テイルズ短編 | ナノ



朱くて赤い花火のような焔が消えた

その日、ユーリとルークの住む町の隣町では花火大会があった。それを一ヶ月前、最初に知ったルークはどぎまぎしながらユーリにそれを言った。
同棲の恋人同士ならば何でもないデートの誘いなのだがルークにとっては初恋のように顔を真っ赤にするほど勇気がいることなのだ。それもこれもユーリがルークにとってとても愛しい存在だからなのだろう。ユーリはそんな可愛らしい恋人の誘いを勿論断れるはずもなく二つ返事で了承した。
ルークは当日になるまでどの服で行くか、何を食べるかなど初デートのプランを練るように頭を悩ませていた。

「なぁ、当日はどうやって行く?電車か、それとも……」
「ん?ああ、車で行こうぜ。俺が運転するから。」
「ええ?でも絶対渋滞するって!」
「それもまた一興ってな。」

未だむう、と頬を膨らませて納得していないと主張するルークをユーリは笑いながら頭を撫でた。それでもガキ扱いすんな、と怒られる原因となるのだが二人にとってはそれが普通となってしまった。


待ちに待った花火大会がやってきた。
日曜日の午後7時と言うこともありやはり人の量は大量、と言う言葉では片付かなかった。ユーリは車を運転しながら隣で頬を膨らませているルークの機嫌取りに頭を巡らせていた。

「だから言ったんだっ!」
「悪かったって、な?」
「ふんっ!」
「はいはい、子供っぽいぞー。」
「う、うるせー!」

渋滞であまり進むこともない道でユーリはちらちらとルークの表情をうかがいながら喋る。もうすぐ着くから、とユーリは言いながらルークの頭を撫でた。
ルークは片手運転すんなよ、とボソリと呟いた。その顔はほのかに赤に染まっておりこの状況もまんざらではないようだ。ユーリは機嫌を損ねたわけではないとわかってへいへい、とおどけて見せた。

「あーもう結構暗くなってんじゃん!」

もうすぐ始まる時間だし!と言いながら無視意識なのかユーリの手を引いて早く早く、と急かすルークにユーリは口元が緩む。人の多さに翻弄されながらも花火がギリギリ始まる前に花火が見えるだろう場所まで来れた。
ルークがあまり人がいるのは嫌だ、と言うので二人は人の集団より少し離れた場所にいる。

暫くするとドン、と言う音と共に夜空には色とりどりの花が咲く。光の花はユーリやルークの顔をそれぞれの色に染め上げる。
ユーリがふとルークを見るとうっとりと空を見つめていた。ルークがユーリの視線に気づいたのかユーリの方を驚いたように見ると花火を見ろよ、と目を反らせながら言った。その表情は花火の色に染められても赤くなっているとよくわかった。

「ユーリ、」
「ん?」
「あの…一緒に来てくれて、ありがと。」
「なんだよ、急に改まって。」
「うん、あのな、ユーリ……」

ひゅう、と言う音が新たに花火が打ち上げたことを知らせる。
あのな、というルークの声とほぼ動じたった。


「━━━だよ……」


ドォン……

一際大きな花火が空を彩った。


「…わり、花火の音で聞こえなかった。何って?」
「〜〜〜っ!い、いいよ!た、大したことじゃないからっ!!」

ああ、もうどうしてこう…などと唸っているルークにユーリは心の中でくすくすと笑いながらまた今度聞かせてくれ、とルークの頭に手を置いた。そのまま愛しそうに撫でるとルークは次こそは、と一人小さく呟いていた。

「……そろそろ帰るか。」
「うん、そうだな。」

花火も終わり、人々もちらほらと帰りだしたときユーリが言った。ルークも一度頷くとその場から歩き出した。

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