テイルズ短編 | ナノ





いつも退屈だと思っていた。
楽しいこともないしやることもない。
城の中に閉じ込められている状態で、何の為に生きてるのかもわからない状態で。

「ああ、なんっつーか、もう、いいや。」
「ルーク?」

ほぼ唯一と言っていいこの話し相手はこの城で同じく閉じ込められているエステリーゼという姫様。俺は王族、らしいが記憶障害を起こしているから実際のことなど知りもしない。
ただ一つ分かるのは、俺の両親と言っている人たちは俺の両親ではないということ。

「なんだ、エステリーゼ?」
「ルーク、最近よく凄く絶望した目をしてるので…何かあったんです?」
「何もないからだって。」

はぁ、と溜め息を吐いてみたがあまり効果がなかったらしい。未だエステリーゼはじっと俺の顔を見つめている。
偶にこの姫様は鋭くて困る。

「ルークはわかりやすいです。」
「ふーん…ちっ……。」

それでも何もなくてつまらないのは本当で。何かないのかよ、と何度口を尖らせたことだろう。
エステリーゼも聞き飽きた、とばかりに苦笑を浮かべる。

それから何日も経たないことだった。エステリーゼがフレンのところへ行く、そう言い出したのは。

「本当にフレンの部屋に行くのか?!」
「し、ルーク声が大きいです。」
「…わーってるよ!」

こそこそと城の中を移動していた。この前エステりーゼがフレンに会わせてくれ、と騎士に言っていたが相手にされていなかったのは記憶に新しい。つーか、そんなの不敬罪で捕まるんじゃねーの?
どうにも諦められないらしくエステリーゼは俺を誘って、今に至る。
俺を誘った理由が「途中で騎士に捕まっても良いように。」だと。こんな機会滅多にねーから(楽しそうで)いいけど、俺護衛かよ。いいけどな?退屈だったからいいけどな?

「素直に喜べぬぇー…。」
「何故です?ルークだっていつも何かないかってぼやいてたじゃないですか。」
「せめて俺を誘った理由、俺にも抜け出す機会をくれる、とかだったらなー。」
「そんな言い方じゃ、ルークに暇潰しをあげてるだけみたいじゃないですか。」

いや、そんな口を聞いてるが本当はうきうきしてるんだ。だがそれを悟られたくないから、本音を出すのが、恥ずかしいから。
そんなことを言っていると城内が少し騒がしくなってきた。まさか、とエステリーゼと顔を合わせてみた。俺達はそ、と獲物を手にした。

「エステリーゼ様、ルーク様!」
「!!!」

二人の騎士にバッタリと、会ってしまった。
まずい、そう思って俺は剣を鞘から抜いた。隣を見るとエステリーゼも抜いていた。

「私たちはフレンに会わなければなりません!」
「それなら私達が…」
「嘘吐け、お前らそんなこと言いながらいっつも俺たちの言うことなんか聞いてねーくせに。」

気づいてないとでも思ったか?と聞くとその問いなど無視され、部屋に戻るように言われた。
それでも断り続けると力づくでも、と騎士達も剣を抜いた。だから、それが不敬罪だって。

「近付くな。仕方ないことと入っても王族に手を出すなんて、ただで済むと思ってんのか?」
「私達に抵抗され、全くの無傷でこの場を切り抜けれるとでも?」

俺とエステリーゼはそんなに弱くもない。それに武具魔導器もちゃっかり持ってる。というか、俺はむしろ負ける気がなかった。
来いよ、と挑発すると、騎士達はじりじり、と近寄ってきた。たたた、と奥から別の騎士がまた加わってきた。本当に来るのかよ、と思って剣を握る力を強めた。
すると、後方から黒い影が前方に通り抜けた。
その黒い影は迷いもない太刀筋で騎士達を気絶させていった。

「……だ、誰だ?」
「…城の方では、ないようです。」

まさか不審者?!と少し緩まってしまった緊張の糸をもう一度張地詰めさせた。
黒い影はくるり、と振り返った。長い黒髪が揺れた。

「助けてやったのに、礼もねーのか?」
「……誰が助けてくれ、なんて言ったよ。」
「ルーク!」

結果的には助けてもらっているという形になってしまったが俺達だけでもなんとかなった。言いながらむ、と睨むとエステリーゼが俺の名前を呼んだ。
ふん、と腕を組んでそっぽを向いたらエステリーゼはすみません、と謝っていた。謝る必要なんてないってのに。

「…で、あんた何してんだよ。」
「ん?俺は…」

「ユーリ・ローウェル!どこだー!」
「不届きな脱走者め!逃げ出したことは分かっているのである!」

「ユーリ…?」
「ユーリ・ローウェルって確かフレンの…」

その名前には聞き覚えがあった。確かフレンの友人だ。幼馴染と言って一緒に騎士団に入ったらしいがユーリは騎士団とは剃りが合わなかったらしく、早々と抜けてしまったようだが。
悪い奴ではない、と思うが今脱走者って呼ばれてなかったか?

「あの、私たちフレンについてあなたに話したいことが…」
「ちょっと待てよ、エステりーゼ、こいつ、脱走者って呼ばれてたじゃねーか!」
「はぁ?俺としては、お前らがなんだってーの。そんないいかっこしときながら、なんで騎士団に追われてんだ?」

ユーリがそう聞き終わる前にユーリが来た方からは騎士の声が響いてきた。つーか、そんなデカい声出してたらこっちは逃げやすいってのに気づかないのか?
お互いyっくりしてらんねーな、と言いながらユーリはフレンのところに連れていく、といった。
なんだ、こいつ、お節介焼きか。
行くぞ、と言いながら前を歩き出す。は、と気づいてエステリーゼより少し遅れてその後を追った。

まさか、ただそれだけの出会いが俺を、そして世界をここまで変えるなんて、その時の俺には想像もつかなかった。

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