのは俺の足より一回り小さい革靴だけだった。

「甘楽?いるのか?」
リビングには電気がついていない。
甘楽の部屋の扉をノックする。小さい声で、はい、と返事がした。

「入るよ?」
扉を開くと部屋は真っ暗だった。手探りでスイッチを見つけ、明かりをつける。
真っ先に目に入ったのがベッドに寝転がる甘楽だった。
あのベッドでさっき二人は。考えただけで、指先から体温が無くなっていくような心地がした。

「どうしたの、電気もつけずに」「今日は甘楽の当番でしょ?晩ご飯」「俺はオムライス食べたいなぁ」「おーい聞いてる?」
話しかけても返事がない。
嫌な予感がした。

「臨也」
「ん?」
「さっき、家帰ってきたでしょう?」
「帰って、ないよ」
出来るだけ声が震えないように、丁寧に発音した。

「嘘つかなくていいよ。帰って来たんでしょ?シズちゃんの靴が綺麗に揃ってた。臨也がいつもそうしてるの、知ってるよ。」
しまった、と思った。
足音が聞こえた、とかならば言い逃れ出来たのに。無意識にしていた癖が裏目に出てしまった。

「ごめんね」
「…なんで甘楽が謝るんだ。」
「黙ってたから。臨也がシズちゃん好きって言った時から、私達付き合ってた。でも、私黙ってた。臨也を悲しませたくなかったから。」
「別にいいよ。」
「よくない」
「だからいいってば。シズちゃんは甘楽という彼女が出来て、甘楽はシズちゃんというイケメンな彼氏が出来て良かったじゃないか。前から静雄くんのことカッコいいって言ってたし、静雄くんにとっては願ってもみない彼女だ。いいことじゃないの?」
「良くない!」

甘楽が金切り声を上げる。なんで、お前がそんなに見栄をはるんだ、そんな風に何で泣くんだ、それは全部俺の仕事だ。良いって言っているのだから普段通り、ニコッと笑って「ありがとう」と受けとめればいいのに!

「良くない、全然良くない…。こんなの、誰も良くない。幸せにならない。」
鈍器で頭を殴られたようだった。

「邪魔だったならそう言えばよかったんだ。みんな良くない?笑わせるな!一番ショックなのは俺だ!裏切りられたような気分だった、泣きそうになった。でも、仕方ないんだろ!?それを『良くない』なんて、一体お前は何様のつもり?良いって言ってんだから、黙れよ!お前が泣くなよ!俺が泣きたいくらいだ!」

それだけ叫ぶと乱暴に扉を閉めて自室に入る。
部屋を出る前に最後に見た泣き顔は、酷かった。彼女は、傷ついていた。
あれじゃまるで被害者は甘楽だ。
俺が守ろうとした日常は呆気なく当事者によって壊された。
甘楽は黙っていればよかった。
抑えこんだ痛みや悲しみがギリギリと音を立てて溢れ出す。
嗚咽の合間に窺った隣室は、死んだように静かだった。


次の日、甘楽は死んだ。
頸動脈をナイフで切り裂いたのだ。
『何も不服はありません。ただ、死んでみたかっただけです。』と、遺書にはそれしか書いていなかった。
ベッドのシーツが赤く染まっていた。


両親は泣き崩れ、葬式に来たシズちゃんもボロ泣きだった。
俺は泣かなかった。いや、泣けなかった。
ただ、甘楽が死ぬ時に考えたであろうことに思いを馳せた。



「臨也」
「大丈夫?目腫れてるよ?」
「てめえは泣かないのか」
「泣かないよ」
「酷いやつだな」
「さぁ、そうかもね」

困ったように笑ってみせると、眉間に皺をよせた。

「なぁなんで甘楽は死んだんだ?」
「知らないよ、そんなこと。」

「…シズちゃんには一生分からないよ。一生、ね。」












―――――
重っ
オチが難しかった
自殺か他殺かは私にも分からないです
裏設定がいろいろある
いつか長編で作ってみたい
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