短いです。夏いシズイザ







「おかわり」
「何杯目だ」
「しらない。シズちゃんは黙って削ってろ」
「俺だって食いたい」

じゃりじゃりと音を立てながらかき氷を食う姿にため息をこぼす。氷食べながらクーラーとかなんの苦行?と言って臨也が窓をあけたため、冷房は入っていない。お前はかき氷食ってるが、俺はお前のかき氷を削ってるだけなんだ。特に今日は気温たけぇんだぞ。

「腹こわすぞ」
「んーたぶんね」
じゃあ何でそんなに食うんだ…という質問は飲み込んだ。こいつの行動はだいたい突飛なので、こんなのはただの愚問だ。

「俺にも食わせろって」
「やだ。それじゃ意味ないし」
「意味わかんねぇぞ」
「うるさいなー、じゃあ、はい」

ピンク色の液体がかかっていないただの氷の部分をスプーンに乗せてるのは少し苛ついたが、はい、あーんなんて、素で可愛らしく言いやがるので黙って口を開く。うん、氷だな。紛れもなく氷だ。そしてまた何も無かったかのように臨也がジャリジャリとかき氷をたべる。

「ん、まぁこんなもんか」
「は?…っ」
発言の意図がわからなくて横に顔をむけると、間近に臨也の顔があった。そして唇が触れた。

「ん、」
中に侵入するでもなく、冷たい唇と舌で俺の口を包み込むように舐めたり吸ったりされる。口をひらいて舌を絡めようとすると、臨也の手が俺の肩を押した。どうやら、俺を押し倒したいらしい。たまには押し倒されるのもいいかもしれない、と思って静かに床に寝転がった。

フローリングの床の感触と、臨也の冷えた唇に頭がくらくらする。馬鹿みたいに気持ちいい。舌も心なしかイチゴの味がする。

「んぅ、は、どう?冷たいキスの感覚は」
口と口が触れあう距離で臨也が笑いながらそんなことを聞いてきた。こんなことのためにかき氷を…。クソ野郎、かわいいじゃねぇか!!!

「悪くねぇな」
「ふぅん」
クスクスと笑う臨也に今度は俺からキスをしかけようとすると、見透かしたかのようにかわされてしまった。

「おい、もう終わりか」
「終わり!てか俺、すごい寒いし頭痛いんだけど」
「馬鹿ノミ蟲」
「馬鹿に馬鹿って言われたくないなぁ!」
馬鹿馬鹿言いつつも内心では馬鹿みたいに喜んでいるのでそれ以上は何も言わなかった。ついでに寒い寒いとうるさい俺のかわいいノミ蟲野郎に毛布を持ってきてやった。

「シズちゃん、中庸って知らないの?スギタルハナホオヨバザルガゴトシって知らないの?」
「今からクーラー入れるからそれくらいで丁度いいだろ」
「は!?クーラー!?俺、冷房きらいなのに!シズちゃんの鬼!」
「だーまーれー」

設定温度を28度にしてスイッチを入れる。そして窓を閉めた。

「シズちゃん」
「なんだ」
毛布の中に潜り込んで顔も見えない。みてるこっちが暑苦しい。

「冷たいキスってさ、一番記憶に残るんだって」
「…へぇ」
「…これって化け物の君にも当てはまるのかな。君信じられないほどいろんなこと忘れるけどさ、」
「あ?」
「…、」
「は?今、なんて?」
「な、んでもない!おやすみ!」

臨也が俺に背中を向けて丸まったのを確認して両手で顔を覆った。はずかしい!はずかしいぞ臨也!
「今のキスくらいは一生覚えててよ」とか!なんだその殺し文句は!!

「頼まれても忘れてやらねーよ」と聞こえないくらい小さい声でつぶやくと臨也が身じろいでテーブルの床に頭をぶつけた。俺もあいつも地獄耳で、俺もあいつも恥ずかしい。五分五分だ、五分五分!!

どうしようもなくて、照れ隠しのために臨也に昨日見たプロレスの技を毛布越しにかけておいた。






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ほんま〇っ〇TV見てたらネタが降って降って止まない。本当に。オススメですよ。
サマーシズイザシリーズ第二段
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