…遅ぇ。
臨也との約束は7時だったハズだ。25分経っても現れる気配さえしない。
今俺が居るのは新宿駅南口。突然昼間に「新宿駅の南口に7時」という素っ気ないメールが来たので「なんで」と送ると「(^3^)」と返ってきた。意味が分からなかった。たまにアイツの考えてることが本当に分からない。
何度か携帯をあけたりしめたりしていると目の前に女が現れた。
なんだ?道でも迷ってるのか?でも、俺に聞くのか?ただでさえ近づく人間は限られているっていうのに。

「すみませーん、お兄さん一人ですかぁ?良かったら今からお茶しません?」
ナ ン パだと!?予想外だった。そういえばここは新宿だ。ということは、俺のことを知らない奴もいるのか。
なんだか新鮮で嬉しい。初めての経験だ。
「わりぃ、待ってる奴がいるんだ。」
やんわり断るとその女は、えーずっと待ってるじゃないですかぁー!すっぽかされたんじゃないですかぁー?だから行きましょー。とか言いだしやがった。
ちょっと待てお嬢さんよ、俺はアンタのナンパに喜んだのは事実だ。だがな、俺が臨也に待たされてイライラしてるのも事実だ。そのイライラはアンタのナンパの何十倍なわけだが、それをそんなこと言ってさらにイライラさせたんだから、デコピン一発くらいされても文句言えねえよなぁ!?
さすがに口には出さなかったが、どうやら顔がそれを十二分に物語っていたらしく、「あっ、えっと、さよなら!」と言ってそそくさと何処かに行ってしまった。
よかった、危うく女に手ぇ上げるとこだった。

「あぁあー勿体ないねぇ。せっかく女の子がシズちゃんなんかに声かけたのに。そんな青筋浮きまくりの凶悪犯じみた顔してたら、そりゃ逃げられちゃうよ?」
声のした方向を見ると、待ちぼうけにさせた張本人がいた。一つ言いたいのだが、俺に凶悪犯じみた顔とやらをさせた原因はお前の遅刻である。
「うぜぇ。あのなぁ臨也くんよぉ、てめぇのせいでこうなったんだ。」
「仕事で遅くなったんだよ!ごめんね?」
ウインクしながら手を合わせず片手で謝ってくる姿は微塵も反省してる様子が見てとれねぇ。それに、ウインクってなんだ。ロクな仕事してねぇのに、と言いそうになったがそう言う俺もろくな仕事をしていない。待たされたことに腹は立つが、素直に(本気じゃなさそうだが)謝ってきたので許してやろう。

「シズちゃん、こっち!」
臨也が歩きだす。
細っこい背中と小さい頭を目標に一応着いていくが、何処に行くんだ?こいつの家か?それならば直接来いというだろう。じゃあ居酒屋とか?何処行くんだ?ところで、これはデートじゃないのか?なんで先々歩くんだ?手は繋がなくとも隣くらい歩かないか?などと疑問の声を発しようとした瞬間、

「はい、シズちゃんここにこっち向いて立って!」
急に歩みを止めて俺に要求を出してくる。なんだ?落とし穴でも仕掛けてるのか?と疑ったが、臨也の嬉しそうな顔を見る限りそうでも無さそうだ。慎重に言われた通りの場所に立って臨也の方を向いて立つと。
「んん!?」
背中に手が回った、と思った次の瞬間にはキスされていた。
何度か啄むようなキスを繰り返したあと、臨也の舌が唇の端を行ったり来たりする。服をくいっと引っ張られて、やっと正気に戻った。唐突過ぎるし、公共の場だし、ただ呆気に取られていたが、たぶんちゃんとキスして欲しいんだろう。目を閉じて、口を開く。舌を出して、臨也のそれに絡めると、鼻から抜けるような声が聞こえた。
夜の街の雑音に紛れて聞こえる水音は俺を興奮させた。
外だということも忘れて無我夢中でキスしていると、無性に臨也の顔が見たくなって、薄く目を開ける。

…は?なんで全開なんだ?この俺だって最中に目開けるのは失礼だな、と思っていたのになんなんだコイツは。
それに、俺の顔を見る訳ではなく、その視線は全然別の、俺の背後に注がれている。でも、目がキラキラしてて可愛い、ってクソッ違うだろ俺!
俺が見ていることに気付いたのか、ニヤッと笑って臨也は離れた。
「ありがとね、シズちゃん。」と言うとそのまま走って帰ってしまった。
何がありがとうなんだ?アイツがわざわざ呼び出した理由ってこれだけなのか?意味が本当にわからない。
いやー、それにしても、
「こらああああ!まて臨也あああああ!ディープキスまでしといてお預けは無しだろぉぉぉぉ!?」

そのまま臨也の家まで走って追いかけて、玄関で押し倒して一回風呂で一回ベッドで十回と、気絶するまでヤッた。



数日後、あの時自分の背後に広がっていたイルミネーションの海だとか、それを見ながら恋人とキスしたいなんて乙女チックな臨也の思考回路を、家で「路チューに最適な場所ランキング」なるものを見ることで知ることになる。








―――――
年末年始特番の、ほんま〇っかTVを見て「これだ!」と思いましてね…
見てた人いないかな?
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -